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「約束」

「そう、私たちは魔法の練習をしなきゃいけないの。やっと思い出した?」


 僕はコクっと頷いた。さっきのさっきまでミリンとの約束は忘れかけていたが、そのことは言わないでおこう。またミリンの機嫌を損ねてしまったら、今度こそ最悪の空気になってしまう。


「魔法の練習?」


 ツグミさんがミリンの方を見て尋ねた。


「うん、私もミクジも正直魔法が下手やから、クラスの皆の足を引っ張ってるんじゃないかって思ってて……。だから、今度の放課後にでも2人で練習しようかなって!」


「あ、そうなんだ!……そういえばミクジ君、私とも一緒に魔法の練習する話してたよね?」


 ツグミさんはそう言うと、僕の方を丸い瞳でじっと見つめた。女性から見つめられることに慣れていない僕は、なんだか頭がぼんやりとしてすぐに返事をすることができなかった。


 え、そうなの?とミリンは小声で言い、ツグミさんと同じように僕の方を見つめてきた。また、静かな沈黙が始まりそうだった。今度の沈黙は、心地悪いような心地いいような不思議な感覚だった。


「えっと、僕とツグミさんとミリンの3人で一緒に練習しようかなと思ってて……」


 僕は咄嗟に思いついたことを口に出した。ツグミさんと2人きりだとちょっと気まずいし危険もありそうだから、ミリンも居てくれた方が僕は安心できる。


「なるほど!それも確かにいいね!」


 ツグミさんは僕のアイデアに同調してくれた。もしかしたら、何か言われたり反対されるかもしれないと思っていたから、ひとまず安心した。


「でも、ツグミさんはクラスで一番魔法が上手いし、練習することなんてないんじゃないかな……?」


 もじもじとしながら、小さな声でミリンはそう言った。


(え、なんでそんなことを言うんだよ……!空気読めないのか?)


 せっかく話がうまくまとまりそうだったのに、なぜかミリンがツグミさんを除け者にしようとする。女子同士のことはよく分かんないけど、もしかして二人は仲が悪いのか……?


「うーん、まあ確かにミリンちゃんとミクジ君の二人で練習するなら、私が居なくてもいいのかもしれないね」


 ツグミさんが参加せずに魔法の練習をするという方向で話が進んでいってしまっている。まずい、この機会を逃したらツグミさんと関係性を築く機会なんて殆どないぞ……。


「いやいや!ツグミさんがクラスで一番魔法が上手いわけだから、教えてもらいながら3人でちゃんと練習しようよ!それが一番クラスのためになるはずだよ」


 僕は慌ててそう言うと、ミクジがそう言うなら、とミリンはしぶしぶ納得した。そして、ツグミさん自身も一緒に練習をすることに合意してくれた。クラスのためなんて1ミリも考えていないが、それっぽい理屈が作れて僕は心底ほっとした。


「じゃあ、来週の放課後、3人で魔法の練習をしましょう!最初はホウキで飛ぶ練習とかからでいいかな?」


 話し合いの末、ツグミさんが話をまとめて、来週の放課後に3人で魔法の練習をする約束をした。客観的に考えると、ただ放課後に男女3人で集まるだけだが、ツグミさんからの愛の告白に一歩近づいた感覚がした。


「ツグミさん、今日一緒に帰らない……?私ちょっと話したいことがあるんよ」


 話が終わると、ミリンはツグミさんを誘って二人で帰っていった。仲が悪いのかと思っていたが、意外とそうでもないみたいだ。女同士はマジでよく分からない……。女心と秋の空、と言うやつなのだろうか。


――女性陣二人の会話はやけに盛り上がり、そのまま二人で下校していった。僕は一人残されて、ゆっくりと一人で寮まで帰った。普通、流れ的には3人で帰るとこだろうと思った。だが、あまり深く考えると自分に自信がなくなりそうだったから、僕はただ陽気な鼻歌を歌いながら帰ることにした。

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