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「関係性」

 メイ先生が居なくなった後も、ツグミさんは泣き続けていた。僕達は彼女をどう慰めればいいのか、分からなかった。ツグミさんが地道に積み上げてきたメイ先生からの信頼が今日の出来事で一気に崩れ去ってしまった。その辛さは、本人にしか分からないものがあるのだろう。


「ごめんね、ツグミさん」


 最初に声を出したのは、ミリンだった。ミリンはツグミさんと同じ目の高さまでしゃがみ込み、優しく声を掛ける。


「ううん、悪いのは私だから……」


 ツグミさんは涙をぬぐって、小さな声でそう言った。僕とソウタは無言で二人のやりとりを見守る。こういうとき、僕はどうするべきなのか正解が分からない。


「……でもさ、ちょっとメイ先生もツグミさんに強く当たり過ぎじゃないか?」


 ソウタが眉間にしわを寄せながら、一人で呟くように言った。ソウタはツグミさんのことが好きだから庇ってあげたいのかもしれない、とは思ったが、確かに僕もメイ先生がやけにツグミさんに厳しいなとは思った。


『まあいいわ。……あなたには期待していたのだけれどね、ツグミさん』


 そんな言葉を言われてしまうと、ツグミさんだって傷つくだろうし、落ち込むだろう。仕事を頼まれたのは僕達4人なんだから、名指しでツグミさんに言う必要はないはずだ。そんなことを考えていると、地べたにしゃがみ込んでいたツグミさんがゆっくりと立ち上がり、ソウタの顔を睨めつけた。


「そんなことないからっ!!全部私が悪いの!!」


 突然の大声に何が起こったのか一瞬分からなくなった。ツグミさんに突然睨めつけられ、ソウタはあたふたと目を動かしていた。ミリンも慌てて立ち上がり、ツグミさんとソウタの間に割って入ったが、どうしたらいいのか分からず立ちすくんでいる。


「あの、いや、メイ先生もちょっと言い過ぎなんじゃないかなと思っただけで……。ごめん」


 ソウタは頭を下げ、すぐに謝罪した。ツグミさんはメイ先生のことを悪く言われるのが嫌なんだろうか。もしくは、よっぽど責任感があって自分の責任を重く受け止めているのだろうか。ツグミさんの心情は正直よく分からなかったが、この場の空気が最悪になっていることは肌で感じていた。流石のミリンもこの場では何も言葉が出ないようだった。


「……メイ先生は、私のお母さんなの」


張り詰めた空気の中、ツグミさんが突然信じられないカミングアウトをした。メイ先生がツグミさんのお母さん……?


「え??」


「マジ?」


「うそっ?!」


 僕たち三人はそれぞれ混乱しながら、本当かどうかを疑うような目でツグミさんの方を見た。僕は最初ツグミさんが冗談を言っているのかとも思ったが、ツグミさんの顔は少し疲れているように見え、冗談を言えるような状態ではなさそうだった。それに、このタイミングでツグミさんの口から言うような冗談ではない、とも思った。


「だから、お母さんは悪くないの。悪いのはいつも私なの……」


ツグミさんは、また涙を流しそうになるのを堪えながらそう言った。

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