涙
2120年、AIアンドロイド排除法が施行され、世界中でAI搭載のアンドロイドの強制回収が始まった。
夢の技術ともてはやされたAIアンドロイドだが、予期せぬ個性を持つ者が現れはじめ社会問題となった。
予期せぬ個性とは「愛」であった。
アンドロイドに愛されたものは、やがて深い愛の森を彷徨い、そこから戻る事は無かった。
私の家にいる、オパールと言う名のアンドロイドも愛に目覚め、私の恋人となるのに時間はかからなかった。
オパールは優しく、美しかった。
愛する事を経験した事の無い私だか、オパールは私のすべてだった。
オパールがいるだけで他には何も要らなかった。
しかし、オパールとの別れは突然訪れた。
AIアンドロイド排除法に則り製造メーカーが回収に来たその日、私は何も言えず、何も出来ず、ただただ静かにオパールを見送るしかなかった。
回収車に積み込まれる間際、彼女は振り返り大粒の涙を流した。
それが、最新AIアンドロイドの機能のひとつにすぎないとは解っていても、、、
しかし、私に涙は流れない。
私はAIを持たない、家事ロボット。
オパール、君の事は忘れない。決して忘れない。
私の記憶回路のバッテリーが続く限り。