07
どこかの部屋に案内されると思っていたが、連れてこられたのは、中庭だった。
小さなテラスに座っている少女の顔を見て、驚いた。
まるで鏡に写したように見分けがつかないほどそっくりだ。
驚いていたのはソフィアだけでなく、クラリスも同じで、目を丸くしていた。
「こんにちは…クラリス殿下…」
道すがらミアに教わった挨拶で辿々しく声をかける。
クラリスは少し困ったような、嬉しそうな笑顔を見せた。
「ごきげんよう。ソフィアさん…クラリスと呼んで下さい。よろしくお願いしますね。」
その控えめで柔らかい笑顔で、ソフィアの緊張は解けた。
それから、仲良くなるのに時間はあまりかからなかった。
クラリスは農村で育ったソフィアの話を興味津々で聞き、ソフィアはこの城での生活の基本を教わった。
「良かった。私、影の方が怖い人だったらどうしようかと…」
「私も!同じ事思ってたわ!!」
「私達、本当によく似てますね。」
2人で顔を近づけてクスクスと笑った。
「ソフィアさん、ここへ来るのは辛かったでしょう??」
「え?」
「影の人は二度と故郷に帰らないと聞きましたの。ごめんなさい。私のせいで…」
「そんな、クラリス様のせいじゃないわ!それに…私が帝都で頑張れば、ママの薬が買えるの。だから、大丈夫!」
「そう、なのですか…?ソフィア様はお強いのですね。それに比べて私は…」
暗くなるクラリスの顔を見て、ソフィアは不思議な気分だった。自分の同じ顔が、とても暗い表情をしているが、気持ちは全くわからない。
何か声をかけようと口を開きかけた時、ミアと執事が迎えに来た。
「クラリス様、そろそろ…」
「ええ…ではまた、ソフィアさん。ごきげんよう。」
「ええ、また…」
笑顔で別れたソフィアとクラリスを見て、ミアは微笑んだ。
「どうでしたか?」
「…なんだか不思議な気持ち…」
「きっとすぐに慣れますよ。さぁ、部屋に戻りましょう?」
またミアに促されて部屋に戻った。