06
次の日の朝、人の気配で目が覚めたソフィア。
見慣れないベッドの天板を眺めながら、ここは何処だろうとぼんやりと考えた。
「おはようございます。ソフィア様。」
声の正体は、メイドのようだ。ニコリと優しそうな笑顔を見せてくれる。夢見心地だったソフィアは一気に現実に引き戻された。
「昨日はご挨拶もなしに失礼致しました。私、ソフィア様の身の回りのお世話をさせて頂きます。ミアと申します。気軽にお声掛けくださいね。」
ソフィアはどう答えていいかわからず、目を泳がせていた。
そんなソフィアに、安心を与えるように、またミアは笑いかける。
「今日は少し忙しいですよ。クラリス様とご対面されるのですからね。」
「クラリス、様。」
「そうです。ソフィア様が影となる…言わば光。クラリス様です。」
ミアは優しく手を差し伸べる。
「うんと可愛くしてお会いしましょう?きっと仲良くなれますよ。」
明るいミアの笑顔に、ソフィアは少し心が軽くなる。
その手を取り、ベッドから抜け出た。
それからバスタブでミアに身体を綺麗にしてもらい、別のメイドが運んできたドレスを着せてもらい、髪も溶かしてもらった。
「よくお似合いですよ!ソフィア様。」
姿見で全身を見た時、ソフィアは自分でも驚いた。本当にどこかのお姫様になったような気分だった。
「あの…」
「なんでしょう?ソフィア様?」
「クラリス様ってどんな人?怖い人…ですか?」
おずおずと言葉を選びながら話すソフィアに、ミアは微笑む。
「メイドに敬語はなしですよ。見つかったら私が怒られちゃいます。クラリス様は、お優しい方です。きっと大丈夫です。」
ソフィアは少し迷って、うん。と返事をした。
「さあ、行きましょう。」
ミアに促され、ソフィアは歩き出す。
(しっかりしなきゃ…!)
心の中で自分を励ます。無意識にまた左肩に触れていた。