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01


帝都から遠く離れた村で、彼女は育った。



「早くしろよ!!」



外から叫ぶ声に急かされ、少女は急いで階段を駆け降りる。


太陽の光を少し分けたような金色の髪がふわりとなびく。



「行ってきまーす!!」


「行ってらっしゃい。気をつけてね。」



ベッドの上で編み物をする母に手を振り、ドアを勢いよく開ける。



「遅いぞ。」



緑色の瞳が、自分を急かす少年の姿を捉えた。



「うるさいなぁ。そんなに急がなくてもいいじゃない。」



少年は少しムッとしながら少し長く伸びすぎた黒い髪を頭を振って目にかからないようにして、くるりと反対を向く。



「あっ、待って。アル!!」


「置いてくぞ~」



その少女の名はソフィア。幼なじみのアルベルトと日課の山菜採りに出るため、見渡す限り田んぼと畑ばかりののどかな畦道を歩く。


途中、畑仕事をする顔馴染みの高齢者たちににこやかに声をかけられ、ソフィアはその度微笑みながら大声で返事を返す。

アルベルトは返事こそしないが、軽く手を上げて合図を返していた。



「最近この辺で採り過ぎたから、今日は沢の向こうで採ろっか。ベリーもそろそろ実ってるんじゃない?」


「そうだな。」



そう言って、2人は進んでいく。

靴と靴下を脱いで、小さな川を渡っている時にソフィアが前を歩くアルベルトに声をかける。



「あ、そう言えば聞いた?」


「なんだ?」



アルベルトは振り返らずに声だけで返事する。

ソフィアもそんな事ちっとも気にせず話を続けた。



「帝都から、自然調査?で調査員が来てるらしいよ。」


「へー。」


「いいよね。帝都。どんなのかなぁ?行ってみたいなぁ」



先に渡り切ったアルベルトは、振り返って川を渡るソフィアを見守る。



「いつか行こうぜ。2人でさ。」



ソフィアが今にも渡り切りそうな時にアルベルトが言う。

そうして言いながら、ソフィアの腕を掴んで陸に引き寄せてやった。



「うん!そうね!!」



ソフィアは嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら頷く。


アルベルトも少し笑みを返した後、その視線が掴んだ腕の、その肩に落ちる。そこには、痛々しい傷跡がくっきりと残っていた。


アルベルトはパッと手を離し、また前を向いてあるか始めた。

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