山は動くのか?
よろしくお願いします。
アニメ好きの人向けに書いた小説が完結しました。良かったらそちらの方もよろしくお願いします。
ゴリクマオトコが、スーパーニクニクマートに立てこもってから、一時間が過ぎようとしていた。
異変に気付いた地域住民から、警察は通報を受け、数台のパトカーと大勢の警察官で、店を包囲していた。店周辺には、大勢の野次馬が集まり、事件の動向を興味深く、うかがっていた。
「駄段博士並びに英雄仮面同盟の方々が到着しました」
この現場を指揮していた警察責任者に、巡査長から報告が入る。
野次馬達の後方から、異様な格好をした集団が、警察責任者の元へ、ゆっくりと歩いて来る。
ある者は派手な鎧を身に纏い、ある者はスタイリッシュなプロテクターを身に着けていた。
こいつ等が、いわゆるヒーローと呼ばれる連中かと、警察責任者は一別する。
「お待たせしました。私が、英雄仮面同盟リーダーの駄段です。犯人が怪人なので、ここからは我々、英雄仮面同盟が、この事件の指揮権を、引き継がせて頂きます。警察の方々には引き続き、店の包囲と野次馬の方を、宜しくお願いします」
集団の中心にいた白衣を着た白髪頭の老人が、警察責任者に挨拶をする。警察責任者は値踏みするような視線を駄段に送り、現場の後方へと退いて行った。
「駄段博士、どうやら犯人のゴリクマオトコの要求は博士との交渉のようです」
英雄仮面同盟のヒーローの一人、ウインドキッドが駄段の隣に歩み寄る。
水色のプロテクターと、風車の紋章が付いているキャップを被っているのが、特徴的だ。彼は、まだ若いのであろう。どこか仕草や容姿に幼さが残っている。
「ゴリクマオトコって敵さんのナンバースリーだろ?厄介な奴が立て籠りやがったな」
駄段は、自分が交渉に選ばれた面倒くささに苛立ちを感じつつ、ウインドキッドに状況を確認していく。
「そうですね。今、来ているヒーロー全員で戦っても、ゴリクマオトコに勝てるかどうか分かりません。今の英雄仮面同盟の戦力は、かなり落ちています。ファイアバンドさんが、生きていてくれればと、本気で思います」
「惜しい男だったな。ワシも悲しい。だが、失った者のことを言っても、この状況は打開できない。話を戻そう。人質は・・・、人質は何人だ?」
「・・・11人だそうです。一人・・・助けられず犠牲になった女性の方がいます」
ウインドキッドは、うつむきながら答える。
「そうか・・・。今、生存している人質の中に阿多田他太という従業員は入っているのか?」
「いえ、でも、一人、居場所が確認できていない従業員が、確かそんな名前だったかと。それが何か?」
「何?まさかな。もし、もしな、ワシが思っているような状態ならば、山が動くかもしれん」
「ひょっとして、例の新兵器を渡した人間ですか?僕は変身装置を渡したのに、一度も変身して怪人と戦おうとしない、そんな臆病な人間に期待はできません」
ウインドキッドと駄段が会話している最中、駄段の携帯電話の着信音が、現場に鳴り響く。駄段は携帯電話を手に取り、相手を確認する。見知らぬ相手からの電話だ。
「もしもし、駄段ですが」
駄段は警戒しながら、電話に出て、相手を確認する。
「駄段の携帯で、間違いないな。俺は今、スーパーを占拠している怪人様だ」
電話の相手はやはり、スーパーニクニクマートに立て籠もっている怪人、ゴリクマオトコであった。
読んで頂きありがとうございました。