絶望の中で・・・
良かったら、読んでいって下さい。
市街地側のヒーロー達は、静まり返っていた。迫り来る確実な死・・・。全員の脳裏にその言葉がよぎる。
「うわあああああ」
ヒーロー達の何人かが悲鳴を上げ、慌てて逃げ出す。他の者達はそれを制止する気力もないので、逃げて行く様子を寂しく見ている。
ウインドキッドは気力を奮い立たせ、声を上げる。
「キモクサマンが今まで、精一杯戦ってくれた。今度は我々が命を使う番だ。ブラックハートを少しでも足止めするんだ。分かっている。それは、何の役にも立たない無駄な事だと。しかし、我々はヒーローだ。目の前の市民を見捨てて、自分達だけ逃げる訳にはいかない。みんな、戦うぞ!」
ウインドキッドの声が、辺りに虚しく響く。ヒーロー達は誰も、その声に答えようとしない。皆、うつむき、口を閉ざしている。
ウインドキッドはその様子を見て、泣きそうになる。もう、彼等と人々の希望は完全に絶たれたのだと。世界は怪人に支配されるのだと。
絶望の市街地側のヒーロー達を見て、ブラックハートは高らかに笑う。
「フハハハ、とても良い表情だ。そうだ。貴様達は、これから俺に殺されるのだ。逃げてもいいぞ。結局は同じだ。刺客を送り、必ず殺すからな」
ヒーロー達はみな、呆然としている。駄段も、相変わらず座り込んで動かない。橋の上のキモクサマンは仰向けに倒れ、ぐったりとしている。
もう全て終わったのだ・・・。誰もが、そう思っていた時・・・。
「スイマセン、駄段さん。マイクを貸して貰えませんか?」
絶望の駄段の隣にいた愛花が、突如口を開く。駄段はその言葉に何の反応もしない。愛花はそれを見て、駄段の横に置いてあるマイクを手に取る。そして、ゆっくりと話し始める。
「阿多くん、聞こえてますか?今は、キモクサマンだから、分からないのかもしれないけれど。もう、これで最期なので、私の気持ちをちゃんと伝えたいと思って、マイクを手に取りました」
愛花は、橋の上のキモクサマンをじっと見つめる。
「私は阿多くんの事が大好きです。愛しています。本当は、キモクサマンの貴方じゃない時に伝えたかった・・・。阿多くんは、私の事どう思ってたのかな?貴方の気持ちも、ちゃんと聞きたかった・・・。ちゃんと伝えて欲しかったよ。もう、最後だから、あと一つだけ伝えるね。阿多くん、今までありがとう・・・・」
愛花は言葉を詰まらせ、号泣する。そして、その場に泣き崩れる。静寂の中、愛花の泣き声だけが聞こえてくる。ヒーロー達は、無言でその声を聞いている。誰もが悔しい顔をして、うつむいている。
ブラックハートは愛花を睨み、そして視線を足元のキモクサマンに移す。
「何だ?あのクソ女。くだらねぇ話をしやがって。キモクサマン、あれ貴様の女か?俺は、あの手の女が嫌いだ。よし、決めた。まず、貴様を殺す。そして、駄段を殺す。その次にあの女だ。八つ裂きにしてやるから、楽しみにしてろ」
ブラックハートはあざ笑いながら、キモクサマンを見下ろす。キモクサマンは天を仰ぎ、空を見ていた。
その手の拳は強く握られ、プルプルと震えていた・・・。
読んで頂き、ありがとうございました。
あなたと僕の小説力が、向上していきますように!




