弱き正義と強い悪
この小説は最後の戦いが面白くなるように伏線(ネタ振り)を張っています。
「俺は、悪役怪人協会の設立者にして、ビッグボスのブラックハートだ。貴様のことは知っているよ。我等と敵対する、英雄仮面同盟のファイアバンドだろ?炎を操るみたいだな。うちの怪人達を何人か、葬ってくれてるらしいな」
全身、黒ずくめの怪人は、燃えているトカゲファントムを横目に、ゆっくりとファイアバンドに近づいて来る。敵のヒーローと対峙しても、余裕の笑みを浮かべている。
「ボス自らこちらに来るとは・・・。お、俺がお前も葬ってやるよ」
ファイアバンドは、相手の威圧感に圧倒されていた。が、そんな自分に気付き、敵に悟らせないように、気丈に振舞って見せる。
「駄段博士はあっちかな?俺にとって、一番目障りな奴。あいつがいるから、英雄仮面同盟とかヒーローの真似事をやってる奴が、どんどん増えて来る。あの野郎の発明で、変に力持って調子に乗って来る奴等、ホントにムカつくんだよ」
ブラックハートはファイアバンドを視界から外し、後方の暗闇をじっと睨み付ける。
「ま、貴様もついでに殺しておくか」
「悪党は許さない!」
ファイアバンドは会話を遮り、敵のボスに向かって突進する。右の拳が敵の顔面を捉え、鈍い音が夜の森林に響く。
「うわわわあああああああ」
叫んだのは、殴ったファイアバンドの方であった。右の拳は鮮血を流し、砕け、その場に蹲る。
「力の弱い者は、力の強い者に従わなければならぬ。それが世の常。我々、怪人はこの強き力により世界を征服する」
ブラックハートの顔面は、傷一つ付いておらず、その表情は再びファイアバンドを嘲笑していた。
「世界征服などさせない」
ファイアバンドは立ち上がり、両手を前に突き出し、全身の力をそこに注ぐ。両手からは炎が広がり、巨大な炎の塊が、ブラックハートへと放たれる。笑みを浮かべているブラックハートの上半身に、炎は直撃。爆音が響き、炎の光で辺りは照らされる。
「弱い正義は、強い悪の前では、滑稽で無様だな」
炎の中から再び、ブラックハートの姿が現れる。次の瞬間、ブラックハートの右腕がファイアバンドの体を貫く。鮮血が飛び散り、ファイアバンドは仰向けに倒れる。大量の血が地面に流れ出し、致命傷であることを物語る。ブラックハートは赤く染まった自分の右手を笑顔で見つめ、それを舐める。
「ぐふ、はぁはぁ、俺に勝ってもいい気になる・・なよ。駄段博士は・・・新しい兵器を完成させたんだ。お前達の野望は必ず潰える。新たなヒーローに怪人達は・・・怪人達は滅ぼされる・・・」
最後にそう言い残し、ファイアバンドは息絶えた。
「駄段め、また余計なことを。ま、この俺を上回る力などは存在せぬがな」
ブラックハートはそう言い捨てると、再び、駄段博士追撃に向かった。
ファイアバンドの死は、英雄仮面同盟にとって、衝撃の訃報となった。ファイアバンドの強さは、英雄仮面同盟の中で、トップクラスだっただけに、ヒーロー達はその事実に絶望した。
読んで頂きありがとうございました。
これからも努力して面白い小説を書いて行きたいと思います。
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