怒れる怪人カマキリン
よろしくお願いします。
カマキリの怪人、カマキリンは、怪人人生の中で一番、今、怒っていた。
悪役怪人協会のナンバー2の、この幹部の自分の目に、コショウを投げ付ける、不届きな人間がいたのだ。そのおかげで、視界がしばらく奪われ、殺す予定だった多くの人間達に、ことごとく逃げられたのである。
「あの男、絶対に許さん!!」
怪人カマキリンは、自分のプライドを、大きく傷付けた男を、血眼になって、探していた。
辺りを見回しながら、歩いていると、カマキリンは遊園地の広場に、差し掛かった。
広場には、硬貨を入れると動き出す、四つん這いのパンダの乗り物が、三台ほど放置されている。首の所には”パンダちゃん”と明記されていた。
「何がパンダちゃんだ!」
カマキリンは頭に来て、目の前のパンダの乗り物を、蹴飛ばす。このまま怪人協会に帰れば、部下達に任務を失敗した無能と揶揄され、ボスである怪人ブラックハートに、どんな罰を与えられるか。カマキリンは、何かしらの怪人としての成果が、欲しかった。
カマキリンが、辺りの捜索をしていると、彼はメリーゴーランドの前で、親とはぐれて泣いている男の子を、発見した。
カマキリンはニヤリと笑うと、高速で移動し、男の子の目の前に立った。男の子は、この怪人に驚き、逃げようとするが、怪人は素早く移動し、行く手を阻む。
阿多は、その様子を伺い、木の影に身を隠す。ゴリクマオトコの事件の時、自分の決断の遅さの為に、犠牲になった人の事を、思い出す。
もう、二度と、あんな思いはしたくない・・・。
阿多は、左手のブレストを、目で確認し、腕を交差して変身と叫ぶ。全身が光に覆われ、力がみなぎって来る。と、同時に、頭の中がぼやけて来る感覚に襲われる。
あぁ、今、自分は強くなっていっている代わりに、アホになっていっているのだなと、薄れていく意識の中で、変化していく自分の肉体を、阿多はボーッと眺めていた。
カマキリンは、男の子がこの怪人から、逃げられないと悟り、その場に泣き崩れたのを、確認すると、大鎌と一体化している、右腕を振り上げた。
カマキリンは、遠く離れた後方で、きゃあと言う女性の悲鳴声を聞く。目の前で子供が、怪人の俺に殺されようとして、なすすべなく、泣き叫んでいるのだろうと、蔓延の笑みを浮かべ、カマキリンはそう思った。
が、次の瞬間、さっきの考えを否定する、予想だにしない光景をカマキリンは目の当たりにする。
瞬間的に、後方の女性に視線を送ったカマキリンが見たモノは、嫌がる女性に抱き付いて離れない、気持ち悪い笑顔の男の姿であった。
カマキリンは、この異様な光景に、呆気に取られ、振り上げた右腕を、降ろすことを忘れていた。
今、目の前で子供が、殺されようとしているこの事態に、横で嫌がる女性に抱き付いて、笑っている男がいる。
カマキリンは、自分も殺人に快楽を得るような異常者だが、この異常な男は自分以上かもしれないと、恐怖心を抱く。
その笑っている男の姿は、頭に一輪の花を咲かせ、目にはゴーグル、鼻と口からは鼻水とヨダレが垂れ流されていた。上半身と膝からスネにかけて、プロテクターを纏い、黒のブリーフを履いた男。
クレイジーフールと呼ばれるヒーロー、世間ではキモクサマンと認知されている、ヒーローであった。
読んで頂きありがとうございました。




