好きな女よりも・・・・
よろしくお願いします。
遊園地内は、たった一人の怪人の出現により、騒然としていた。大勢の人々は、遊園地の出口を目指し、我先にと、駆け回っていた。
阿多と愛花も、その人々に交ざり、出口の手前まで辿り着いた。
阿多は、愛花と逃げている間、色んな思考が、駆け巡っていた。自分はこのまま、愛花と一緒に逃げていいのだろうかと・・・・。
このまま逃げ切れば、自分達は助かり、愛花と結ばれ、ハッピーエンドとなるかもしれない。しかし、逃げ遅れた人達を見捨てて、このまま自分達だけ、幸せになっていいのか?
今、自分は逃げ遅れた人達を、助ける事が出来るのだ。この左手首に装着された、ブレストというヒーローの力で・・・・。
阿多は、出口の手前で立ち止まり、愛花と繋いでいた手を放す。そして、さっきまで走って来た、後ろの道を振り返る。
「ごめん、愛花さん。愛花さんはこのまま、出口を出て、安全な所まで逃げて。僕は逃げ遅れた人達を、助けに行くよ」
「え、嫌よ。一人じゃ逃げれないよ。私も残って、阿多君と一緒に助けに行くよ」
「僕は大丈夫。ヒーローの知り合いもいるし、こういうの慣れてるから。僕は愛花さんに、危険な目に遭って欲しくないから、このまま避難して欲しい」
「でも・・・・」
「お願いだ。僕も、ちゃんと残った人達を助けたら、無事、戻って来るから」
阿多は、愛花の目を見つめながら、説得をする。愛花も、阿多の真剣な思いと決意を感じ、これ以上、彼を止めることが出来ないと察する。
「うん、分かった。でも約束だよ。絶対、無事に帰って来てね」
「うん、約束するよ」
阿多は、愛花にニコリと微笑むと、振り返り、遊園地の奥へと、走って行った。愛花は、しばらく阿多を見送った後、阿多に言われた通り、出口に向かって走り出した。
阿多は走りながら、ズボンのポケットから、携帯電話を取り出し、駄段に電話を掛ける。
「もしもし、駄段さん?阿多です。今、S市の遊園地にいるんですけど、怪人が暴れています。至急、誰か応援のヒーローを、向かわせて下さい」
「もしもし、阿多君か?遊園地にいるのか?さすがだな。君は怪人を惹きつける何かを、持っているな。こちらには既に、怪人の連絡が入っている。山田君・・・。あぁ、つまり、ウインドキッドも既に、遊園地にいる。彼と合流して、対応してくれ。他のヒーローも、向かわせる」
山田君・・・。あの英雄仮面同盟の本部の一室で、嫌味な態度で接してきた、アイツかと、阿多は浮かない顔で思い出す。
しかし、危機的な状況なだけに、同じヒーローが近くにいるというのは、心強いなと少し安心する。
「分かりました、駄段さん。山田さんと協力して、何とか怪人を止めてみます」
「頼むぞ。君のクレイジーフールは、戦いになれば、負ける事はまず、ない。しかし、場所が遊園地なだけに、アホになると戦わずに、遊んでしまうかもしれん。そこが、気掛かりじゃ」
阿多は走りながら、思わず苦笑いする。自分の事ながら、どんだけ頭が悪くなるんだよと、ツッコミたくなる。
阿多が電話しながら、走っていると、まだ遠くの方だが、緑の物体が目に映る。アイツだと、阿多はさっき自分がコショウを、投げ付けた怪人だと確信する。
阿多の、二度目の怪人との戦いが、こうして始まろうとしていた。
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