ヒーローの名はキモクサマン!!
よろしくお願いします。
「心配せんでもいい。変身すると、生殖機能が停止される為、お触り以上の事は出来ないんじゃ」
駄段は、阿多の肩を叩きながら、擁護をする。
「いや、それでも、女の人の心を傷付けている事には変わりないので、僕は非常に申し訳ないです・・・」
阿多はまた、うつむきながら、暗い表情を浮かべる。
「それでも、君は怪人を倒した。そのことによって、助けられた命もあるという事を、忘れてはならんぞ。君は間違いなくヒーローだ」
今度は駄段は、阿多の背中をポンポンと叩きながら励ます。阿多は、少しだけ気持ちが楽になり、微笑を浮かべる。
「あ、それと今、ここでいう事じゃないかもしれんが、君たちが左腕に着けてある腕時計型変身装置の事を、言いにくいから”ブレスト”とワシは命名した。どうだ、カッコいいだろ?」
駄段は、誇らしげに阿多と山田を見ながら話す。二人は確かに、今言うことじゃねぇだろと、駄段のマイペースな言動に呆れながら、冷たい視線を駄段に送る。
「ワシ等は、色々と今回の事件の処理をしないといけないから、そろそろ帰るよ。君はもう少し休んでから、帰るといい。無理をせんようにな」
駄段はそう言うと、山田と共に席を立ち、部屋を出て行った。阿多は一人部屋に残され、ベッドの上で考える。
そうか、自分は記憶はないが、ヒーローとして怪人と戦って、人々の命を助けたんだなと、思い起こす。実感はないが、事実として他人から伝えられ、感謝される。阿多は悪い気はしないなと、拳を握り締める。
数時間後、阿多は体調が回復した為、英雄仮面同盟の本部を後にし、自室のアパートに戻っていた。
スーパー”ニクニクマート”は、今回の事件を受けて、しばらくの間休業となるらしい。阿多はしばしの休暇の間、何をしようかなと考えながら、テレビを点けてみる。
テレビの番組は、ちょうど夜のニュースをやっていた。今日のゴリクマオトコのスーパー襲撃事件が取り上げられていた。
阿多は自分の事が、どう報道されるのかすごく関心があった為、食い入るように番組に注目する。
ニュースキャスターが、今回の事件の概要について説明をしていた。
怪人の犠牲となり、亡くなった方が一名、ヒーローの乱心により、病院送りになった方が数十人いると・・・。
阿多は、ヒーローの乱心という言葉に苦笑いしながら、自分が関わっていた事件のニュースをじっと見る。
この事件を、遠目で見ていた野次馬へのインタビューや、スーパーで人質となっていた人達のコメントが映像で流される。殺人を行った怪人に対する批判よりも、スーパーで好き放題していたヒーローに対する批判の方が、話題の中心であった。
『あのヒーロー、マジで、気持ち悪くて、臭いんだけど・・・・』
『あいつに私、変なとこ触られましたー。ホント、最悪です』
『今回のことは、英雄仮面同盟の失態だと思っています。トップの人間に責任を取ってもらいたいです』
阿多はテレビの前で固まっていた。自分は人の命を救ったはずなのに、それに対する賞賛の声や感謝の言葉が一つもない。確かに自分は酷いことをしていたようだが、この対応はあんまりだと言葉を失う。
その後、この阿多の変身したヒーロー、クレイジーフールは、世間やマスコミからこう呼ばれるようになる。
”キモクサマン”・・・・・・・・・・と
泣いた・・・・・・・・。阿多はこの日、静かに泣いた・・・・・・・
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