表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

出会い

 そこはよく漫画やアニメで見るような古びた道具屋だった。ただ一つ異質な事が武器…というか剣にあたる物がほぼ売られていない。売られている物といえば、指輪やネックレスに宝石、それに杖や枝なんかもある。

 「いらっしゃい。」

 声のする方を見ると白い髭を生やしたドワーフの様な顔立ちの小人のおっさんがカウンターに座っている。

 「装備が欲しいんだが、一式売ってくれないか?とりあえずこれで買えるやつで。」

 俺は初回ログイン時に貰った1000ポルカを全ておっさんの前に差し出す。この世界では通貨はポルカと言われミッションや探検などで入手し生計を立てている。

 「あー、坊主よおめぇビギナーだろ?こんなちっぽけな金じゃあ短剣一本程度しか買えねぇぜ。」

 「むっ…、そうなのか?」

 金が足りないときたか。近くでモンスターでも狩るか?だが武器も無いし、何よりまだこのゲームの特性を理解していない。誰かレクチャーしてくれる人でもいないかと思ったその時、

 「こんちゃー」

 と、気の抜けた声が店の中に響いてくる。振り向くと赤いローブを纏いカツカツとヒールの音を鳴らしこちらに近づいてくる1人の女性。よく見ると目は透き通る様で大きな吊り目、髪色も赤色の世間一般的に美人とカテゴリーされるタイプのやつだ。

 「おっちゃん、いつもの薬10セット騎士団に送っといて。それとこの前討伐した古龍の素材もう届いてのかしらん?」

 「おう届いてるぜ。しかしよくあの古龍を討伐できたな!奴は聖剣使いでも手こずるレベルだぞぉ!さすがは魔剣使いだ!」

 古龍?聖剣?魔剣?一体なんの話をしてるのかさっぱりだ。この女かなり長くプレイしている高ランカーに違いない。俺は迷わず彼女に言葉を投げかけた。

 「俺に稽古をつけてくれないか?見たところあんたはこのゲームに詳しそうだ。報酬は出世払いだ。どうだ、悪い話にはさせないぞ。」

 「……あんた誰?おっちゃん、こいつビギナー?なんでこんな奴店に入れてんのよ!あんたレベルはいくつよ?」

 「まだレベル1だ」

 「レベル1のザコなんかが赤刀騎士団の副団長であるこの[赤い火の玉]レーナ様に意見出来ると思ってるの!?そんなに稽古をつけてほしいなら私と決闘して勝ったならつけてあげない事も無いわよ!」

 「ふん…決闘か。それはわかりやすい。いいだろうじゃあおっさん、この1000ポルカでさっき言ってた短剣を売ってくれ。」

 「そりゃ構わねぇけど坊主、相手が悪いぞ!彼女は前大会のナンバーズ…つまり、ランク10入りを果たしてる!この世界じゃ超有名人なんだ悪いことは言わねぇ、やめときな!」

 「大丈夫だよぉおっさん。いいから黙って短剣よこしな」

 店主のおやじは1000ポルカと引き換えに[ポンコツな技師が作った短剣 ランクD]を俺の前に出してくる。どうやら、所有物となった物にはランクが付けられており手に取ることでそれが可視化されるシステムの様だ。

 「なんだよDランクか…。まぁいいや相手してやるよ。えっと…ルーナだっけ?」

 「レーナよ!舐めやがって承知しないんだからっ!広場に行くわよ!ついてきなさい!」

 と言うとレーナと名乗る人物はツカツカと店の外へ飛び出していった。

 「はいはい、レーナね…。」

 ゲームとはいえ、女性の名前を間違えてしまったカイルは彼女が言った先へとついていく。後ろには心配そうに見守るドワーフみたいなオヤジ。心配ないとジェスチャーを送り、店の外に出るのだった。

 広場に出ると中心に光の輪があり、そこからプレイヤーが次々と出ては消えてを繰り返している。どうやらあの光の輪が転移門の役割を担っている様だ。その転移門の前に一際美しい赤い髪をなびかせた1人の女が立っていた。

 「今更逃げ出そうなんてそうは行かないわよ!しっかり審判兼見届け人として私の信頼出来る部下を呼んどいたわ!カルマン!来なさい!」

 「はっ…」

 レーナが一言そう言うと影から赤いローブを纏い顔を隠した男らしき人物が出できた。

 「ルールを設定するわ、1体1の決闘モードで相手に一撃入れれば勝利。魔法は好きに使っていいわよ。レベル1のあんたに魔法が使えるかはわからないけどね!っクク!」

 「構わないさ、俺はこの短剣一つで十分だ、あんたこそ自分の身を心配した方がいいぞ。部下の前で恥をかきたくないだろ?」

 「ふふ….どこまでも人をコケにするのがお上手なのね…いいわ!そんなちっぽけな短剣一つへし折ってあげる!このケルベロスでね!」

 彼女が手に持っている大剣が禍々しい魔力を帯び電撃が弾ける。するとさっきの武器屋のおっさんが後ろからこう告げる。

 「レーナが持っている武器は両手大剣の[地獄級怪異ケルベロス]だ!ランクはSだぞ!本来なら勇者が持つ伝説級アイテムと同等の性能を有しているぞ気をつけろ!」

 「ランクS…?どうやら口だけでは無いらしいな。せいぜい武器頼りじゃない事を祈るよレーナ。」

 「どこまでも口の減らないクソ野郎ね…いいわ!見せてあげる私の実力。泣いたってゆるさないからね!カルマン!合図なさい!」

 「は…、それでは両者宜しいですか?これよりレーナVSカイルの決闘を始めます!決闘会社!」

 途端、レーナは一瞬姿を消した。そして次の瞬間あの大剣が頭上に振り下ろされるのであった––。

                第2話  完 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ