1.決戦!魔王城!
ここは魔王国の山奥深くにそびえ立つ魔王城。
俺はその玉座の間の扉を開け、中に踏み込んで玉座に座る魔王に向かって叫んだ。
「望み通り一騎打ちに来たぞ!かつての魔王を消滅させたこの聖剣には貴様も抗えまい!その穢れた生命を断ち切って父上の無念を晴らし、我が祖国に平和を取り戻してくれよう!覚悟しろ魔王!」
「あー、盛り上がってるとこ悪いんだけど……その『聖剣』、見た目それっぽいけど、僕の息のかかった商人を通して君の国のシェスク公爵に売った普通の剣だから。そんな能力無いよ」
「へ?……デ、デタラメを言うな!そんな虚言には騙されんぞ!」
「じゃあ、試しに剣の柄に付いてる赤い宝石を刃側に、青い宝石をその反対側にずらしてくれる?それで柄の底が外れて中から証拠が出てくるよ」
「何を言って……!」
つい、言われた宝石に触れてしまったが、確かにその通り動いて柄の底が外れ、中の空洞から丸められた上質紙が出てきた。
丸めた紙を留めているのは……この魔王国の印が押された蜜蝋!?
「バカな!?」
蜜蝋を剥がして紙を伸ばすとそこには流麗な筆致で一言
『ごめんね♡』
「ふざけるな!」
「一応騙した謝罪はしとこうかと」
「余計腹立つわ!」
床に転がった『聖剣』を腹立ちまぎれに蹴とばし、背負ったライフルを下ろして構えようとする。
魔王にライフルが効くかどうか分らんけど。
すると、玉座の魔王がパチリと指を鳴らした。
次の瞬間、部屋の周囲の扉が全て開き、そこから武装した兵士たちが玉座の間に突入してくると、そのうちの数名があっと言う間に俺を押さえつけ、残りの兵士たちは魔王を守るような配置についた。
「約束が違うぞ魔王!くっ!卑劣な!」
「約束って?」
「魔王城の前にたどり着いた俺と部下達に向かってここのバルコニーから言っただろう!『勇者グスタフよ!その覚悟があるなら一人で我のもとへ来るがよい!我も一人この玉座の間で待っているぞ!決着がつくまで魔族には貴様とその仲間に手出しさせぬことを約束しよう!』と!」
「玉座の間では一人で待っていただろう?隣の部屋に部下を待機させていただけで」
「どんな屁理屈!?いや、しかし、決着がつくまで魔族には手出しさせない約束だろう!俺を押さえつけているこいつらはどう釈明するつもりだ!」
「皆人間だからね。『魔族には』手出しさせていないよ?」
「へ……」
「ついでに言うと僕も人間だけど。魔王とか魔族なんてほんとに存在すると思ってた?」
ちょっと待て。なんか魔王から自己存在を否定する台詞が出てきたんだが。