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第980話 届かぬ連絡、迫る決戦

 俺はずっと懐中時計の針を見つめていた。そして、時計の針が丁度作戦開始の時間を指し示すところに達した。

 俺は懐中時計から顔を上げると、カローラに向き直る。



「カローラ、城からの連絡は来てないか? 魔石の変化はあったか?」



 遺跡攻略部隊の俺たちは、全体の作戦状況を密にするために、どれだけ離れていてもテレパスが使えるレビンとトレノを、それぞれカローラ城で全体の指揮をとるエイミーと俺たちとで分けて連絡が取れるようにしている。その上で、各部隊に渡している鳥の魔石で状況を知らせるアイテムをカローラに持たせているので、即座に簡単な情報のやり取りが行えるようになっていた。


 俺に声を掛けられたカローラは、残念そうな顔をして首を横に振る。



「いえ… 城に残しているトレノからは何の連絡もありません… 魔石も同じです。他の囮班からの連絡もありません…」


 

 囮班からの連絡が無いことは、問題が無いということなので良い事だが、城からの連絡が無いということは… 予定の時刻にプリニオが現れなかったことを意味する。



(レーヴィの奴がやられたのか…いや、やられたのであれば連絡が来るはずだ…)



 レーヴィに渡してある帰還用のテレポート魔道具には、もしレーヴィが心肺停止した時には、すぐさまカローラ城へのテレポートが作動するようにディートに頼んでいた。それは、レーヴィが殺され、作戦継続が不可能なことが、すぐに分かるようにと、セットや仲間の為にも遺体だけは取り戻してやりたいという思いからであった。


 そして、城からその連絡も無いということは、レーヴィは生きており、魔王城潜入作戦は実行中であるが、レーヴィがまだプリニオの元に辿り着いていない、もしくはヴラスタには気の毒だが、プリニオが俺との取引を拒否したことになる。


 まぁ、いい…プリニオが現れなかったというなら、俺たちは遺跡でソーマを手に入れれば良いだけだ。だが、疑問に思う事がある。



「カローラ、ぼっさんが救出されたって連絡もないのか?」



 俺は再びカローラに尋ねる。



「はい、何もありません…」



 カローラは沈んだ顔で答える。


 レーヴィに任せた作戦内容は、先ずぼっさんの救出。次にプリニオへの接触。そして余裕があれば魔王城内での陽動と、レーヴィが望んでいるユウセイの暗殺である。最初にぼっさんの救出をもってきたのは、プリニオへのコンタクトを先に行って、プリニオが全く取引には応じず、逆に騒いで魔王城が警戒態勢に入れば、ぼっさん救出が困難になるからだ。

 そして、プリニオとの取引に関しては、俺たちの遺跡攻略開始時間があるので、レーヴィにはその時間に間に合うように、作戦を行うように告げていた。


 なのにぼっさんが救出された連絡も、プリニオが取引に現れた連絡も無いということは…最悪の場合、ぼっさんは既に処分され、プリニオは取引を断わったということになる。



(すまん…ぼっさん、もっと早くに救出に動いていれば…)



 俺は心の中でぼっさんの冥福を祈る。


 すると、カローラが声を上げる。



「あっ! イチロー様! 魔石が割れました!」


「どの班の、何を示す魔石だ!」


「これはルミィのいる南周りルートの…接敵を示す魔石です!」



 現在、遺跡攻略のチーム分けは、ホラリス方面からカルナスを目指す南回りルートには、ブラックホークとルミィ、カーバル方面からの北回りルートにはデュドネチームが、城の護衛にはハワードチーム、そして、本命の遺跡攻略には、俺とカローラ、ポチに道案内の速水先輩、そして、昔一緒に冒険したアソシエ、ミリーズ、ネイシュの三人がついてくれている。

 アソシエ達三人が遺跡攻略組に名乗りを挙げてくれた時は嬉しかったし、ロアンに追放されて以来、久々に一緒に冒険できるので懐かしさも感じた。

 それぞれの囮班には、遠距離攻撃か飛行魔法を使えるメンバーを優先し、補助として何名かの蟻族もつけている。そして、残ったメンバーは城を空にすることは出来ないので、城の警備についてもらっている訳だ。


 距離の短い北回りルートを先行して出発したデュドネたちは、敵と遭遇していないし、その後に続く俺たちも敵に接敵していない。そして、そこから攪乱に動いたデュドネたちとは違って、真っ直ぐ遺跡を目指した俺たちは遺跡とはもう目と鼻の先の距離に来ているはずだ。



「ようやく、接敵したということは…レーヴィの陽動が効いていると考えてよいのか?」



 いや…レーヴィは俺たちの為に、必死に仕事をやり遂げてくれたのだ…

 ありがとう! レーヴィ!


 

 俺は独り言を漏らした後、そう考える。そうでなければ、俺たちは早々に魔族と接敵していたはずだからだ。


 そんなことを考えていると、運転席側で道案内をしていた速水先輩が声を上げる。



「イチロー君! そろそろやで! 遺跡が見えてきた!」


「本当ですか!? 先輩!」



 俺は運転席側に身を乗り出す。



「ほら! あそこや! イチロー君! あそこに日立の樹というか世界樹みたいなんがあるやろ? あの下や!」


 そう言って先輩はフロントガラスを通して外を指差す。その指先には、先輩の言う通り、満月の月明かりに照らされる幻想的な通常より大きな木があり、その下には確かに遺跡の入り口のようなものが存在した。



「アレが…ソーマの眠る遺跡か…」



 プリニオからソーマを手に入れられなかったのは残念だが、その産地と思われる遺跡が俺たちの目の前にある! 



 もはや、立ち止まることなど出来ない場所に来た!後は突入するのみだ!



 俺は運転席側から皆のいる客席側に振り返る。



「みんな! 遺跡が見えた! いよいよ突入するぞ!」



 俺の言葉に、カローラもポチも、アソシエもミリーズもネイシュも皆、覚悟を決めた顔でコクリと頷く。そこへ後ろから速水先輩が声を掛けてくる。



「イチロー君、ホンマに私も参加せんでいいの? 私もある程度は戦えるで?」


「先輩は、ここまで道案内をしてくれただけで十分です! それにここからの戦いは非常に厳しいものになります。今まで共に戦ってきた者しか連携が取れないでしょう…」



 今回の遺跡攻略組にはプリンクリンも名乗りを挙げていた。しかし、強敵である魔族との戦いがあるかも知れないのに、一緒に戦った事のないプリンクリンでは上手く戦えないと思って置いてきたのである。

 だから、先輩にも道案内をしてもらうだけで、攻略は俺たちだけで行おうと考えたのだ。



「そうか…足手まといになるならしゃーないな… そやけど、イチロー君、無理したらあかんで…」


「…必ずやソーマを手に入れて戻ってきますよ… 先輩は先に城へ戻っていてください! 蟻族たちも先輩の警護をよろしくな!」



 俺たちは遺跡を攻略した後、テレポート魔道具で城に戻る予定である。なので、先輩を乗せたこのホラリス馬車は俺たちを下ろした後、城へと帰ることになる。その護衛として蟻族を二人載せていた。その蟻族は俺の言葉にコクリと頷く。



「じゃあ、みんな! 降下準備をするぞ! ポチ! こっちにこい!」


「わぅ! いちろーちゃま!」


 

 フェンリルの子犬状態になったポチが俺に飛びついてくる。



「よし! 次にカローラ! アソシエ、ミリーズ、ネイシュ! 順番通り俺の後ろに並んでくれ!」


「分かりましたイチロー様!」



 カローラがぺたっと俺の背中にしがみ付く。



「私もイチローにおぶさる様に掴まればいいのよね…」



 そのカローラの上からアソシエがしがみ付く。



「アソシエにイチロー…重いなんて言わないでね?」



 そのアソシエの後ろからミリーズが抱き付いてくる。



「ミリーズ、ごめん、身長差があるからミリーズに負ぶさるね」



 そのミリーズにネイシュがひょいと飛びついて負ぶさる。

 


「よし! 降下準備は整った! 運転手! ドアを開けてくれ!」


「分かりました! イチロー様! ご武運を祈ります!」



 その運転手の声と同時に扉が開け放たれ、外の気流が車内に流れ込む。



「じゃあ行くぞ!」



 俺たちは、その言葉と同時に、車外に飛び出す。


 俺たちは見る見るうちに月明かりに照らされた地面に落下し、後ろでは飛び降りたホラリス馬車がどんどん小さくなっていく。



「ポチ! いつもの大きさに戻ってくれ! カローラ! 闇の触手を翼の形に広げろ!」


「わぅ!」


「了解です!」



 ポチはすぐさま俺たち全員を乗せられるフェンリルの大きさになり、カローラは闇の触手を使って巨大な翼を作る。そして、俺は飛行魔法を使い、俺たちは翼を持ったフェンリルに跨り、空を滑空する状態になる。


 そして、ふわりと緩やかに地面に着地すると、ソーマのある遺跡を目掛けて駆け出して行ったのであった。




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