表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/959

第35話 ウマリホーへの侵入

 俺達はカード購入から数日過ぎ、目的地のウマリホーの近くまで来ていた。


 昼間に、俺が隠蔽魔法を使って調査してきた情報では、どうやら街の住人を皆殺しなどはしておらず、魔族の領民として扱っている様だ。意外と平和的だな。まぁ、ボスであるプリンクリンが元人間と言う事もあり、また、自身の悠々自適な生活を送る為に生かしている素振りがある。さすがに住民から聞き取りなどをして、俺達の存在がバレるのはマズいのであくまで見聞きしてきた情報だけだ。


 という訳で、俺はボスであるプリンクリンの居場所を調べ、大体の人員の配置を覚えてきた。そして、侵入経路を見極めて、馬車に戻ってきた。そして、後は夜陰に紛れて忍び込むので、深夜になるまで待っていた訳だ。


 そして、仮眠を終え、いざ突入の時間となった訳だが…


「で、カズオ…」


俺は目の前のカズオを見据えて口にする。


「へい、何でしょう?旦那」


俺は少し、息を吸い込む。


「お前、その恰好はなんだ?」


カズオは少し頬を染める。


「似合いますか?旦那」


 そう言ってカズオはいつものカテーシーをする。短いスカートでやるものだから、チラチラのカズオのパンツが見える… くっそ! 衣装に合わせて女物みたいなものを履いてやがる!!


「似合わねぇよ! そもそも、シュリとカローラでも厳しいのに、大柄のお前がプリンクリンの恰好をしても直ぐにバレるわ!」


「えぇ? あっしは全員参加と思っていやしたが…」


 そう言って、カズオは指を咥えて女の子のおねだりの仕草をする。毎回毎回、どこでそんな仕草を覚えてくるんだ…


「お前、俺達の話きいてねえのかよぉ! 相手の取り巻き連中は、有名パーティーだぞ? 普通のハイオークのお前では歯が立たんぞ!」


「旦那…では、あっしは留守番でやすか?」


 カズオは目を潤ませながら身を乗り出してくる。そこで、俺は少し考える。カズオのキモイ衣装やイラつく仕草は逆に敵を激怒させ、より多くの取り巻きを引き付ける事ができるのではないか? まぁ、追いつかれたら、間違いなく殺されるが…


「ん~ 分かった。カズオ、ポチと一緒についてこい」


「わう!」


ポチがしっぽを振って答える。


「なんでポチと一緒なんでやすか?」


「そりゃ、見つかった時に逃げ回る為だ。その代わり、見つかったら出来るだけひっかきまわせ。いいな?」


 ポチさえ付けて於けば、何とかなるだろう。ポチはあのクリスに飯を分けてやるぐらい優しい奴だ。カズオを見捨てたりはしないだろう。


「へい、分かりやした…」


「わう!」


次にシュリが俺の前に進み出る。


「主様、わらわはどうすればよいのじゃ?」


「シュリ、お前は遠目に見たら本人に見えるかもしれんから、出来るだけ近づかんようにして、追掛けさせろ」


 シュリはプリンクリン本人より、頭一つ分ぐらいは小さい。だから、近づいたらバレるが遠目なら分からんだろう。


「追掛けさせろとは?」


「そうだな…『うふふ、私を捕まえてごらんなさぁ~い(ハート)』みたいに言って、追掛けっこでもしてろ」


俺なら全力で追掛けて押し倒したくなる言葉を教える。


「えぇぇ…幾らんでもそれは無理じゃろ…」


「無理だと思うなら、上手く化けれるようになれ」


俺の願望を否定され、イラっとする。


「そ、それは主様の要望ではないか…」


「あ?」


「何でもありませぬ…」


俺の威圧でシュリは押し黙り、次にカローラが俺の前に進み出る。


「イチロー様、わたしは?」


「カローラはウロウロしているだけ、多分、迷子がいると思って向こうからやって来る。それで、目的の人物が居たら眠らせるなり、麻痺させるなり好きにしろ」


 カローラは何と言っても幼女だ。いくら変装しようとも一発でバレる。しかし、幼女を見て、いきなり切りかかる奴はいないだろう。元々、人類側のパーティー連中なら、保護しようと動いてくるはずだ。その隙を突くしかない。


「分かりました」


「とりあえず、俺の調査では50人が三交代制をとっていて、夜間の護衛の人数は16人だ。おそらく身辺警護には2~3人程ついていて、後は巡回しているか、詰所に詰めていると思う。だから、俺が身辺警護の2~3人だけ、相手すればいいようにお前たち三人で12~3を引き付けてくれればいい」


 おそらく、身辺警護には支援系や回復系ではなく、戦力重視の人材を置いているはずだ。だったら、俺が状態異常の魔法を使えばある程度の人数は除去できる。その後、プリンクリン本体を叩けばいい。


「主様よ、別に倒してしまってもよいのじゃろ?」


「いや、それはマズイ、操られているとはいえ、元は人類側の勇者パーティー達だ。後々困る。」


 どこぞの従者みたいな言葉を言うが、フラグになりそうだがら止めて欲しい。後、取り巻き連中には、俺の顔見知りもいるので、殺されると後味が悪い。


「分かった、了解じゃ」


「では、皆に隠蔽魔法をかけて、敵の本拠地に乗り込むぞ」


皆はそれぞれに頷いた。


 俺は皆に隠蔽魔法をかけて、皆でウマリホーの街へ向かう。プリンクリンの居場所は、街の領主の邸宅を使っている。プリンクリンの手下は全員、魅了した人間を使っている為、この時間は町の住民を含めて、ほぼ眠っている。起きているのは警護や巡回の人員だけだ。なので、街への侵入は驚く程容易い。


「なぁ、主様よ…」


シュリが小声で訊ねる。


「なんだ?」


「街並みがみなピンク色で、お洒落というか可愛らしいというか…なんなんじゃ?」


シュリが辺りのファンシーな街並みを眺めながら言う。


「しらん。俺も調査した時に、一見、歓楽街かと思ったが、いかがわしさがないし、普通の店舗や家だったので驚いた」


 俺も調査の時に、風俗店かと思ったら、一般の女子供が出入りしてたから驚いたし、住民もそれになれている様で更に驚いた。


「あぁ、それプリンクリンの趣味です」


カローラが補足を入れる。


「…筋金入りじゃな…」


「これ、プリンクリンを倒した後、別の意味で復興事業が必要になるか? それとも、そのままにして観光名所にでもするか…」


これ、元に戻すの大変だろ…


「いや、どちらにしろ住民が困るじゃろ…」


魅了が解ければ、住民もこの異様な街並みに抵抗感を持つのか?


「目的地のプリンクリンの居場所が見えて来たぞ」


道の先には、プリンクリンが居場所に使っている領主の邸宅が見える。


「やはり、邸宅もピンクか…しかも、門番の鎧もピンクじゃぞ…」


シュリが呆れた様に言う。


「しかも、鎧の胸の所にプリンクリンの絵まで描いてある…」


プリンクリンの趣味を知っているはずの、カローラでさえ引いている。


「あっしは先程の街並みも踏まえて、可愛いと思うんでやすが…」


 あぁ…カズオのキモサはプリンクリンの趣味に通じる所があるのか… ん~ カズオの言動を美少女に置き換えたら…プリンクリンになるのか?


「所で主様よ。あの門番はどうするのじゃ? 眠らせるか?」


シュリが訊ねてくる。


「ん~ 交代や見回りが来た時に騒がれるから、そのまま素通りしようか…どうせ隠蔽魔法で見つからんし」


俺はそう言ってスタスタと門番の前を通って、邸宅の敷地へ入っていく。


「本当に気付かれんのじゃのう」


シュリは目を丸くすると、俺の後に続く。残りの奴らも同様に入ってくる。


「よし、邸宅の敷地に入ったな。シュリとカローラは邸宅内部でウロウロして敵を引き付けろ。カズオは騒ぎが起きるまで、どこか物陰に隠れてろ。騒ぎが始まったら、その目立つ姿で動き回って敵を引き付けろ。いいな?」


皆は俺の言葉にコクリと頷く。


「では、作戦開始だ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ