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はらつい・孕ませましたがなにか? ~勇者パーティ内で女性メンバー全員を口説いて回った最強チートの俺が、リーダーにばれて追放? だが、もう遅い~  作者: にわとりぶらま


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第1008話 縁が呼び寄せたもの

 土煙を纏い、突然現れた謎の軍団。その土煙により、詳細な軍の規模を窺い知ることはできない。だが、決して無視できる規模ではない事は一目見て分かった。



「観測兵! 早く軍旗を確認して、どこの軍なのか報告しろ! 早急に対処しなければならん!」



 先程まで落ち着いていたランベルトも焦り気味の声で観測兵を急かす。そして、焦っていたのはランベルトだけでなく、城にいた俺自身も焦っていた。



「おい! エイミー! あの軍勢はお前が援軍要請していた部隊なのか!?」



 俺は望遠魔法で謎の軍勢を見定める。



「いや… 私が援軍要請していた軍勢は、あのような規模にはならないはずですが…」



 エイミーも突然現れた軍勢の規模に戸惑いを隠せない様子だ。


 そんな中、様子を伺うように立ち止まっていた謎の軍勢が動き始めた。謎の軍勢は更に土煙をあげて、こちらを目掛けて駆け出してくる。


 謎の軍勢の登場に、イアピース王国軍も、そして、敵の人類連合軍も動けずにいた。その様子は、まるでお互い固唾を呑んで、どちらの援軍なのか見定めている様でもあった。



「マジでどちらの援軍なんだよ… 軍旗さえ確認できれば、どちらの援軍か確認できるんだが…」


「私が援軍要請した、ベアールの…」



 エイミーがそこまで言いかけたところで、謎の軍勢が掲げる軍旗が確認できた。



「べアールではない!? いくつもの軍旗が見えます!!」



 最初の軍旗が確認できたところで、エイミーが驚きの声を漏らす。いくつもの軍旗が見えるということは各国の混成部隊…人類連合軍と同じ状況だ! やつら、もう一軍を用意していたというのか!?


 今までの善戦で気をよくしていた俺の背中に冷や汗が流れる。それと共に最悪の想定…前のループで見た仲間たちが次々に打ち取られて行く光景が頭を過ぎった。


 俺は、そんな想定を振り払う為、謎の軍勢を目をよく凝らして見る。すると見覚えのあるものを発見する。



「いや! ちょっと待て! あの軍旗…見覚えがある!! あれはウリクリの軍旗じゃねえかっ!! しかも、王自らの出陣を現す王紋旗!! マイティー女王自ら出陣しているのか!?」


「キング・イチロー様!! 他にも軍旗が見えます!! 私が援軍要請したベアールのサイリス様の第四騎兵隊の軍旗に…あの軍旗はどこのものでしょうか? 私の知らない軍旗もあります!」


「あの軍旗って…あれって…ダスタールの軍旗!! しかも各部族の軍旗も見える…ありゃハルカ族のオリヴェルじゃねえか!! 来てくれたんだっ!!」



 最初に様々な国の軍旗が見えた時には、人類連合軍の援軍かと驚いたが、謎の軍勢の正体は、俺が懇意にしていた国々…最初にプリンクリンの危機から救ったウリクリ、蟻族の侵攻に陥落しかけていたベアール、そして気が合って友人同士になったダスタール、それぞれの軍旗だったのだ!



「ハハハ! ベアールだけの援軍では、戦力の逐次投入という愚策! 私も駆けつけてやったぞ! 婿殿よ!!」



 馬上のマイティー女王が高笑いをして声を上げる。



「宿敵ウリクリと轡を並べるのは遺憾であるが、我らダスタールの恩人であり、最高の友であるアシヤ・イチローの為ならば、そんなことは厭わぬ!」



 ダスタールのオリヴェルが巨大な戦斧を掲げて叫ぶ。



「我らベアールが一番初めに声を掛けられたというのに、イチローへの恩義を返せぬままウリクリやダスタールに出番を奪われては、顔が立たん! 一番槍は我らが上げるぞ!!」



 ベアールのハニバルで共に戦ったデミアル・ルド・サイリスが、空に信号弾を打ち上げる。その信号弾を見てエイミーは驚きの声を上げる。



「えっ!? 登場して早々にあの作戦を!? 我が蟻族たちよ! 直ちにブンカーエクスプロージオーンの準備を!!」



 エイミーの号令と共に、陽動を行っていた蟻族たちは、先行突出してくるサイリスの騎兵隊の上に移動し、地上の騎兵隊と歩調を合わせる。



「ひぃっ!! この期に及んで敵の増援だとぉ!? しかもこのままでは横撃されてしまうではないか! 早く! 早く対処をするのだっ!!」



 突如現れた謎の軍勢が地響きを上げて、自分たち目掛けて突進してくる様に、恐怖したラグランは狂ったように騒ぎ立てる。



「くっ! 伏兵を用意していたとは… しかし、騎馬の突撃…槍兵! ファランクスフォーメーションで槍衾を作れ! 突撃してくる敵を突き刺してやるのだ!!」



 ラグランに引き換え、副官ダグラスの指揮は素早く、そして妥当なものであった。横撃とはいえ軍の中央に騎馬突撃を仕掛けてくるのは愚策であり、このように槍兵の槍衾で対応すれば、自ら罠に飛び込むようなものなのだ。


 だが、ベアール第四騎兵隊を指揮するサイリスにとっては、そんなことは百も承知であり、その為の蟻族への連携指示であったのだ。



 パスッ!



 槍兵たちの目前の騎兵隊から再び信号弾が撃ちあがる。それと共に、騎兵隊の上空を追従していた蟻族たちが、先行して槍衾を作る槍兵たちの上を通過する。


 その時、蟻族たちから槍兵たちに何かが落とされる。



「なん」



 槍兵たちがそれを確認しようとした瞬間、それは眩しい閃光と轟音と共に炸裂し、槍を構えていた槍兵たちを紙屑のように吹き飛ばしていく。



「なんだと!?」



 槍兵が言えなかった言葉をダグラスが絶叫する。しかし、槍兵たちの悲劇はそれで終わってはいなかった。爆発の粉塵が収まらぬうちに、蹄の音と共に黒煙を貫くように、サイリス率いる騎兵隊の馬上槍の先端が姿を現したのだ。



「あぐっ!」

「かはっ」

「ぐっ!!」



 駿馬による高速と人と馬の圧倒的な質量から生み出される槍の一撃は兵を貫くだけではなく、容易く引き裂いていき、一つの死体ではなく、二つに分かれた死体を生み出していったのだ。



「かつてのハニバル防衛戦では生かせなかった我らが力… これが第四騎兵隊の真の力だ!!!」



 敵の槍兵を引き裂きながらサイリスが叫ぶ。



「流石はサイリス様、彼の騎兵隊にはこれ程の威力があったので、我ら蟻族は地下からの攻略をせねばならなかったのです」



 その様子を見て、ハニバルでサイリスと敵対していたエイミーが呟く。


 俺はエイミーのその言葉に驚く。ハニバルでエイミーたちは地下を通じて城攻めの準備をしていたが、それは蟻だからではなく、サイリスたちの騎馬突撃を恐れたためのものだったのだ。



「サイリスに一番槍は奪われたようだね…では二番槍ぐらいは我々が上げないとね!」



 ウリクリのマイティー女王が自ら騎馬の先頭を率いて駆け出す。



「くっ! またしても騎馬突撃か!! 銃を回収したものは、上空の蟻族を撃ち落とせ!! 槍兵は再び槍衾を作って備えろ!!」


 

 混乱する前線の中、副官のダグラスは何とか統制を取り戻そうと指揮を続ける。



「はん! 騎馬隊の特技が突撃だけと思っているのかい?」



 マイティー女王はそんなダグラスの指揮を鼻で笑うと、ウリクリの騎馬隊は突撃するのではなく、槍衾の前を横切るように通り過ぎていく。



「何を…」



 行動の意図が読み取れなかったダグラスが声を漏らした時、前を横切る騎馬隊から矢が放たれる。



「ハハハ、これは野兎よりも的が大きい! 皆、外すんじゃないよ!」


「くっ! 騎射か! しかし、大盾で防げば…」



 高笑いを上げて射撃してくるマイティー女王に、槍兵たちは大盾を構えて射撃に耐えようとする。しかし、槍兵たちの前を駆け抜け、その隊列の端に達した騎馬隊はくるりと槍兵の隊列の端を包み込むように曲がり、その隊列の横に向けて騎射を続けたのである。


 縦列に疾走する騎馬隊の後方より浴びせられる前面からの射撃、そして隊列の先頭部分から浴びせられる側面からの射撃、その二つを用いて、十字砲火を作り出していたのだ。



「うっ!」

「あが!」



 端から一人、また一人とじわじわ削られて行く槍兵。



「くっ! 隊の端の者は斜めに盾を構えよ!!」



 ダグラスはその場しのぎの指示を飛ばすが、槍兵が斜めに構えた瞬間、騎馬隊の後方から矢が飛んできて、その背中を撃ち抜いて意味をなさない。



「何をやっておるのだ! ダグラス!!! 重装歩兵だ! 重装歩兵を前に出すのだ!!!」



 騎射攻撃にいいようにやられるダグラスに、ラグランは目を血走らせて声を上げる。


 そのラグランの指示により、後方に構えていた重装歩兵たちがのっそのっそと遅い歩みで前進を始める。



「ついに出てきやがったな…重装歩兵…」



 俺はその重装歩兵の姿を忌々しく眺めながら呟く。


 重装歩兵――それは全身分厚いプレートメールで身を包み込んだ兵たちだ。以前のループでは、蟻族の攻撃を跳ね返し、一切傷つけることができず、蟻族たちに自爆の選択肢を取らせた連中だ。


 その重装備ゆえに歩みの遅い重装歩兵は、ゆっくりとした前進で槍兵たちのカバーに入る。



 キンッ! キンッ!



「ちっ! 流石に私たちの短弓では、あの分厚い装甲は撃ち抜けないね…」



 マイティー女王が舌打ちを漏らす。蟻族の投擲槍を弾き返した装甲は、ウリクリの短弓では撃ち抜けなかったようだ。



 しかし、真打は遅れて登場した!



「ガハハハ!! そなたたちの分厚い装甲か、それとも我らダスタールの戦斧か! どちらが強いか比べようではないかっ!!!」



 遅れてやってきたダスタールの軍団は、重々しい戦斧を振りかざしながら、群がる猛獣のようになだれ込んで来たのである。



「ハッ! どこの野獣かと思えば、ダスタールの蛮族か! 貴様ら蛮族の斧に我ら人類の叡智の装甲が破れる訳がないだろ!!」


「では、その身で試すがよい!! 我らダスタールの漢の渾身の一撃をぉぉ!!!!!」



 先陣に立つオリヴェルが、野獣のような咆哮と共に戦斧を振り下ろす。



 グプシャァァ!!!!



 確かにダスタールの戦斧は重装歩兵の分厚い装甲を切り裂けなかった…


 だが、オリヴェルは戦斧の質量で…その岩のような筋肉で、分厚い装甲ごと、重装歩兵を、まるで粘土人形のように叩き潰したのである。



「なんだ、叩き潰せるではないか! 皆の者! 奴らを潰してやれ!!」


「「「「うぉぉぉぉぉ!!!!」」」」



 返り血を浴びたオリヴェルの号令で、ダスタールの者たちは野獣の咆哮を上げて、まるで戦斧を手にしたグリズリーの群れのように重装歩兵に襲い掛かる。



「ぬおぉぉぉぉお!!!!」

「うりゃぁぁぁぁ!!!!」



 ダスタールたちが戦斧を振り下ろす度に、重装歩兵たちは、金属と肉の入り混じった肉塊へと変わり、吹き出す返り血を浴びてダスタールたちが赤く染まっていく。


 その様子は、もはや戦場の一場面ではなく、地獄のような有様であった。


 その様子に心胆寒からしめられ、完全に戦意を失ったラグランは気が狂ったように裏返った声で叫ぶ。



「後退! 後退だ!! 後退して私をあの鬼どもから守るのだ!!!」


「しかし、将軍! 今下がれば前に出ていた重装歩兵を見殺しにすることになってしまいますっ!!」


「なっならば!お前が助けに行けばよいであろう!!」


「ぐっ!」



 ラグランの言葉にダグラスは押し黙る。人類連合軍きっての重装歩兵ですら、対処できない敵に、非力な自分が駆けつけてもどうしようもないことぐらい分かっていたからだ。



「ひけぇぇぇ!!! ひけぇぇぇ!!! あの赤鬼たちから距離をとるのだぁぁぁ!!!」



 人類連合軍内にラグランの裏返った声が響く。



「ふぅ…」



 その光景にため息を漏らす者がいた。



「…やはり、凡人では露払いもできないようですね…」



 それは更に後方に控えていた人物――アネレイトスが呟いたのであった。 

 




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