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第1004話 断罪される正義

挿絵(By みてみん)


 そして、ついに人類連合軍がこのアシヤ領に到着する日が来た。途中、時間稼ぎをする為に、再び国境の森付近で、山火事による障壁を使ったり、犠牲者たちには申し訳ないが、以前、アシヤ領になだれ込んできたアンデッドの遺体を使って、再びアンデッド集団の軍勢を作ったりもしたが、アネレイトスの力で山火事もアンデッドの軍勢も一瞬で消滅させられてしまった。



「流石は、真の聖女! アネレイトス様! 堕落したミリーズとは違う!」



 その事が逆に、人類連合軍の士気を高める結果になってしまったのだ。まぁ、俺としては、森の木々が焼かれる事に、心を痛めていたシュリのことを思うと、山火事作戦が失敗したことにほっとしている自分もあったし、今回は突然の襲撃ではなく、準備もできており、また王国軍という心強い味方もいる。まぁ、エイミーが用意していた援軍が間に合いそうにないのが残念である。


 残念ついでで言うと、捜索範囲を広げたが未だぼっさんを発見できていない事も残念だ。もう、捜索している余裕なんてないし、もしぼっさんが人類連合軍側の場所にいたのなら、保護するのも不可能だ…


 

(すまんな…ぼっさん…結果的に救い出してやることが出来なくて…)



 俺は心の中で詫びを入れる。



 そして、食堂のバルコニーから城下町の郊外に陣取る人類連合軍の様子を見る。前のループでは突然の軍隊の登場に混乱していたし、和解・弁明しようと必死だった。だが、今回では、予め人類連合軍がやってくることは知っていたし、奴らが和解や弁明に耳を傾けない事は分かっている。その上で、援軍に掛けてつけてくれた王国軍の軍勢と比べて人類連合軍の様相をみると、その数が尋常ではない事が良く分かる。


 王国軍は全一万の兵力の内、王都や各都市の治安維持に必要な人員三千人を差し引いた七千人の軍勢を派遣してくれている。


 だが、敵の軍勢はその王国軍七千人を遥かに越えており、ざっと三万人ほどの軍勢に見えた。



「いやはや、敵の軍勢でなければ壮観な眺めですな… しかし、あの数…イチロー様、前の時間軸では本当にあの軍勢に戦いを挑んだのですか?」


 

 隣で一緒に眺めるマグナブリルが聞いてくる。



「ん~ 実際の所、まともな戦闘にはならんかったな… 蟻族たちに血路を開いてもらって、敵のボス、アネレイトスを討ち取るという、一発逆転的なギャンブルしか出来なかったよ。それもアネレイトスが首から生き返るという離れ業をやってのけたので、後はすりつぶされて行くだけだったがな…」


 

 マグナブリルの言葉に気軽にそう答えるが、俺は当時のことを思い出すと今でも胸が締め付けられる。無残に散っていた蟻族、次々と倒れていく仲間たち… あんな思いは二度としたくない、そう強く思わせた。



「それで、次はどうなるのですか? どうなさるですか?」



 横に並んだマグナブリルがチラリと横目で聞いてくる。



「そうだな、前回のループでは、御大層に俺の悪行を並べ立てて、俺を糾弾してきたが、今回のループでは聖女のミリーズも死んでないし、聖剣も折られていなければ、俺の腕も斬られてない、その上、カイラウルでの殺人騒ぎも起こしてない… 奴ら、どうやって俺を糾弾するつもりなんだ?」



 前回のループでは俺の失態を並べ立てて、俺を人類の敵に仕立て上げたが、ホント、今回はどんな理屈をいうつもりなんだろ。ちょっと興味が湧いてくる。



「まぁ…屁理屈と鼻くそはどこにでもへばりつきますからな。いくらでも自分にとっては正しい理由を言ってくる事でしょう、我々がそれに付き合う道理はありませぬ」



 その言葉を聞いて、フッと鼻で笑いながら人類連合軍に視線を戻す。すると、人類連合軍の偉そうな男の一人が、拡声魔法でわめき始める。



「我々は、真なる聖女様を中心とする人類連合軍である!!」



 予想通り、しかも前回のループと似たような文言で声を上げ始める。



「我々は、偽の聖剣を持ち、聖剣の勇者を詐称する魔族の手先、アシヤ・イチローなる人物を粛清するためにやってきたのだ!!!」



 その言葉を聞いて俺は唖然とする。



「なんだよ、前回と全く同じ文言かよ、もうちょっと捻れなかったのかよ」



 城の者たちや、土嚢の陣地に立て籠もる国王軍たちも、驚き半分唖然半分と言った感じだ。なぜなら、予め、人類連合軍がどんな文句を言ってくるか皆に伝えてあったからだ。だから、皆が驚き唖然とするのは、人類連合軍が俺のことを偽物だと言ったことではなく、俺の言葉通りだったからである。


 そんな感じで、予想通りの文言に驚く者もいたが、ブラックホーク達のような冒険者や、王国軍のランベルト、エイミーなどの蟻族たちのように、じっと人類連合軍を見据える者もいる。 


 それは敵が驚異的な数であり、尚且つ、この世界では最新兵器である銃器を数百丁も用意している。また、数多くの魔法兵・重厚な鎧の重装歩兵がいる。決して侮る事などできない敵なのだ。


 俺はベランダの胸壁に足を掛けて身を乗り出し、拡声魔法を使って敵に言い返す。



「俺がアシヤ・イチローだ! 何が魔族の手先だよ! 証拠を持ってこい! 証拠を!!」



 そう言って望遠魔法で敵将の顔を見てみると、俺の言葉に青筋を立て始める。



「そこにいたのか! アシヤ・イチロー! 貴様の悪行は聞き及んでおるぞ!! 貴様、レグリアスとカルナスの平穏の為にディートフリード王子の身柄を引き渡せと言われたのを断ったそうだな! しかもそれだけでは飽き足らず、レグリアス王国の国母となる筈だったディートフリード王子の母親リリエル嬢も囲っておるそうだな! 両国の平穏をかき乱すとは、これを魔族の手先と言わずして何を魔族の手先というのだ!!」



 おっと、今回はシャーロット暗殺や、殺人事件の汚名ではなく、そういう方面で攻めてきたのか… 他の話なら軽くあしらってやろうと考えていたが、ディートとリリエル嬢の為にもきばって言い返さないとダメだな…



「何が王子だよ! 何が国母だよ!! ディートもリリエルも今まで存在を無視するか飼い殺しにしていただけじゃねえかっ!! それを突然、自分たちの都合が良いように利用しようとして持ち上げているだけだろ!! 二人は今、過ごせなかった親子の時間を取り戻してんだ! 邪魔してやるな!」


「では、レグリアスとカルナスがどうなっても良いというのかっ!!」



 敵将は青筋を立てて口角泡を飛ばしながらがなり立てる



「お前らが始めた物語だろ!! お前ら自身がケリをつけろと言ってんだよ! 今まで見向きもしなかった二人にケツ拭かせるな!」


「ぐぬぬ…」



 敵将は言い返せなくなって、ギリギリと歯噛みし始める。すると、男にはこれ以上まかせられないと、後ろにいた小柄な白髪の女が前に出てくる。


 幼さが残るが、神々しいまでに整った顔立ち。光のように白い長髪に、聖職者のような白い衣――間違いなく奴…アネレイトスだ。



「イチロー様…あの者が、イチロー様の仰っていたアネレイトスなのですか?」



 隣のマグナブリルが聞いてくる。



「あぁ…奴がアネレイトスだ… 澄ました顔をしているが、前のループで地獄を作り出した張本人だ…」



 俺は自然と拳を握り締める。するとアネレイトスは拡声魔法を使って話し出す。



「アシヤ・イチロー、貴方は二人の親子の為に、レグリアスとカルナスに住まう多くの者を見捨てるというのですね? それは悪そのものではないのですか?」



 アネレイトスは落ち着いた澄んだ声で、聖者のように説いてくるが、やっていることはただの上から目線だ。



「なんだ? 自分たちが正義で、俺たちが悪だと思っているのか?」



 俺も落ち着いた口調で言い返す。



「違うのですか?」


「あぁ、違う! 正義の反対は悪ではなく、もう一つの正義だ!」



 俺は自信をもって宣言する。しかし、アネレイトスは俺の言葉を幼児の戯言のようにコロコロと笑いだす。



「何を言い出すのかと思えば、正義の反対がもう一つの正義とは… それでは世界は正義だらけになって争いごとなど起きないでしょう…」


「逆だよ逆、お互いに譲れない正義があるから戦いが起きるんだよ!」


「人類にはそんな争いを起こさないために、多数決の論理があるのでしょ?」 


「なにが多数決だ! 都合の良い所だけ多数決の論理を持ち出しやがって! お前たちの多数を装った独善的な正義が反対者を『悪』と決めつけているだけだろうが!」


「しかし、人類は多数の者が生き残り栄えてきたのです! やはり、貴方は許されざる人類の敵…悪ですね」


「お前たちがやっていることは、自分たちの食った飯の代金を飯を食っていない弱者に押し付けようとしているだけじゃないか! それにディートもリリエルも端からその多数の中には入ってねえんだよ!」 



 アネレイトスの瞳から笑みが消える。 



「つまり…貴方は我々を『悪』だと…言いたいのですか?」


「あぁ、そうだ! 弱者に手を差し伸べるのではなく、多数の強者の重石を弱者に押し付け反論されると殴りつけるのが正義だと言えるのか?」



 そして、俺はすぅっと息を吸ってから宣言する。



「そんな独善的正義こそが『悪』そのものだ!」



 俺の宣言に群衆が息を呑み、辺りが沈黙に包まれる。そして、アネレイトスは、聖人ぶったお澄まし顔をすっと止める。



「私たちは、貴方たちに話し合う猶予を与えました…だが、これ以上の話し合いは無用の様ですね…」


「話し合い? 傲慢に自分たちの要求を押し付けに来ただけだろ!」



 俺としては、お互い分かり合えない理由の確認作業をしただけだがな…



「分かりました、アシヤ・イチロー… では、真の聖女であるアネレイトスの名において宣言します! 人類の世を乱す者に制裁を下すと!!」



 そして、天に手を仰ぐように掲げ、声高らかに宣言する。



「アシヤ・イチロー あなたを断罪し、この世界からの粛清を行います!!」



 それは俺たちに対する聖女の敵対宣言であった。



「おぉ、来いよ… お前たちの独善的な正義とやらを俺たちの正義でぶっ潰してやる!」



 俺はアネレイトスの言葉を受けて立ったのであった。


最近のブームは「〇〇さん系」だから、私も「〇〇さん系」を書けば人気がでるかな?

(m)ピコーン Σ('A`)


『いたずら上手のぼっさん』 これならいける!

ストーリー 中年小太りのぼっさんは幼気な少女たちを…

アカン…これは絶賛発禁中になるな…w 


ちなみにタイトル絵は、第一被害者のアネレイトスさんw

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ぼっさんメインくるか!?
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