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結末のそのあとに

最終話となります

これまで長きにわたり最後までお読みいただき、本当にありがとうございました

「と言う事で、どうする?」

「どうするって?」

「さっき言ったじゃん、僕達の放し飼いのペットが手を組んだって。全部潰すか?それともまだ残す?」

「……私はもう少し見ていたいよ…」

「分かった。消滅は無しね。」

 フェイとツヴァイは意見をまとめた。


「あっ、逃げちゃうよ。」

 ジェイが教えてくれたので、その方向へと2人は目線を戻す。


「おい、アハドはまだか!!」

 チャールズの切羽詰まった声が聞こえてくる。


「それが…組織からの返答がありません。これって、俺たちは見捨てられたのでしょうか?どうしましょう、国に帰れません…」

 AxisのPSIで王の間を作り出せる青年が酷く怯えている。

 組織から見放されたと感じているようだ。

「おい、お前の例の空間を出せ!あれがあれば、お前の思うままにその空間の中では安全なのだろう?時間を稼ぐんだ。」

「そうだった!?でも、俺よりも力が強い者には通じないって言っていたから無理かも…」

 そう、青年が話した時に、彼の肩に何かが乗っかった。

 そして、直ぐに聞こえてきた。


「正解!君よりも強い者にその空間は容易に破られる。やってみるかい?ただし、もう一度君がそれをやれば、君はその瞬間に灰になるだろう。アレは力をかなり消耗するからね。君はかなり面白い体をしているね。そう、キメラだよね?王シリーズが混じっているみたい。ああ無情、人間は時にえげつない事を平気でする生き物であったのだな。」

 肩の上にはそう話した人の腕が乗っかっていた。


 いつの間にか、距離を縮められていた。

 全く気づけなかった。

 恐怖で、声も出せず、ガタガタと体が震える。


 代わりに声を上げたのは、チャールズだ。

「ギャアァァー来るな!?来るなーー!!!」

 切れ味のよさそうな小型ナイフを胸元から取り出して、両手で構えてぶんぶん振り回している。


 一体、こいつはいくつの武器を所持しているのだろうか??

 咄嗟に出てくる物が小型ナイフなので、もう手持ちの武器は品切れなのかもしれないが…

 どの武器も戦闘用で高性能なものばかりなのに、使い方が全くなっていない。

 訓練をサボっていたのだろうか?

 と考えながら、フェイが彼の目の前に一瞬にして現れる。

 顔と顔が近づきすぐる距離だ。


 体の反射で敵が目の前に来たと認識したチャールズが、無意識に武器に力を籠めようと手に力を入れたのだが、その手の中には、手の中には何の感覚も無かった。

 代わりに、先程までチャールズが振り回していた小型ナイフが目の前の男の手の中にあった。

 クルクルとペン回しのように遊んでいる。


 それに気が付いたチャールズは自身の手の中を目で確認する。

 ナイフはやはり無くなっていた。


「はぁ?どうやって取った!!」

 聞くまでもない事を、チャールズは口にする。

 彼は時間操作のプロフェッショナルだ。


「もう、分かっているくせに~」

 と、フェイがふざけて答える。

「これ、君が振り回していても全く怖くないから。うん、悪役ボス役には向いていないよ。せいぜい中堅止まり、いいや小者(モブ)だな。無駄死にする奴。」

 さらに、ナイフの先をツンツンしたあと、舐める真似をして挑発する。

 A国のホラー映画に出てくる悪役の様にワザと煽っている。


 チャールズはその言葉に激昂した。


「お、お前―!!」

 ナイフを取り返そうとチャールズは駆け出し、フェイへと突進していく。

 もう、頭に血が上り、興奮しすぎて思考回路がおかしくなっているようだ。

 ナイフなんかを取り返しに行くことが、自殺行為だということに気が付いていないほど、彼の精神は追い込まれてしまったようだ。


 突っ込んでくるチャールズをひらりとフェイは華麗に除ける。

 突っ込んだ勢いのまま体を止めらず、チャールズは前のめりでゆっくりと傾いていく。

 ズザァァと地面に倒れる痛々しい音がした。


 その様子を小さくなり震えながら、もう一人のGHQ構成員フェイのクローンが見ていた。


「…お終いだ…」

 その声をフェイが拾うも、フェイは彼を見て戦力外だと判断した。

 そして、彼にアドバイスを送る。


「そこで震えている君、あと一回能力使うと、君も消えちゃうよ。」

 彼を見ることなく、フェイがそう伝えると、フェイのクローンは息を飲んだ。


「そんな嘘だ…薬を飲んだから、あと数回は使えると言われたのに…僕は捨て駒だったというのか…」

 悲しさのあまり、しゃがみ込み、泣き出した。


「それでいい、消えたくないのならば静かにそこに居なさい。」

 フェイは小さく呟く。


 フェイの先には地面へと顔をめり込んだチャールズがいる。


 その横に、いつの間にか、ツヴァイがいた。

 チャールズの額に手を置き、鷲掴みにする。


 グッと力が入り、チャールズが痛そうに喚き、ツヴァイの腕を握る。

「や、やめろ!!!」

 苦しそうに声を出すチャールズとは対照的に、無表情で、それをやっていたツヴァイが口を開く。


「はぁ!?お前の力…それだけ!?」

 その言葉に先程まで苦しさから逃れようと足掻いていたチャールズの身体がビクンと脈打つ。


「何を!?チャールズさんの能力は凄いです!?思考を読み取る能力ですから!組織内でも群を抜く能力!」

 PQの青年がツヴァイの言葉に答える。


「いいや、他人の思考を読み取る力はコレにはない。せいぜいトランプのカードを裏返し、当てるくらいの透視能力程度、机の上の消しゴムを数センチ移動させる程度の超能力しかない。ほう、父親が学者であった様だな。幼い頃から自身も実験台であったらしい。ふむふむ、有名大の精神学の出なのか、なるほど、随分と熱心だったのだな。」

 チャールズの頭の中を覗き暴露していく。


 チャールズはツヴァイかの手を自分の頭から離そうと抵抗するが、ビクともしなかった。

 すると、突然チャールズが大人しくなる。

 ツヴァイにより体を動かなくされたらしい。


「そんな…チャールズさんは人の脳内を読み取り、精神を操ることが出来るから幹部なのだと聞いたのに、違うの??」

 PQの青年が疑いの目を向けると、チャールズはその視線に気が付き、怯える。


「お、俺は、力がある!!あるんだ!そんな奴のいう事を真に受けるな!」

 チャールズは叫んだ。


 PQはチャールズの額から手を離さないツヴァイを睨む。


「ふっ、脳内を読み、精神を操る力ね~外界からほぼほぼ隔離されて育った施設の子供や研究に没頭する大人は、さぞかし純粋で扱いやすかっただろう。簡単に洗脳できる。いいカモだと言っている。」

 苦笑しながらツヴァイがそう話すと、チャールズがさらに吠える。


「嘘をつくな!!俺は能力がある!!そんなことなど言っていない!!」

 チャールズはPQから贈られる疑いの視線に、ごくりと喉を鳴らした。


「ハッ、ハッ!面白いな!?なぜ嘘をつく!そうだ、今ここで脳内当てクイズをしよう。お前、今から脳内で好きな色を考えて、コイツに念波を送れ。よくテレビとかでやるように。さあ読み取れるのか実験だ。」

 困惑しながら、PQはいう事を聞いた。

 彼は、チャールズに疑いを持ってしまったし、彼を元々良く思っていなかったようだ。


 大人しく従うPQを見ながら、チャールズが不満や悪態をつき、どうにかこの茶番をやらないようにしようと努めたが、その期待は崩れ、答えなければいけない雰囲気となる。


 しぶしぶ、チャールズは答えた。

 PQの衣装は目立たぬように濃い深緑の色彩の上下の服を着ている。短い黒ブーツを履き、迷彩であったならば、軍隊にいそうな服装である。

 動きやすいよう、用意された制服なのだろう。

 その袖口のラインや襟元のスカーフにはピンク色が足されていて色味を添えている。

 その部分が彼はおしゃれに気を使っていると思わされる。


 そこに目を付けたチャールズはこのPQはピンクが好きなのだと悟った。

 だが、そうここにいるPQは時間を操ることが出来る。

 彼はフル回転で記憶を探る。

 そして、見つけた。

 目の前に居るPQは、通常の組織内などで青いスカーフを着けていたのを思い出した。


 彼は勝機を得た。

 そう、チャールズはツヴァイが言った通りの能力しかもち得ない。


「彼は、ブルーが好きだ。」

 そう答える。


「ブブーー違うよ、彼は赤が好きだ。でも、施設内で、顔の似た奴が多いから、メンバーは色でも判別されている。彼は、ブルー担当だ。でも、本当は赤が好き、ブルーはそうでもない。このピンクは俺の好きな色。ハハ、見事にはずれだ。君は思考を読み取れない。」

 可笑しそうに、ツヴァイが答えると、PQが悔しそうにチャールズを見る。


「あなたの能力はすべて嘘だったのですね…」

 悲しそうに、PQはチャールズに言葉をぶつけた。


 チャールズは黙ってしまった。

 自身の能力への劣等感、惨めな想いに、言葉が詰まる。

 いつもならば、スラスラと出る話術も、ここでは出せなかった。

 何もかもに疲れたのだ。

 心が折れてしまった。


「さて、これからどうする?このままだと、2人は力を使い次第で消えるぞ?まあ、そのまま組織に居れば消されるだけだろうが。だが、助かる方法はなくない。手助けてやらんでもないぞ?」


 PQの子も、フェイのクローンも、すんなりと提案に応じる。

 彼らは、一先ずフェイが預かることとなり、王の間に収容された。


「さて、君は、このままここで解散だ。」

 チャールズに向けてツヴァイが言う。


「は!?なぜだ?」

 なぜ殺さないのかと、チャールズは拍子抜けする。


「何故って?あそこと、あそこ、君たちの言動はあの者達によって今頃組織に伝わっているだろう。つまりは、君の能力が上層部にバレたという事だ。うん、察しがいいね。」

 チャールズはツヴァイの言葉に、顔を青くする。

 今後の行方を考えたのだろう。


「そう、僕らが手を下すまでもなく、面白い事になるってことだよね?」

 フェイがツヴァイに同意を求めると、ツヴァイは口角を片方上げて、頷いた。


「楽しませてくれよ。俺らはボロ雑巾が好きなんだ。」

 と、チャールズへ言葉を贈った。


 言い終えると、すぐさま踵を返す。

 J国の皆に向き合い

「さあ、帰ろう!!」

 と、ツヴァイが発した。


 皆が一斉に声を上げる。

「終わった。」

「よかった。」

 など様々だ。


 チャールズを,目で追う者はいない。

 彼は姿を消したが、彼の行く末を知れる者は、FQのみだろう。


 ***


 ここはJ国。


 あのテロ事件の全てを終え、FQらは即日帰宅した。

 昨日の夕方のことだ。

 すでに猫屋でくつろいでいた。

 いつもの場所で、猫の王ケーニヒもまどろんでいた。

 ケーニヒは皆が帰宅したので満足げだ。


 店主は大怪我をした翌日にも関わらず店に立ち、昼食のナポリタンを瑞樹に出していた。

 その横には、店主に似ているがだいぶ幼い容姿の子供が座っている。

 帰宅後、ツヴァイは店主の王の間に眠るFQに手をかざし、リセットしたのち、前の蓮よりも幼い年齢でその形に作り変わった。

 今は玲央(レオ)と名乗っている。


「なんでそんなに幼くしたの?」

 瑞樹がレオに尋ねる。


「ジェイと同じ学校に通いたいし、俺もジェイ家族の仲間入りがしたかったから。ほら、これなら俺もあいつの弟に見える。二卵性の双子ってことにしたんだ。」

 そう答えた。

 家族エピソードに弱い瑞樹には説得せざぬ理由で、効果は敵面のワードであった。


 実は瑞樹たちと同学年くらいにまた戻すことも出来たのだが、彼らの人生に関わりすぎるのはよくないと、ツヴァイは判断した。

 このまま彼らに関われば、彼らの恋愛や人生の選択に深く関わることとなるだろう…それだけは、避けねばと思ったのだった。

 自分は人とは違うから…彼らと共に生き、分かち合う事は極力避けるべきなのだ。

 寂しい事だが仕方がないと、戒める。

 これまでもそうして来たのだから。



 穏やかな雰囲気で過ごす午後の空気の中、スマホの着信音がけたたましく鳴り響いた。


 ツヴァイの携帯だ。

「もしもし?」

 ツヴァイが出ると、白崎からであった。

「あ、繋がった。ツヴァじゃなくて、玲央さん?急いで、急いで、すぐに確認をお願いします。今なら昼のワイドショーでもバンバン放送されていますから、テレビをつければ分かるはずなので!兎に角見てください!!」


 そう言われて、レオが喫茶店の隅に追いやられているテレビを点けに行く。


 シャランシャラン。

 店のドアベルが鳴り、誰かが入店した。

 エリザベスを抱いた犬飼であった。

 その後ろに長谷川兄弟もいる。

 弟がジェイと仲良くなったので、同じ学校に通うらしく、春からこちらに転校予定だそうだ。


 長谷川兄の腕の中には、白いチワワがいた。

 この白いチワワはフェイのクローンだった彼だ。

 巨大な力は放棄させたが、未来予知の微々たる力が僅かに残ったらしく、エリザベスが面倒を見ることになった。

 エリザベスは犬飼を表に立たせて占い稼業もしているので、それを手伝わせるつもりらしい。

 占いと言うか、人生アドバイザー的なモノだ。

 客の情報はあらゆるところから筒抜け状態なので、よく当たると大変評判なんだとか。


「いらっしゃいませ。」

 いつも通りの奇妙な笑顔で、店主が店を訪れた客たちに挨拶する。


「いらっしゃいじゃないわよ。世間が大騒ぎだって言うのに呑気なんだから。」

 エリザベスが皮肉たっぷりで話す。


 テレビの電源が入り、映像と音が店内に響いた。


「ご覧ください。こちらが今、全世界を騒がせている動画です。この物体はいったい何なのか?宮中に浮かぶ人らしき影は宇宙人なのかと、世界中が情報を求めており、分析を急いでいるところです。」

 テレビの中からそう聞こえてきたのだ。


 そう、流れた映像は、あの時のFQであった。

 黒い球体を持って空に浮かぶ何か!?である。


「人のようにも見えますが、身体が生えていませんか?」

「奇妙な生き物としかいいようがありません。宇宙人なのでしょうか?」

「フェイク動画でしょう。このような生き物はこれまでに存在しません。」

「いいや、きっと次期大統領を見に来た宇宙人だよ。そうに違いない。」

 コメンテーターが好き放題話す。


 あの時のFQが店主を片手で抱え込んでいる画像が遠過ぎるので鮮明に確認が出来ず、1つの影となり珍妙な生き物として憶測を呼んでいた。


「ちょっと、押さないで。」

 聞こえてきたのは、猫屋のカウンター奥にある小さな窓からだ。


 窓の引き戸を開けて、半身を出すとフェイが小窓から這い出てくる。

 その後ろから、あの時いたキメラのPQの彼アハドが顔を出し、同じく通り抜けようとしている。


「君達も来たのか…」

 店主が真顔で話し掛けた。


「仕方がないでしょう?早く対処しろって、うるさいんだもん。」

 フェイがPQの男の子を指さして、そう答えた。


「だって彼奴等貴方のことが面倒だからって、俺に言ってくるから鬱陶しいんだもん。さあ、早く。」

 この子は今、フェイの元で力を放棄し、研究の助手をしている。

 キメラについても学んでいるようだ。


「何を対処しろって?」

「ほら、これだよ。」

 そう言って、差し出したタブレットから流れて来た短い動画には、A国近海が大きく盛り上がり、大きく破裂するような映像で会った。


「あ、これって、あの黒い球体が落ちた瞬間じゃないか?」

 ツヴァイが動画を見て言うと、

「ああそうだね、あの時の映像(もの)だ。誰かが勝手に撮ってネットにアップしたみたい。黒い球体以外は写っていないから、これはA国が秘密裏に軍事的実験を行った結果なのだと、核兵器なのではとC国(うち)の連中が大騒ぎでさ、詳しく調べてくれって持って来た。」

 フェイが心底嫌そうに顔を歪める。


「かなりマズい状況のようだな…」

 ツヴァイがそう言うと、電話の向こうの主が大きく声を出す。


「もしもし!?聞こえていますか?白崎です。映像見てくれましたか?今の状況分かりましたか?A国の複数の映像の拡散と、あと、E国でも世界大会での赤ちゃんパレードの映像はフェイク無し、E国は本場の魔法を使ったとの解析動画も面白がられて、あっという間に世界中に広まってしまっていて、もう破茶滅茶。象部隊(我々)では、手に負えない状況なんですよ。どうか、どうか助けていただきたいのです。」

 白崎が鼻を啜りながら懇願する。

 これはすでに徹夜しているなと、声の焦りから伝わってきた。

「こんな時に…熊さんには連絡つかないし…」

 泣き出しそうな電話越しの声を横目に、猫屋の電話がなる。


「こちら、喫茶猫屋でございます。」

 店主が電話にでる。


「あ、よかった。繋がった。あーもしもし、警視庁特務課の甘草です。すみません、急遽そちらの判断を仰ぎたく、連絡しました。私の所に、内閣情報部の方がいらしていまして、ええ、今回の件で政府の雉部隊が動いているようです。詳しい話を聞きに大熊さんの所に来たそうなんですが、只今、警視監は総理秘書の方の対応で忙しいらしく。会えなかったと。」

「ああ、あのバカ息子のことか。」

「知っておられましたか!?ええ、バカ息子が朝から押しかけてきて、説明しろと…何も知らされていない癖に態度だけ偉そうに…来栖さんたちは動けない警視監に代わって情報収集している様ですけど、指示は出せないと言うので。」

「熊も大変だね。」

「本当ですよ!」

「わかった、あとはこっちで何とかするよ。」

「あ、えっ?」

「大丈夫、こっちですべて引き受けるから。そう雉に伝えて。」

「大丈夫って?あ、はい、分かりました。」

 店主が受話器を置くと、レオとフェイが立ち上がる。


「もしもし、白崎?もう何も問題ないから大丈夫だ。切るぞ。」

 電話越しの白崎が、へ?と素っ頓狂な声を漏らしたと同時に、電話は切られた。


「さて、始めますか?」

 店主が言う。

「ああ、何年振りだろうか?解放は。」

 玲央が指を折る。


「僕がとちって以来だから10年くらいかな?」

 フェイがそう言うと、

 三人は向かい合った状態になる。


「「「Quelle(クヴェレ)」」」


 三人が一斉にそう唱えると、次の瞬間、三人はその場から消えていた。


 瑞樹やPQの子にチワワは驚きで目を見開いている。

 その他の者達は、既に慣れっ子なので、無反応だ。


「やっと動いたか…」

 ケーニヒがニャンと鳴く。


 その頃、猫屋の上空に瞬間移動をしていた3人は、浮いた状態で手を繋ぎ、輪を作っていた。


「じゃあ、全人類の記憶の改ざんといきましょうか。さっきの3つの動画を重点に、E国の動画に、A国のFQ関連はフェイクってことで。」

「それと、声以上広まらないように映像の消去もやらせよう。指示つけて。」

「よし、じゃあ無かったこと作戦始めよう!」

 三人は目を瞑る。


 すると、3人の身体が光りはじめる。

 キラキラとした金粉のようなものが溢れ始め、金色の絨毯のように広がっていく。


 ここはほぼほぼ雲の上。

 下界から3人を肉眼で見ることはできない。


 じわじわと、急速で広がる金色の帯は、あっという間に地球を半周し、覆う。


 地球を全て覆った時に、彼らは再び唱える。


「「「Quelle」」」


 その瞬間、光がパンッと弾けた。

 下界へと、降り注ぐ。


 10秒ほどだろうか、全人類の時が歪む。

 頭はボーっとし、口を開けて呆ける。


 数秒後には、元の生活へと戻っていた。


 その瞬間から、皆、無意識に動き出す。

 映像の消去。

 先程まで、息巻いていたコメンテーターはこぞってフェイクだと主張し、くだらないことだとひと蹴りし始める。

 視聴者も、一斉に興味を失くす。


 この騒動から一気に波が引いて行く。

 呆気ない、幕引きであった。


 3人が猫屋に戻ると、先程と変わらない風景がそこにある。


「お疲れさま。」

 エリザベスが3人を労う。


「さ、これで、アイツも目を覚まさないだろう。」

 ツヴァイが言うと、

「ああ、ツヴァイ、エルフ、守ってくれてありがとう。君たちに心から感謝する。」

 猫屋の店主は穏やかに微笑んだ。

 感情が欠けた彼の心からの信頼の証を示す。



「あ~疲れた!何か甘い物ちょうだい!飛び切り甘いやつ!」

 フェイがテーブルに腰を下ろす。

「俺も、なんか食いてえ。一気に腹減った。肉的な何かをくれ。」

 レオもカウンターに座り直してそう言う。


 ふたりとも、なんだかソワソワして、嬉しそうであった。


「ああ、飛び切り美味しいのを出すよ。何せここは、喫茶猫屋。知る人ぞ知る評判の店だからね。」

 店主は急いで店の奥に行き、冷蔵庫を開けて調理に取り掛かる。


 その様子を、ケーニヒが穏やかな目で見守っていた。


 おしまい。


まだまだ未回収の部分も多いのですが、いったんお終いとさせていただきます。

長い期間おつきあいいただき、ありがとうございました!


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