特大の黒い玉
投稿間隔があいてしまいました…すみません
いつも続きを読んでくださりまして、ありがとうございます☆彡
「間に合ったぁああ!」
と、声がした。
皆、その声のする方、背後へと顔を向ける。
そこは屋上の出入り口で、扉に手を掛けた状態で、フェイとツヴァイが息を切らしていた。
皆、彼らを確認するとホッとした表情へ変わる。
「やっと来たな!?」
大熊が大きな声で話し掛ける。
二人は大熊の方へ近づき、その言葉に答える。
「ああ、待たせたな。」
「お待たせ~」
皆が涙目になりながら、何度も待っていたよと大きく頷く。
彼らならばこの状況を何とかしてくれるだろうと、安心できたようだ。
少し前にE国から飛行し、党大会の集会が開かれている会場付近へと戻ってきた2人は、ツヴァイが出発してからの話を匠に聞き、この建物までツヴァイのハイスピードで移動した。
下まで来たので、屋上までひとっ跳びかと思いきや、屋上は謎の空間に覆われていた。
FQの作った空間であるならば、SQの自分達では破ることが出来ない。
せっかく上まで辿り着いてももう一度やり直しになってしまう。
なので、建物の中の階段を使った方が早いと判断した。
建物の下から階段の中央部分、狭い天井までのぶち抜き空間を使い、一気にハイジャンプで昇って来たのである。
「それで、今の状況は…あ、あ…おい、エルフ、間に合ってないぞ!!」
ツヴァイは、頭上を見上げ、そう零す。
「あ、あれ!?本当だ。もう出来上がっているね!?まずいな~」
自分の見て来た未来よりも予定が早まっていることにフェイは焦りを感じている。
「兎に角、アレを止めないと。」
やる事は決まっているのだからと、頭上の計画を確認する。
「ツヴァイ、さっき、僕が言った事を覚えている?」
「ああ、大丈夫だ。動いたら実行すればいいんだろう?」
「うん、頼んだよ。それだけはお願いね。」
ふたりの会話は周りの者達には理解できないが、強者の余裕を見せている2人は大変頼もしく感じる。
そんな2人も、内心、緊張していた。
FQが、自分達の話を受け入れてくれるとは思えないからだ。
「おーい、おーい、ヌル~僕です、エルフですよ。見えていますか?聞こえていますか?」
いつもの少し気の抜けた声で、フェイがFQへと声を掛けた。
チラッとFQがフェイを見る。
だが、直ぐに視線を元に戻す。
「聞いていますか?お願いですから、聞いてください。あのですね~ここら一帯を消し炭にするのを、止めていただきたいのです。ここに居る者達は、ゼクスの友人たちです。命を奪ってしまっては、ゼクスが、それはそれは悲しみますよ。そんなことをしたヌルを、恨むかもしれませんよ!?それでよいのですか!?ゼクスは悲しみと恨みの感情を取得していますからね!!知っていますか?」
精一杯大きな声を出して、説得する。
そうフェイが言い終えると、FQは首を傾げて悩み始める。
この球体を落とすのは、辞めておいた方がいいのかもしれないと…
何度も、地上と手の中に居る剣へと目線を移動させ、悩む。
「ゼクスの…友…ここに落とすと嫌われる…」
FQは相当悩んでいる。
耳を敏感にして、この呟きをキャッチしたフェイが、さらに畳みかける。
「ええ、ここに落とすとゼクスに嫌われちゃいますよ~それに、あなた勝手な行動して、一度怒られているでしょう??ね、だから、(球を落とすのを)止めましょう。」
あれは数十年前、剣の正体を突き止めようと手荒な集団が剣を襲撃し、剣が不覚にも小さな切り傷を作った際に、ヌルがJ国ごとぶっ飛ばそうとあの黒い玉を落とした時の事だ。
あの時は、どうにかツヴァイがギリギリで海へと逃がした。
だが、近海に落ちた所為で、津波が起こり、近隣の港町は津波の被害で壊滅的な状態におちいり大変な被害が出たのであった。
大震災と改ざんし、人々には悲惨な記憶となっている。
その際、FQは剣に大説教を食らった。
それを思い出したのか、彼の視線が目の前の黒い球体を一点見つめて止まった。
次の瞬間、ポイッと球体を投げ捨てた。
ここら辺ではなく、別の場所ならばいいと判断したらしい。
満足した答えを導きだせたという顔つきで放り投げた。
軽く投げ捨てたのに、玉がゆっくりと距離を伸ばして飛んでいく。
その様子を見ていた者達が慌てだす。
「あ、おい、そっちには…」
と、玉の向かう方を指さし、皆は絶望した。
そう、彼がポイッと球体を投げ捨てた先には、先程まで次期大統領候補が演説していた会場があったのだ。
このままだと、まだ大勢が集まって盛り上がっている会場へ落ち、一帯が吹き飛ぶだろう。
これは、まずい…次期大統領候補も居る。
清子さんと演説時はすげ変わっていたが、もちろん、本物の大統領候補もバックヤードで待機はしていたのだ。
急な対応の為の対処として、イヤホンを通して、指示をだしていた。
もちろん、Urashimaの仲間もあそこに大勢居る。
という事で、このままでは、歴史が変わってしまうほどの大事態が起こる。
「今だ!!!」
フェイが叫ぶ。
「分かっているって!!」
ツヴァイが答え、同時に飛び出していた。
ツヴァイは全力で飛んだ。
「角度、こんなもんか。速度よし、風の膜よし、蹴るぞ――!!」
次の瞬間には、黒の球体を目の前にし、大きくぶつかる音が響いた。
“ばう~ん”という、どことなくマヌケな音。
ソフトなボールが軽く体にぶつかる時にでる平和な音だ。
黒の球体はツヴァイに強くぶつかったにも関わらず、爆発することなく、はるか遠くへと吹っ飛ばされた。
フェイが考案した足に付けた謎のスプレーと、ツヴァイの能力、身体強化や俊敏を利用、風圧やその他もろもろを計算し、この場で爆発することなく遠くへ飛ばす方法を編み出し実行した。
この方向だと、A国の西側の遠海へと落ちるだろう。
通しかかった船や飛行機など無いとよいのだが…
そうツヴァイが考え、飛んでいった方向を見ていると、
「大丈夫、落下地点の生物は避難済み。」
ツヴァイの考えを察したフェイがそういうので、ツヴァイは安心する。
ツヴァイは何だかんだで、人間に優しい。
SQなのに珍しいのだ。
「おい、アレを知っていたなら何であの玉を作らせた。そこをまず止めろよ。そうすれば皆がこんな危険な目に合わずに済んだだろうが。」
と、もっともなことを口にし、喧嘩腰となる。
フェイがツヴァイの口を覆い、シッと口に人差し指を自身の口に当てる。
「彼が我々の話をすんなり聞いてくれるのに、このタイミングがベストだったからだよ。」
フェイがそう言うと、頭上に向かって、声を張り上げる。
「ヌル!!ゼクスを連れて降りてきて、ちゃんと話そう。従わないと言うなら、今すぐ僕は全ての時を動かすよ。きっと、ゼクスは一瞬で死んでしまう。そうはしたくないだろう!?治療を手伝うから、降りてきて~」
そう、今この状況、ゼクスの危機を囮にフェイはヌルを劣勢にする状況を作りださなければならなかったのだ。
ヌルを完全に従わせる為には、そうするしかなかったのだ。
絶対的優勢な存在のヌルは、誰の指示も受けたがらない。
いや、ゼクスの言葉だけは聞くが、彼は今、虫の息だ。
彼の弱点であるゼクスを利用するしかなかったのだ。
FQは静かに降り立つと、フェイの指示に従った。
「僕が彼の時をゆっくり、本当にゆっくりと動かすから、ヌルは瞬時に彼を治していって。弾が貫通している場所がかなり悪い、下手したら即死だった。時が止まっていてよかったよ。本当に……じゃあ、始めよう。」
この難しい注文をヌルへと伝えると、直ぐに取り掛かった。
ゆっくり、慎重に…
彼の時を動かしていく。
その間に、ヌルは傷跡を手当てした。
並大抵の集中力、技術が必要な案件だった。
フェイはゆっくりと表現していたが、瞬きなどしていたらあっという間の出来事である。
全てが終えた時には、ほんの一瞬であったにも関わらず、彼は大量の汗を掻いていたほど難しい治療であったらしい。
「お疲れ様でした。少しでも違えば、彼は消滅していたでしょう。ゼクスを助けてくれて、ありがとうございました。」
フェイがヌルにそういうやいなや、
「あなたがここに居ると、目覚めた彼が怒りますよ。さあ、目覚める前に、元の場所へお帰り下さい。お願いします。」
見守っていたツヴァイが、治療を終えたタイミングでFQとフェイの傍までやって来ると、難しそうな顔をして、そうFQへとお願いした。
「でも…ゼクスともっと話したい…」
ヌルがもじもじとそう言うが、目の前に居るツヴァイの表情は変わらない。
むしろ、眉間の立て皺が一本増えた。
「あとで王の間でいくらでも話せるでしょう?あなた達は特別なのだからそこで話してくださいよ。さあ、はい、早く早く、ゼクスが目を覚ます前にお帰り下さい。時間は有限ですから。」
ツヴァイが強く言うと、
「……分かったよ。」
と、渋渋と言った様子で肩を落とし、返事をした。
「目を開けているゼクスと話したかった。今日は煩いのが居るから帰る。ゼクス、また夢で。」
そう剣に語り掛け、ツヴァイに剣を任せると、ヌルは光の粒子となり消えていく。
皆がその様子を、固唾をのんで見守っている。
彼が完全に姿を消すと、一斉に皆が大きく息を吸い込んだ。
皆、息をするのを忘れていたようだ。
ガタッ
背後で音がする
「あぁ、俺たちには後片付けがあるようだな。」
「うん、お互いの玩具が手を組むなんてね、反省会をしないと。」
フェイとツヴァイが話す声は、その言葉を向けられた者たちには届いていない。
だが、恐怖はきちんと届いているようだ。
短いですが進めております
ようやくFQこと災害君が帰ってくれました
だが、まだまだ、色々と後片付けが残っています




