暗暗裏の約束
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白崎は彼らが既にそこへ居ることに身震いした。
やはり彼らは人間ではないと再確認する。
大熊は彼らが既に室内に居ることを確認すると、すぐさまソファーに近づき、彼らの足元へかしづく。
「天守様方々、お揃いでの御召喚、誠にありがとうございます。」
深々と頭を下げた。
蓮「クマ、久々だね。元気そうで何よりだ。」
剣「私は先週ぶりなのだが、労働させすぎでないかい?店主使いが荒いよね。」
フェイ「ねぇ、何があったの?早く、さあ早く話してよ。」
ジェイ「…モグモグ(肉まんを口いっぱいに頬張っている)。」
と、返答は様々だ。
「実はですね、例の馬の襲撃事件が国内でどえらい騒ぎとなっておりまして、私たちだけでは手に負えない状況となってしまったのです。どうか、手を貸していただけないでしょうか…」
大熊は慎重に言葉を選び、話していく。
「え?しらんがな~君達で解決してよ~」
蓮が冷たく放つ。
これはいつもの彼の最初の対応だ。
面倒事を容易く引き受けると、後々、何度も依頼を押し付けられ、悲惨な目に遭うと学習し、とりあえず最初は拒否をするという基本を身につけたらしい。
だが、彼は優しいので、何だかんだと話を聞いては、協力をしてくれいるという。
しかしながら、人間の起こした私利私欲案件の面倒な後始末だと察すると、即座に冷たく突き放される。
大熊は、どうにかして、唯一良心の彼に、協力を仰ぎたいと粘る。
こう言った面倒な案件を二つ返事で拒否しないでくれるのは、天主の中で彼だけなのである。
他の二人は、大きな対価や粘り強い交渉が必要なのである。
「お話しだけでも、少しだけでも、どうかお願いします…」
大きな体の大熊が従順で愛らしさを放つ熊のように、目を潤ませて頼んでくるので、蓮は話を聞くと言うのであった。
横に居る店主の剣はジェイが肉まんを食べ終わり、遊んでくれとせがむので、あっち向いてホイをし始めた。
フェイも興味なさそうに、バックからタブレットを取り出し、弄り始めた。
剣の隙をついて、ジェイの写真を撮るのだろう。
二人が協力する様子は見られない。
その状況はカオスだが気に留めずに、大熊は蓮へと事情を説明する。
少し前からエンゲルを標的とした事件が多発しており、その動画がとあるYooTubre経由で配信されていた。
世間ではフェイクと認識されていた動画であったので、我々はその者は突出して有害ではないと様子見と判断し、警戒をしていたのだが、そのYooTuberが何者かの手によって殺害されてしまった。
その際、自分は殺されたと匂わせる死ぬ直前の動画を、死後にアップしたため、それらの動画に注目度が高まり、その動画以外のエンゲル襲撃動画も実は本物で関係があるのではないかと注目を集めてしまった。
今では国内のネットユーザーで知らぬ者はいないほどに拡散されており、このまま放置すれば、全世界へと拡散せれる恐れがあると言うのだ。
動画内には、フェイのクローンであるGHQ所属構成員が映し出されており、彼らを犯人として、ネット内でこの人物を特定する捜索が始まっているのだと話す。
それを話すと、興味の無かった彼らも、大熊へと視線を映した。
「それって、その辺を歩いていたら、僕も犯人だって通報されちゃうってこと?それは嫌だなぁ~」
フェイが大熊の話の途中で割り込み、質問する。
「まあ、無くはないかと思われます。何せ、彼らはあなた様のクローン、瓜二つでありますからね。写真を撮られたり、通報されたりする可能性は大いにあるかと思われますよ。」
と、大熊もフェイが興味を示し加わってもらえるように答える。
「全世界に…フェイのクローンが全世界へと施される事、エンゲルの存在の認識の広まり、エンゲルの殺戮…秩序の乱れに触れる恐れがあるな。それはまずいな。」
剣が険しい顔つきで、ぼそりと零す。
「剣、これはそこまでの事ではないと俺は思うのだが。」
蓮が剣へとそう話すので、剣も考えを変える。
「もうすでに、事件が起こってから数日が経過しているし、この時点でファーストが動く気配はなかった。裁きを遂行していない。これは我々が力を使うほどでは無いという案件なのだろう。フェイ、お前もだ。Qの彼らとは年齢が違い過ぎるのだから、少し変装をすれば 問題はないはずさ。」
蓮がそういうと、剣もそうだねと胸をなでおろして頷き、フェイもなるほどと、納得する。
「ちょちょ、ちょっと、判断が早過ぎですよ。もう少し俺の話を聞いてからにしてください。ネット民を侮ってはいけません。私のようなものも、こう言ったことに加わって協力をしている場合もあるんです。犯罪を暴き出すという正義感は、なかなかのスパイスなのですよ。ですから、早急にこの案件を世間から消せなければならないのです。」
白崎が熱弁する。
「でも、白崎は加わらないし、こっちでは、人の噂も49日って言うんでしょ?今で回っている全ての動画を消去しちゃえば、そのうち消えるよ。」
先程の蓮の言葉でプラス思考と切り替えられたフェイが簡単な話でしょうとそう言うと、白崎はグッと押し黙る。
それが簡単ではないと思っているかだ。
ただ消すだけでは逆にユーザーを煽ることにもなりかねない更に広がるおそれのなる危険な案件だ。
だから、どうにかして一瞬で消せるマジックのような彼らの手法を借りたい白崎は脳内のデータを振り絞る。
「では、もし、この案件が世界へと渡り、のちのちハリウッド映画の題材になったりしたらどうでしょうか?実際にあった話です。もと動画はどれだと世界で大騒ぎで、誰も止められないほど拡散されてしまいますよ!ですから、今すぐに消し去っておいた方が、絶対にいいです!!」
どうだ!?と、彼らを見た白崎は、彼らの反応が薄いことに気が付き、絶望する。
「う~ん、どう考えても、今は私達の手を借りるほどではないよね。これはurasumaの仕事だよ、頑張りなさいな。」
剣が抑揚のない声でピシャリと言い放った。
“悔しいな、俺がハリウッドに売り込んでやりたくなるー”
と白崎の脳内に考えが過ると、
「それやったら、君が消されるからね。」
と、蓮が白崎に言葉にしても居ないのに返答してきたので、白崎は震えあがった。
「では、我々は動かない。君達で頑張りなさい。」
と、言い残し、四人はサッサと、東北へと帰っていった。
「最近、便利屋のごとく呼び出しし過ぎる。軽く扱い過ぎだ。」
と、剣が苦言を残し、最近の頻繁な呼び出しを大熊にたんまりと説教してから帰宅したのであった。
***
彼らが手伝いを拒否したのでその後、白崎は全力を注ぎ、ネットから話題を逸らすために、別の大きなスキャンダルを上げ話題を移らせ沈下した。
国家機密レベルとは言わないが、まあまあの大きな政界スキャンダルとなったので、世間は大騒ぎとなった。
もちろん世論もそちらへと誘導し、ネット捜索隊もそちらへと向かわせた。
それだけではまだ水面下で消えない。
細かく監視し、彼の動画を削除し、話題に上がっていたら鎮静させて回っていたが、少人数での勤務実態で、思うようにはなかなかいかなかった。
とうとう、白崎が寝不足と過労で倒れたので、天主の一声が掛かり、とある情報部隊がC国からやって来た。
I国出身でIT教育を受けたエンゲルだ。
元ゾウのエンゲルたちが多いらしく、お目付け役にローランドもきていた。
「言葉が通じなくて不便そうだったら少し弄れと、天主殿からのアドバイスでね。」
と、しぶしぶきたようだ。
全身白のスーツ、インナーは紫の柄シャツで金長髪をなびかせた姿は、かなり目立つ。
ゾウのエンゲルたちがグレイのスーツに黒のインナー縛りで、なかなか地味な色合いの服を着ているので、さらに浮いていた。
白崎の班員は皆、共通語が堪能であったので、言葉のやり取りには不便なく、ローランドの腕の見せ所は不発となった。
それからはあっという間であった。
あの出来事から3週間しないで、全く話題にされる事も無くなり、我々は平穏な日々へと戻ったのである。
***
ここはA国にある団体施設の一室。
GHQ所属の構成員ジェームス・ジョンソンはタブレットを睨んでいる。
見るからに機嫌が悪く、眉間に皺を深く寄せていた。
「どういう事だよ!?なぜ、奴らは姿を現さない。話がちがうじゃないか!?」
そう悔しそうな声を上げたのは、フェイのクローンたちだ。
「ねぇ、もう俺らの力が底をつくのを分かっているだろう?最後の賭けだって、言ったじゃん。だから俺達も協力したのに、何て様だよ!」
「ハッ、俺達はこのまま死ぬだけ。死ぬしかないんだぞ!?畜生!!」
苦痛に満ちた表情で、ジェームスに怒りをぶつける。
「ああ、私も同じ気持ちだよ。なぜ、あの方は我々の前に現れてくれないのか…」
ジェームスは悲しそうに彼らに語り、ほんの少しの間、見つめたのちにタブレットへと目線を戻した。
強張った表情へと戻っている。
彼らは追いつめられていた。
ジェイの事件以来、フェイの逆鱗に触れたGHQは、フェイによりじわじわと壊滅へと追いやられていた。
この組織内で量産され兵器として扱われていたクローン体。
かなりの検体数であったはずのフェイのクローンはこの数か月で、一気に消された。
GHQに保管されていたフェイのクローンを作るための細胞も、いつの間にか、すり替えられていて、彼の能力が発現しないように作り替えられていた。
つまり、もうクローンが創れないのだ。
今、残っている能力を扱えるクローンは目の前に居る二体のみ、追い込まれた組織は彼らの細胞からクローンを作り、能力の継承を試みたが、それすらも失敗に終わっていた。
つまりは、フェイが本気を出せば、一瞬で消し去ることが出来たことであったわけだ。
これまで、フェイ自身に何も影響を及ぼさなかったから見逃されていたと言うだけであった。
フェイの逆鱗を踏んでしまった彼らに、生き残る道は存在していない。
そうして悪あがきで起こしたのが、例の事件だ。
どうにかしてSQを引っ張り出したかった。
顔が露わになってしまったクローンたちに激似のフェイが激怒し、また自分達のもとへとやって来るだろうと考えたのだが、この二週間で話題は消え去り、彼らが目の前に現れることは無かった。
「このままだと、我々は滅びるだけだ。」
ジェームスは頭を抱えた。
「滅びるだけだなんて、御労しい限りです。心中お察しいたします。」
そう発言した声に、皆が反応する。
声の元へと視線を移すと、そこに居たのは、陽気な欧米人であった。
「あなたは!?」
ジェームスが訪問した人物の気配に全く気付かず、警戒を強め、そう質問する。
「私の所属する団体の名ですか??そうですね、あなた方にはこう知られているかと。【Axis】 ええ、そう呼ばれておりますね。私はそこから来ました。あっ、我が名はチャールズ。以後お見知りおきを。」
そう言うと、帽子を脱いで丁寧にお辞儀をした。
その端麗な所作につられるように小さく首だけでお辞儀をするものや、彼の存在に心底驚き、言葉を失い身動きできなくなっている者がいた。
辛うじて、ジェームスが声を振り絞る。
「あなたが…なぜここに…」
「フハッ、助けに来たのですよ。あなた方が、消滅寸前と聞き及んだのでね。我々と手を組みましょう。」
ニッコリ笑って、手を差し伸べてくる。
ジェームスはきみの悪い誘いに、フル回転で考えを巡らす。
目の前の存在が疑心暗鬼の塊であるのは間違いない。
素直に差し出された手を握り返すことは出来ずはずがないのだ。
しかし、この申し出は、喉から手が出るほど受け入れたい提案なのである。
今の組織の現状が、それほどまでに追いつめられているということだ。
さあ、ジェームスはどうする…
そっと、差し出されたチャールズの手を、ジェームスは堅く握り返す。
「協力、しましょう…」
互いに腹の中を探りながら、協定を決めた瞬間であった。
こんにちは、投稿の方法が前とは変わってしまい、なかなか、手こずりました
引き続き、ゆっくりと進めてまいりますので、どうそよろしくお願いいたします




