集結
3話目。
あのエンゲル襲撃事件から一週間が過ぎた。
いつもならばYooTuberの彼が事件の翌日には動画をアップしていてもおかしくないのだが、今回は全く上がって来ない。
それもそのはず、彼は三日前に、自宅で死んでいたのだ。
死んでしまっては動画を上げることは出来ない。
しかし、これは事件であり、裏に例の組織が関与している事は分かっているので、秘密裏に甘草たちは捜査していた。
その際に、松嶋春の家も家宅捜索したのだが、今回の事件の動画をひとつも見つけることは出来なかった。
そもそも彼は今回の事件には関係が無かったのか、それとも、動画ごと組織に消されてしまったのだろうと、決定打がないまま時間だけが過ぎていたのだ。
それは、突然始まった。
松嶋春が無くなって14日目、彼のチャンネルに動画がアップされ始めたのだ。
“いくつもの動画”
さまざまな角度で、長いものから短い物まで、春があの日、最後に撮影していた動画が、全てアップされだしたのだ。
そして、最後に、彼からのメッセージが鬼気迫るシーンと共に流れた。
「これを、見ている者達。聞いてくれ、俺はこれから殺されるだろう。犯人はこの動画に写っている奴らだ。うわぁ!!」
その言葉を残して、彼の手元で撮影していたカメラ画面が揺らぐ。
最後の台詞と共に、ドサッと倒れ込むような音とガシャンと何かが音を立てて叩き着けられた音を最後に、画像がぷつりと途切れていた。
この先、春が何者かに何かされ、殺されたに違いないと暗示させるこの動画は、見た者に強烈な衝撃と恐怖を与え、瞬く間に世間へと広まっていった。
「警視監、マズいです。これは俺では対処できません。権限で画像の消去を依頼してください。」
そう言いながら部屋へと駆け込んできた白崎を見て、大変なことが起きたに違いないと大熊も背筋を伸ばす。
「何があった?」
いつもの温和な口調とは違う、太くて圧力のある声で大熊が問う。
「これです。例のYooTuberやっぱり映像を撮っていたんですよ。それが凄い速さで拡散されています。」
「なんだと!?」
タブレットを覗き込んだ大熊は再生階数の数値の移り変わりに驚きを隠せない。
「一刻も早い消去依頼を。本人が亡くなっている上で、殺されると明言している動画ですから。犯人は誰かなのかと画像を分析する者が出始めています。」
白崎が顔を青くして訴える。
その時、白崎のズボンのポケットに入っていたスマホの電子音が鳴る。
画面を確認し、言葉を続けた。
「警察の方にも通報が相次いでいるみたいです。こちらに…あの方たちに、協力を頼みたいと。警視監、どうしますか!?」
「……すぐに彼らに連絡だ。」
大熊は重い腰を上げて、デスクの鍵のかかる引き出しに手を掛ける。
鍵を回し引き出しを開けると、中には見た目はリングケースにしか見えないソレが、ひとつだけ入っていた。
ソレをとりだし、パカッと勢いよく蓋を開く。
白崎が廻り込み、大熊の後ろから中を覗き込むと、通常、リングケースであるならば、指輪が嵌っている場所に、真っ赤な突起、ボタンがあるのが確認できた。
震える太い指先で、大熊が押し込む。
大熊は、それを押した後に、大きく息を吐いた。
息をする事を忘れていたようだ。
そうこうしているうちに、彼らの背後に気配を感じた。
振り返った2人は、それらを目にする。
猫屋の店主の剣、蓮、その間にジェイ、悔しそうに向かいにフェイいてジェイの隣に座りたいと喚いている。
彼らは大熊の部屋の応接セットにすでに座り、何処からか用意したお茶菓子を食べながらお茶を飲み、愉快そうに談笑していたのである。
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