現場にて~人とそれ以外
今年もよろしくお願いいたします!!
この日の捜査は、緊張感が漂う現場であった。
「いいか!現場から半径200メートル圏内には絶対に人を入れるな。それから1キロ圏内にいる者でカメラを所持している者を見つけ次第声を掛けろ。画像を残しているかをチェックするのだ。ネットに上げられる前に映像を全て消去しろ!」
「「「はい!!」」」
幾度となく、気合が入る。
命令を下したのは、甘草刑事だ。
緊急案件だからと、他部署から駆り出されている増員に指令を出した後、本人はシートの掛けられた遺体の前へと辿り着く。
すでにその者は息絶えており、姿はもとの馬へと戻されていた。
「馬の姿は、この姿が一番美しかったから。」
戻した猫屋の店主は、眉根を下げ、悲しそうな表情でそう言い、マーを偲んでいた。
蛙になっていたエンゲルたちは、マーが体を張って守りぬき、危ない状態であった者もいたが、警察に保護され、適切な治療を受けたので回復へと向かっている。
マーの事件はこのところ連続して起きているYooTube動画エンゲル襲撃事件と、同一犯であると思われる。
近頃、水面下で騒がれ始めた元売れっ子アイドルが、YooTubeにエンゲル事件の動画を上げているとの情報を、少し前に白崎から得ていた。
その都度、白崎の所属部署がネット民を誘導し、本物とは思わさせず、オカルトの域を超えないよう印象操作を行い、下手に有名にならぬよう誘導していたようだ。
これまでアップしている映像を見る限り、画像をアップしている人物が主犯とは思えず、裏に居る本星を探るためには、この男の周囲の捜査をより詳しく調べないといけないという話をしていたところであった。
その最中に、マーの事件が起こってしまい、甘草は犯人への憤りと自らの判断力の遅さに不甲斐なさを感じ、かなり気落ちしていた。
「どうです?何か分かりましたか?ローランド様。」
誰かに頼りたい気持ちでいた甘草が尋ねた相手は、ヒトの王 エスト・ローランドである。
通称ローランドと呼ばれているヒト科の王だ。
見た目は色白の肌に背がスラッと高く、青い目に煌びやかな金髪ウェーブの髪をふわりと風になびかせ、まるでお伽話に出てくるような王子様のような風貌である。
この姿は人間と過ごす際になるもので、通常は都内某所のU動物園内にて、ゴリラとして日々を過ごしていた。
本人は胸に生えた多毛がかなりの自慢なようで、たいもうのタモさんと日本では呼ばれたいらしいのだが…
親しくなりたい相手にはそう呼ばせ、自身はそう呼ぶよう主張していたようだが、外見と名がちぐはぐすぎるので、あまり浸透はしていなかった。
「うーん、分からない…そもそも、僕は医者でも鑑定士でもないから。こんなこと、分かるはずないじゃないか!?」
投げやり気味に、甘草へとローランドが返答する。
「はぁ、では、猫屋の店主様。見解をどうぞ!」
そう甘草が猫屋の店主、剣へと振る。
「えっ、自分で考えなさいよ。」
辛辣な答えが返ってきた。
甘草は気分を害し、むくれた。
「意見を求めるくらい、いいじゃないですか!!こっちは切羽詰まっているのですよ。これで何軒目だと思っているのですか、先日の事件もまだ関係者に聞き込みに行けていないというのに、すでに次の事件が起きて犠牲者が増えただなんて……もう、犯人を今すぐに捕まえるしかないんですよ!!!」
泣きそうな表情で、癇癪を起したように必死に訴えてくる。
「甘草刑事、ダメですよ。本家の能力をこっそり織り交ぜるのはよくありません。まあ、本人はその気はなかったようですがね。そうですね、能力に惑わされたという事で、ヒントをお教えしましょう。この事件に、うちの子を同行させていれば、一発で犯人を言い当てていたでしょう。私は下手なことは言いませんが。」
怒りの混じるような表情を浮かべ、遠くを見ながら剣は話す。
誰を思い浮かべているかは、容易に想像がついた。
「ジェイ…まさか、GHQが関与しているということですか!?」
甘草もそこへ行きついたようだ。
すぐさま、白崎へと連絡を取り、情報収集を頼んでいる。
「じゃあ、私はもう行くから、あとはよろしく。もう、お店を開けないといけない時間だからね。」
剣がそう言うと、ローランドがパッと笑顔を向ける。
「僕も猫屋に連れて言ってよ。久しぶりに、君のプリンアラモードが食べたいな。」
爽やかな笑顔でそう言われてしまうと、断れない…なんてことはない。
「嫌だよ、面倒くさい。動物園へ帰りなさいよ。バナナを貰いなさい。」
剣は一人でそそくさと、扉を引き出し、ローランドを無視して帰ろうとする。
「いいじゃん、いいじゃん。僕、A国から帰ってきた伊集院にも、まだ会ってないんだからさ。ああ~ああ~会いたいな~伊集院。」
その言葉に、剣はムッとする。
「今は蓮だ。猫田蓮!伊集院はとっくに終わっている。」
そう言うと、ついて来いと、扉を開けて内側へ向け、クイっと首を動かす。
それを見たローランドは嬉しそうに、駆け寄っていく。
そして、2人はその扉を潜って消えて行った。
それを横目で見ていた甘草は、大きく溜息をついた。
いつも自分達はコイツらに振り回されるばかりだと言わんばかりに大きく1つ吐いた。
短いのを3話投稿します。




