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裏切り

いつおもより短めです。

いつも読んでくださり、ありがとうございます☆★☆


「来たって…エルフのことでしたか…」

「ああそうだ。」

エルフの名を思わず口にしてしまった後に、コソコソと小声で話す剣と蓮。


「「……」」

 押し黙り、エルフなる人物を無視する2人。


「ちょちょちょちょーい、2人共、酷くない!?僕が遥々遠くの国から来たんだよ!!さあ、存分にかまって!カモーン!」

 エルフが満面の笑みでおねだりする。


「「……」」


 最初は口を開く気はなかったが、これ以上の沈黙は堪えがたいと、蓮が全く別の話を始める。

「あのモールにだけ売っていた輸入品のスナック菓子が…あーだこーだ。」

「それならば、バイパス超えた所にある外資系大型倉庫型スーパーに売っていたのを見かけたことがあるよ…あーだこーだ。」


 またもや二人してエルフをスルーする。


「もう!!なんで僕を無視するんだ!?」

 エルフは怒っている。


 見かねた匠が話し掛ける。

「あ、あの、三人目の天主様でございますか??あわわわ、初めてお会いいたします。私は、モネラの王の保護士をやらせていただいております。阿部匠と申します。」

 興奮を隠せず、エルフに匠は挨拶をした。


「おい、阿部匠!!そいつには関わるな!話を振るな!そいつはいつも厄介ごとしか持ち込まないんだ。俺たちは話を聞かないぞ。とっとと帰れ!」

 蓮が言うのに、剣が激しく縦に首を振り、同意している。


「ひっどいなー、ゼクスもツヴァイも、僕達は珍重なSQ仲間でしょう。そんなこと言わないでよ。そう思うでしょう、阿部さ~ん!」

 阿部に泣きつくエルフ。


「おい、泣きつくな。それにサラッと機密情報をしゃべるな!」

 蓮が憤慨しながら注意する。


「僕さ、今、凄く困ってるんだよね~聞いてよ、阿部さん。」

 エルフが匠に話しだそうとしているので、剣がエルフの口を手で塞ぎ、言葉を強制的に停める。


「エルフやめなさい、阿部さんに手伝わせようとするのはいけません。」

 そう剣が叱る。


 手の下で、エルフがモゴモゴと何かを答える。

 きっと、だってーとか、じゃあ君達が聞いてよーとか言っているに違いない。


「おい、阿部匠、お前、店を出ろ。厄介ごとに巻き込まれるぞ。死ぬぞ!」

 蓮がそう言うと、匠は勢いよく立ち上がり、慌てて店の入り口まで行き、挨拶を短くして帰っていった。


 ドアベルの揺れ具合が、匠の慌てた様子を物語っている。


「おい、エルフ!お前どうせ、また何かやらかしたんだろう!?俺達は手伝わないぞ!聞きたくない!!あ~あ~あ~聞こえない~」

 剣はエルフが用件を話す前にくぎを刺し、耳に手を押しあてて、声を出して聞かないように妨害する手に出る。


「あ、今、僕ね~エルフじゃなくて、高飛龍ガオ・フェイロンって言うんだよ~フェイって呼んで!2人は剣と、蓮になったんだったね。まだ慣れないな~」

 蓮の事はお構いなしにエルフは話し続ける。


「はあ、フェイ、今度はいったい何をしたのですか?」

 剣が溜息交じりに聞く。


「ゼクス!!聞いてくれるの!?やっさしぃ~」

 フェイは目をキラキラさせて、剣を見る。


「おい、剣!!お前裏切る気か!?」

 蓮が止めに入る。


「蓮、落ち着いて、この前の事もあるし、とりあえず話を聞きましょう。聞いてから手伝うか手伝わないかを判断すればいいじゃないですか。」

 剣が冷静に語り掛ける。


「仕方ねえな…チッ、おいエルフ、全て話せ!!」

 蓮が凄んでフェイに命令する。


「もう、怖い顔しないで~フェイって呼んでよ~それにぃ~何で手伝ってくれないのさ!!20年前は二つ返事で手伝ってくれたじゃないか!ね、今回もちょちょっと手伝ってよ~」

 フェイは頬を膨らませてむくれる。


「あの時は、お前らが飼っていた改悪した炭疽菌をラボから流失させたからだろう。人類滅亡の危機だったんだぞ!それに、お前らも亡き者になるところだった。秩序を乱せばどうなるのか分かっているだろう!!ヌルの貴重な時間を使わせたくないんだ、俺は!!だから手伝うしかなかっだんだ。」

 蓮が最上級に不機嫌顔で話している。


「ヌルの心配だけ!?僕のことはいいの??あ~あ、あの時代は僕のもとで菌の王(キノっち)は暮らしていたんだよね。あの研究に全精力を注ぎ、切磋琢磨しあっていた日々が懐かしい。毎日がキラキラしていて凄く楽しかったのに。君達が僕らの仲を引き離すから……それに、何度も言うけれど、(タン)ちゃんは、流失させたんじゃなくて、逃げちゃったんだよ。泥棒さんがラボに来て、炭ちゃんのハウスを荒らしたからだって何度も説明したでしょう。炭ちゃんは泥棒さんを懲らしめたくて暴れただけだって。」

 フェイは真面目に怒っている。


「はあ、もういいですから、今回の問題の話をしてください!」

 剣がしびれを切らして割って入る。


 二人は剣がイラついていることにハッとして、気を取り直し、大人しくなる。


「あのね、僕、8年前にA国に一度捕まったんだ。ウッカリしちゃって。」

 フェイが話し始めた。


 初っ端から驚きの言葉である。

 A国に捕まるという事は、おそらく、Qや王を狙うA国の機関GHQに捕まったのだろう。

 きっと何かしらの人体実験を受けたに違いない。


「それで、どうした?ここに居るって事は、無事だったって事でいいんだよな?」

 蓮が心配そうにフェイに聞く。


「うん、その時は僕の能力を使って逃げ出せたの。だけどね…失敗していたみたい。僕のサンプルが残っていたらしく、僕のクローンが作られちゃった。全部サンプルは廃棄したつもりだったのに、してやられたみたい。」

 フェイが心底嫌そうな顔で語る。


「エルフのクローン!?」

 蓮が聞き返す。


「うん、僕のクローン。見た目は僕とはまあまあ似ているけどちょっとだけ違う。髪色はシルバーじゃないし、目が僕より気持ち切れ長だった。うん、世界王よりも生体サンプルに似ている感じかな~?髪は真っ黒で直毛、目も真っ黒、鼻ぺちゃで、唇は薄い東洋の神秘って言うの?そう言う感じ。見た目はまあまあ強そうだった。保護欲をかきたてられる愛らしい僕とは雰囲気が全く違ったよ。テヘヘ~」

 フェイが自信満々にそう言い切る。


「「……」」

 剣と蓮はこれ以上、会話を続けたくない気持ちと葛藤している。


「能力は?」

 剣がそれでも情報を聞き出そうとフェイに挑む。


「僕の所に来た時は使っていたよ。遡る力はかなり弱かったけどね。おそらく、その力を使って、あいつらは僕のサンプルを死守してきたんだろうね。あの施設を爆破で消し墨にしたこともあったんだけどさ。本当にしぶとい連中だよ。」

 ウンザリと言った顔をしてフェイは首を横に振る動作をする。


 それも無視して蓮が次の質問をする。

「弱いって、どの程度なんだ?」


 会話が無視されることにはなれているようで、それには気に留める様子なく、蓮の質問にフェイが答える。

「そうだな~そんなに昔まで遡れないようだったし、長くて一日とか数時間前程度?それも数分程度しか過去には留まっていられないみたいだった。あと未来にも行けるようだったな。研究所のモニターの映像に残っているから見せるよ。そうだ、うちに見に来てよ!」


「いいや、遠慮しておく。それよりもお前の頭の中を見せろ。」

 蓮がそう言うと、フェイはその手があったと気づかされてガックリ肩を落とした。


「……わかった。でも、研究所にあとで遊びに来てね。パーティー開くから絶対に来てよ。」


 悲しそうにそう言うと、フェイは額に二本指を置き、小さく光る珠を二つ額からスッと取り出した。


 指先から剣と蓮へと目掛けて放たれる。

 光る珠はフヨフヨとゆっくり彼らに向かって進んでいく。


「ああ、いつか時間できたら。」

 蓮はそう言うと、珠を掌で掴み、額へと押し当てた。

 行く気は全く無いのは声から丸わかりだ。


 剣も自身の額へと浮遊してきた珠を受け入れる。


 フェイの記憶が伝授された。


「あ、こいつらは…」

 剣が呟くと、すかさずフェイが声を掛けてくる。

「ゼクス、何か知っているの!?」


「ああ、GHQの連中だよ。あ~この黒髪の子供がエルフのクローンか…あれが…」

 剣は言葉を濁す。


「あ~、これはお前ってよりもサンプルに似てんな~なるほど、クローンの方がキリッとしていて、エルフと違って賢そうに見えるのは分かった。」

 蓮がからかいの言葉を吐く。


「もう、僕は賢いんだぞ!!」

 エルフが頬を膨らませて、いかにも怒っていますと言った仕草で反論する。

 それに対して、蓮がおちょくるような言葉をさらに返す。


 その様子を見て、剣は盛大に溜息をついた。


  ***


 ここはC国の特別行政区M。

 モーターショーやカジノが運営されている世界的にも知られている観光地である。


 そんな外国の地のとある統合型リゾートのホテルの一室で、親子3人が後ろ手に縄で縛られ、猿ぐつわをはめられて、床に転がされていた。


 目の前には、A国の諜報員の秘書であるチャンとその息子が彼らを見下ろしている。

 その目は、無機物でも眺める様な視線で、興味が全く注がれていない。


「ねぇ、おっさん。こいつら戻しちゃってもいい?」

 秘書の息子が口を開く。


「おいビィー、私の事はお父さんと呼べと言っているだろう。いつ何処に王の耳が潜んでいるのか分からないのだから、気をつけねばいけないのだ。まあ、ここはC国だから警備は薄いようだがね。そうでなければ、こいつらは捕まっていないだろう。」

 目の前の縛られた親子を見つめて秘書の男が話す。


「本当にマヌケな奴らだな。誘導されたのにも気づきもしないで、ノコノコ海外まで捕まりに来ちゃうんだから。ハハハ、傑作だ。」

 ビィーが親子を馬鹿にして笑う。


 怯える妻と息子を庇うように父親が2人の前に陣取り、秘書の親子を睨みつけている。


 秘書が父親の猿ぐつわをずらすと、父親はものすごい勢いで喋り出す。


「あんたらはA国の諜報員の手下だろう。我々をどうするつもりだ!私が目的であるならば、妻と息子は関係ないはずだ。2人は解放してくれ。」

 必死で懇願する。


「ハハ、動物も家族愛は強いんだ!笑える。」

 秘書の息子ビィーが渇いた笑いを上げ、蔑む。


「ねぇ父さん、やっぱりこいつら戻しちゃっていい?」

 急に速足で床に転がっている子供の元へ秘書の息子ビィーが移動する。

 右手を勢いよく伸ばした瞬間、手首を掴まれて止められた。


 手の先を辿ると、掴んだのは秘書であった。

「今は使うな。」

 と、注意する。


 チェッと舌打ちすると、ビィーはソファーへとドカリと背中をつけて座り、天井を見上げる。

 手足をダラリとして、何もヤル気が無くなったとアピールしているようだ。

 そんな彼の様子に秘書が大きく溜息をつく。


 向きを変え、縛られた父親に秘書は話し掛けた。

「お前達は運が悪かったのだ。先程ヤツが言った通り、我々は粗末な技術のエシカルハッカーを辿り、uasumaへとたどり着いた。その関係者がこの地へ来るようにと情報を流しつづけ、あなた達の意識を誘導してきた。それに君達親子が引っかかったと言うだけ。天は味方せず。神原さん、残念でしたね。あなた達は運がない。」


「クッ。」

 と声を漏らして、神原は後ろに寝転がされている妻と息子を悲しそうに見つめた。

 自分の所為で妻と息子を巻き込んでしまったと強く悔いていた。


「神原さん、悔やまれるよりも、有意義なお話しをしましょう。」

 秘書が笑顔で話し掛けてくる。


「私の知るところでは、あなたは日本の検察庁で働く検察官だと聞いています。それと、検事総長直属の部下で補佐をしているとも。そして、エンゲルであるともね。」


 この秘書の言葉に、神原は反応をしなかった。


 1つでも何かリアクションをしては、全てがバレてしまうと思ったからだ。

 無言を貫く。


「ククククッ、そうですか。だんまりですか。では、ビィー少しあなたの力を見せてあげてください。ほんの少しですよ。」

 優し気に、ビィーへと命令する。


「たくっ、やっとかよ。」

 首を回しながら立ち上がり、ビィーは少しずつ神原親子の元へとやって来る。

 神原は背に妻子を庇い、身を挺して守る。


 だが、縛られている神原は直ぐに除けられてしまう。

 ビィーが乱暴に母親の髪を掴み、その場から引きずり出すと、中腰になり引きずられて寝転んだ状態の母親の左腕を上へと引っ張った。

 痛いのと恐怖で母親が悲鳴を上げる。


 神原が芋虫のように動き近づこうとするが間に合わない。


「じゃあ、やっるよー」

 気の抜けた声色でそう言うと、腕にグッと力を入れる。

 腕の部分が光に覆われる。

 すると、神原の妻の左腕の影がみるみる小さくしぼみ、形を変えていく。


 光りが無くなり現れたその腕は、カピパラの前足であった。

 腕だけがカピパラへと戻っている。


 驚きと恐怖で、神原親子は声を出すのも、息を吸うのも忘れていた。


 我に返り、神原が叫ぶ。

「な、何やってるんだ!!戻せ!妻を戻せ!!早く戻せ!俺ならどうなってもいい。俺はいいから、だから…やめてくれ、妻を戻してくれ。2人を巻き込まないでくれ…頼むから…頼む。」

 大声で叫び、徐々に声を震わせて、頭をカーペットへ摺り寄せ、お願いをする。


「はあ、あんな態度とるからだよ。許してほしいなら、父さんの話にちゃんと返答しなきゃ。」

 ビィーはニヤリと笑い、神原の目の前に来てそう話す。


 それを聞いた神原は、顔を酷く歪めて、震える。

 心の中で、組織を裏切るか、妻子を助けるかで葛藤しているようだ。



 迷いはあったが、神原の心は最初から決まっていた。

 そう言う場面が訪れたら、そうすると…自分は妻子を助けると決めていた。


「分かった。話すから、妻を戻してくれ…」

 消えそうなほど小さな声で、神原は答えていた。


投稿、頑張ります!

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