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猫の手を借りる

2月は投稿が間に合いませんでした。

読んでいただき、見つけていただき、ありがとうございます。



「はい、これで元通り。」

 関東近郊の某高級別荘地、森に囲まれたとある御屋敷の一室で、青年は少年に声を掛けた。


 青年の名前は猫田剣、東北の街で猫屋という喫茶店の店主をしている。

 少年の名前は長谷川良喜、たった今までヨークシャテリア()であった。

 エンゲルが狙われている事件を考慮し、人へと戻すこととなった。


 キッチン横にあるメイドの休憩室と言っていいような狭い一室。

 2人は長テーブル横にある椅子を向かい合うように置き、そこに座り、手を握りあっている。


「えっ、もう?」

 良喜は犬になった時とは大違いで、あまりにも短い時間で事を終えてしまい、驚いて聞き返してしまった。


「うん、終わったよ。」

 店主は椅子から立ち上がりながら、返事をした。


 それと同時に、ドアをノックする音がする。

 店主はすでにドアの近くまで歩みを進めており、今開けますと発した時に、ノブに手を当てていた。


 ガチャとドアノブが廻ると、そこには良喜の兄である優一郎が不安で顔を歪ませ立っていた。


「戻っているよ。お入り。」

 と、店主が声を掛ける。

 すると、瞬時に店主の横を勢いよくすり抜けていった。


 優一郎は、室内に入り、一度、動きを止めた。

 良喜を己の目で確認し、鼻息を大きく吸い込む音が幾度か鳴る。

 その音が止まると、優一郎は走り出し、良喜の元へと向かう。

 良喜の横まで来ると、そのままの勢いで、良喜に抱き着いた。

 そして、大きな声を上げて、優一郎は泣き出した。


 小さな部屋に反響する彼の泣き声は、ドアから漏れて、奥の部屋にまで届いた。


 心配をした犬の女王エリザベスが、奥の部屋からトコトコとやってきて、優一郎の付き添いで扉の前まで一緒に来ていた犬飼に、軽々と抱き上げられる。

「やれやれ。煩くてかなわん。静かにせんか。」

 と、エリザベスが活を入れる。


 そのエリザベスのひと吠えに、優一郎はビクッと体を揺らし抱き着いていた良喜から身体を離し、ドアの方を振り返る。

 そこにいるエリザベスを見つめた。

 いつの間にか優一郎の涙は止まり、目に溜まった大きな雫だけが今にも零れ落ちそうに揺れている。


「兄ちゃん。」

 良喜は心配そうに眉を歪めて優一郎を呼ぶ。

 兄が泣いている理由が分からなくて、困惑しているようだ。


「ごめん、泣いちゃって。僕は、思っていた以上に、よっくんが人間に戻って嬉しかったみたい。お帰り、よっくん。」

 目の縁に溜まっていた雫を手でさっと取り除き、笑顔でそう言うと、もう一度、良喜に抱き着いた。


 今度は、良喜が人間の自分を歓迎してくれた兄の気持ちに嬉しさを感じ、震える唇を歪ませ、目に涙を溜める。

 そして、声をだして泣き出した。


 その泣き声につられて、嬉しそうに笑いながら、兄も静かに涙を流す。


 弟のワンと吠える声ではない人間の言葉に…。

 兄からの自身の存在を望む言葉に…。

 双方それぞれが胸をいっぱいにして涙を流した。


「何だか、私が彼らを離れ離れにしていたみたいになってない?ちょっぴり傷つくわ。」

 エリザベスがそう言うので、店主が口を挟む。


「そうではないですよ。彼は犬になりたかった。彼が望み、あなたはただ、その願いを叶えただけ。ですが、なってみて初めて、これまで感じ得なかった不都合や視点に気が付いたのでしょう。このことで、お互いにもっとも大事なことに気づけた。リジーの御手柄です。」

 兄弟を優しく見つめ、店主は語る。


「そう…なのかしら??う~ん、なんだか、腑に落ちないこともあるし、巧く言いくるめられたような気もするのだけれど…2人が幸せになれるのであれば、私はこれ以上何も言わないわ。」

 少しばかり不満はあるようだが、彼らが幸せそうなので何も言わないとエリザベスは言葉を残し、犬飼に広間にへと戻るようを命じる。


「あんた達もよ。いつまでもそんなところで泣いてないで、戻ってお茶にしましょう。さあ行くわよ。」

 と、良喜と優一郎へひと鳴きする


 泣いていた2人は顔をドアの方へと向ける。


「兄ちゃん…僕、人間に戻ったから兄ちゃんとまた遊べる。それはとても嬉しい。でも、リジーとお喋りが出来なくなるのは悲しい…」

 犬飼に抱っこされているエリザベスを良喜は見つめて言った。


 広間へ戻ると、ニヒが定位置に丸まり寝ている。

 皆が部屋に戻ってきた気配で、眉を上げ片目を開け、伸びをし始めた。


「終わったか?」

 ニヒが兄弟に話し掛ける。

 二人には、猫語が通じないので、犬飼が慣れた様子で、通訳をする。

 犬と猫は近い種族なので、犬飼はニヒの言葉も聞き取れると同時に、ニヒの支配も受けてしまう。

 犬飼はあまり気にしていないのだが、エリザベスは面白くないと感じている。

 ニヒとの内緒のお喋りが彼には筒抜けと言うのも、面白くない要因の一つであったりする。


「この通り、元に戻りました。でも、2人とはお話しできないから、寂しい。」

 良喜が眉を下げ、口を尖らせ悔しがる。


「そうだね。残念だけれど、王たちとは会話も出来なくなるし、ここへはもう来られない。君達の記憶を消さなければならない。」

 ニヤニヤした笑みの店主から軽い口調で、そう伝えられた。


「「えっ…」」

 兄弟は驚きに言葉を失う。


「う~ん、でもね、記憶を失くしたくのならば、1つだけ方法はあるんだけれど…聞きたい??」

 2人にかなり接近してきて、店主は話す。

 圧が強いわ、離れなさいと、店主はエリザベスに注意を受ける。


 渋渋、店主は二歩下がると、2人をじっと見やる。

 兄弟は、大きく首を縦に振り、同時に聞きたいと答えた。


「これは君達のお祖父様もこの方法を取っているんだけど、ずばり、記憶を消さない代わりに、我々の事は許可なく話せないようになっている。我々の事を離そうとすると、爆発するんだ。バーン!!」

 店主が手を大きく叩く。

 その音に兄弟はワッと驚き後ろにたじろいだ。


「そんな嘘をつくでない。」

 エリザベスが吠えると、通訳で犬飼が瞬時に伝える。


 その言葉に、揶揄われたと理解し、兄弟は胸をなでおろす。


「ごめん、ちょっと反応が面白くて、ついね。まあ、爆発はしないのだけれど、声は出なくなる。相手に伝えられなくなるってこと。ちなみに、字も書けなくなる。筆を握った瞬間に何を書くべきだったのかを忘れてしまうんだ。それでどうかな?これでもいいというならば、記憶は消さないよ。」


 優しく問いかけてくるが、先程の行動込みで、この男は何だか胡散臭いと優一郎は感じている。

 だが、記憶を消されるのは回避したいので、2人は彼の提案を受け入れることにした。


 店主が2人の頭に片手を乗せる。

 一分もしないうちに、はいと手を離した。


「これでよし。」

 そう店主が言うと、兄弟に質問する。


「2人に質問。さて、君を犬にしたのは、いったい誰でしょうか?」

 兄弟はその質問を聞いて、エリザベスの方を向く。


 “エリザベス”と脳裏に浮かべ、2人はアイコンタクトをして声に出そうとした。


「せーの。」

 店主の掛け声の後に、名を呼ぼうとしたのだが、喉から音は発せらなかった。


 口元がパクパクと動くのみで、無い音が掠め、空気を揺らすだけである。


 どんなに頑張っても、言葉は出ない。

 しかも口は折り紙で作ったパクパクのような動きしか出来ていない。

 口元の動きで音声を予測することも出来なくなっている。


「ね、どんなに頑張っても、許可が下りないと我々のことは話せない。だから決して、頑張らないようにしようね。」

 そう店主は言うと、2人の頭をグリグリっと撫でた。


「うん、いい子たちだね。ほ~ら、今は話せる。」


 そう言ったとたん、パクパク口は

「エリザベス」

 と、発した。


 不思議な力である。


 気持ちが落ち着いてきた頃に、優一郎が不安に思っていたことを、店主に聞く。

「あの、1つ質問なのですが…よっくんは、世間では亡くなっていることになっていますよね?自宅に帰っても大丈夫なのでしょうか?」


「あ~それはね。私の友人が彼方此方に出向いて対処して回っているから、大丈夫だと思うよ。うん、心配ない。家族にはこう説明している。死体は別人であることは早い段階で分かっていた。悩みを抱えた母子の様子が心配であったお祖父様の判断で、その情報を伏せて、良喜を勝手に預かるといった形を取っていたと、そういう事になっていると思う。君達のお祖父様の考えた筋書きだけどね。」


「そうですか…おじいちゃんが…」

 祖父の自分達を想う温かい心に触れ、優一郎は安堵の表情を浮かべた。


「そうだ。良喜君!君は日本だけでなく世界に目を向けてみるのもよいと思うよ。君のお母さんの知っている世界は少しばかり狭いのかもしれない。そこは君には少しばかり息苦しい。もっと広い広い世界を一度見てみるといいぞ。君が無理に合わせるのではなく、君の生きやすい場所を選ぶのだ。まずは、お祖父様に相談だね!」


 店主が良喜にそう言うと、

「はい!!」

 と、ハツラツとした声が返ってきた。


 その時、店主がなぜ一瞬止まり無表情になる。

 だがすぐに、うさん臭い笑顔に戻った。


 ニヒが店主の足元に絡みつく。

「おい、どうした?」

 ニヒが不思議そうに話し掛けてきた。


「ああ、何でもないのですよ。ただ、無垢な笑顔というものにどう対処してよいのか反応できず、一瞬戸惑っただけです。問題はありません。」

 胸元へと持ち上げニヒを抱き、笑顔のまま、店主はニヒに返事をした。


「あっ!ああ!?そうです!ニヒ、ユグさんに告げ口したでしましたね!?私がここの木を傷つけたって!!言ったでしょう!!あの夜、遅くに1人でお店の仕込みをしていたら店内の観葉植物に取り囲まれて、いきなり店の外に追い出され、店から締め出されたんですよ。治せって言われて…夜中にここまで来て修復しました。それでも店内に入れてもらえなかったので、朝日が昇るのを待って、五稜郭まで超高級栄養剤を土産にしてユグさんへ会いに行き、謝罪してきたのです。辛かった…告げ口はしないでとあれほど言ったじゃないですか~私は心からの謝罪をしたにもかかわらず、一週間、店の茶葉がずっと渋かったんです…グスッ。」

 泣きべそをかくような仕草の店主だが、全く涙を流していない。


 そんな店主に侮蔑な目を向け、ニヒは罵る。

「当然の報いだ!」


「ニヒ…私、あなたにそんな風に言われたら、本当に泣いてしまいます。」

 と、店主は落ち込む。


   ***


 別荘で茶番劇が行われていた頃、検察庁の一室で、猫からヒトへと姿を戻した白崎徹也が持ち前の能力を使い、情報を盗み見ていた。


「白崎君、お疲れ様。」

 そう声を掛けられ、振り向くと、そこには神原がドリンクカップを両手に持って立っている。

 右手を差し出し、1つカップを手渡す。

 中身はコーヒーの様だ。


「猫屋で入れられているような上等なものではないけれど、コーヒーで一息入れようか。焼き菓子もあるから。」

 と、休憩を促された。

 どうやら、自分はかなりの時間、集中して作業を行っていたようだと、神原の背後の壁にかかる時計を目にし、白崎は気づいた。


 神原の言葉に素直に従い、神原と休憩の時間を持つ。


 部屋の片隅に置かれた応接セットに向かい合って座り、取り留めない会話を始めた。

 その意味のない会話がしばらく続いた後、神原は満を持して、踏み込んだ質問を投げかけてきた。


「白崎君、久しぶりの人間に戻ってどう?猫の時の方が良かったかな?」

 場が重くならないようにお気楽口調で発せられた言葉であるが、受け取る側にとっては、いくつもの複雑な感情が蘇るものであると神原は知っている。

 じっと白崎を見つめ、神原は返事をゆっくりと待った。


 白崎は少し口を噤み、一瞬沈黙したものの、静かに語り出した。


「猫の生活の方が、僕にとっては素晴らしいものでした。毎日が楽しく、幸せで溢れていましたから。ですが、その生活は、あの人が…本田さんがいつも一緒に居たからこその幸せであったと思っています…本田さんはもうこの世には居ません。僕にとっての安寧の場所は、消えてしまいました…失ってしまった…だから、僕は、僕の持つ力を彼の弔いに使いたい。彼の役に立ちたい。敵をうちたいのです。」 

 白崎は俯き気味で、コップを両手で握り絞めている。

 手に力が入り、コップの形を歪ませていた。


「そうか…」

 神原はポツリとその一言を呟く。

 何か言いたそうだが、言いかけて口を噤んでいるような雰囲気に、彼にも同じ経験があるのではないかとふと過る。


「一つだけ言っておく。根をつめすぎるな。お前が体を壊したりしたら元もこうもない。それに、働き過ぎて冷静な判断が出来ずにボロを出してしまう。そんなことが起きてしまうかもしれない、そう己が危うくなるかもしれないのだ。気をつけないといけない。お前が捕まるとかシャレにならんぞ。上司の私の監督不行き届けという恐ろしい責任追及が押し寄せるだろう。つまりだな、情報能力は手助けをしてくれる優秀な部隊(奴ら)がいるから、お前はちゃんと体を休めろという事だ。気まぐれで手伝ってやっているんだぞ!って程度でいいのだ。」

 神原の気遣いが身に染みる。


 傍から見たら、本田を殺されたことで、自分を追い込み無理をしていると分かり切っていたのだろう。

 白崎は思っていたよりも自らを追い込み、行使していたみたいだ。


「はい…神原さん、ありがとうございます。」

 白崎が素直にお礼を述べると、神原は照れくさそうに笑い、手土産で持ってきた焼き菓子の箱を空け、白崎へと進めてきた。


 白崎は勧められた焼き菓子を頬張りながら、神原の話の中で気になった部分の質問をする。

「神原さん、先程言っていた。優秀な奴らって、どこの部署ですか?出来たら僕も一緒に働きたいのですが。」


「う~ん、それは無理だな~あいつらは自由だから。」

「え?」

「優秀過ぎるのもしかり、気難しいのだ。なにせ、王シリーズだからな。お前には手に余る。一番協力的な鳥の王でさえ、人間やエンゲルに反発してくる。協力して共に動くなんてことはほぼない。鳥の王は専属の保護士の言葉ならば聞くから、稀な存在だ。他の者の話は聞こうともせんが。」


「鳥の王は、確か、セキセイインコのチッチ様。保護士はエンゲルではなくただの人間でしたよね?」

「ああ、ただの人間だが真実を探り当てる能力は化物並みの名刑事だった。鳥の王は絶大な信頼を置いている。」


 白崎はその人物の事を本田から聞いていた。

 市原乙女さん、御年53歳のスイーツとお喋り好きのおばちゃんだと。


 警察庁特殊課に顔を出す度に会うと話していた。

 刑事の職を辞めている彼女はそこで特別指導員として働いていて、主な仕事は特殊課のサポートをしている。

 特殊課に証拠を直接届けにいく本田に、毎回美味しいお茶とお茶菓子を出してくれる有難い人だったと言っていた。


 ある日、本田が珍しく職場の秘密を軽々しく漏らした時の事を思い出した。


 “何故か仕事場に鳥を連れてきている人が居る”と、そう零していた。

 市原に何故、仕事場までペットを連れてきているのか聞いてみたことがあったそうだ。


 その時、市原はこれも職務の一つであり、課長の了解も得ていると答えたという。

 その事に一言も文句を言わない特殊課に対し、本田は何かあるのかもしれないと勘繰り、彼らの行動に疑念を抱いていた。

 だが、刻々と時間が過ぎるにつれてそんな疑念は薄れていた。


 本田の勘は正解だったようだ。

 まさか、おばさんの連れていた鳥が、鳥の女王であったなんて…普通の人間が連れていただなんて、思いもしなかったけれど。


 白崎自身も、ここでの仕事をこなし、秘密情報を盗み見られるくらいに信頼を得るまでは、王シリーズの事は完全なシークレット扱いで、王のオの字も調べることも出来なかった。


 そんな中で、鳥の王が襲撃を受けた。

 内通者が自分達を売ったと判断した市原が、鳥の王と共に雲隠れしたのは記憶に新しい。


 もうすでに、速い段階で市原は内通者が誰であるのか見当がついていた。

 だというのに、襲撃者の情報が回されることが無く、彼女らは襲われた。

 市原が大層憤怒し、その結果の逃亡であったそうだ。


 鳥の王を失わなくて本当に良かったと、神原が心から呟いた。


「もう間違えることはない。白崎も、前のように何かあったらすぐに俺に相談しろ。猫になった途端、お前は本田ばっかり頼っていたからな。正直、少し寂しかったぞ。」

 神原がそう言うと、白崎は目をパチパチさせた後、目元をクシャッと崩し、返事をした。


「ありがとうございます。頼りにしています、神原さん!」


 白崎がそう言うと、神原は、おうと、小さく言い、手に持った菓子を一気に頬張った。


「それで、神原さんがわざわざここまで足を運んで、お茶をしに来ただけという事は無いのでしょう。何かありましたか?」

 白崎は本題へと誘う。


「ああ、君が調べて絞ってくれていた彼らの潜伏場所だが、見当がついた。それから、もう一つ頼んでいた案件の方だが…これは本当なのか?」

 神原が胸ポケットから三つ折りに折りたたんだ紙を取り出す。


 白崎は三つ折りの紙を受け取ると広げ、目を通して、そうだと頷いた。

「はい、これは本当です。このA国滞在者リストの人物たちを調べ上げ、見張れという命でしたので、その中も1人に動きがあったので報告しました。ジェームス・ジョンソン氏、彼が三週間後に日本に入国予定です。付き添いの方が2人いるようです。一人は彼の秘書のチャン、2人目は秘書の息子のようです。」

「そうか…引き続き、見張ってくれ。それから、秘書のチャンとその息子の情報も詳しく欲しい。出来れば画像も。」

「分かりました。探してみます。」


 話し終えて用は済んだのか、神原は席を立つ。

 2、3歩進んだところで足を止めて振り返り、白崎に尋ねた。


「お前、端末から居場所の特定はすぐに出来るか?」

「はい、出来ますよ。誰かお探しですか?」

 得意気な顔で白崎は言い切る。


「栗栖がな〜連絡つかないんだよ。今、どこに居るのか…」



   ***


 ドサッ。

 地べたへと頬を打つように崩れ落ちた男は、自身を痛めつける者達を激しく嫌悪していた。


 クソックソクソッ…自分は弱すぎる…。

 何も反攻することが出来ない自分に腹が立っている。


「エイトー、こいつも何も吐かないよ。殺しちゃっていい?」

 少年が自分の後ろに立ち、少年よりも少し年上の者に物騒なことを問う。


 考え事をしていたのか、意識を戻したエイトと呼ばれた者が、慌てて答えた。

「イレブン、隠ぺいはもうしなくていい。気づかれている。だから、力を無駄に使うな。お前はニッポンに来てから力を使い過ぎている。」

 心配そうな瞳を向けている。


「僕は…ほら、誰かさんと違って余裕だから問題ないよ。それよりも、どうする?こいつも何も知らないって?鼠に近い人物だって聞いたいたのに無駄だった、最悪だ〜もう直接さあ、鼠に聞くしかないんじゃない?さっさと乗り込んじゃおうよ〜」

 イレブンが横たわる男の腹を靴の先でツンツンと蹴飛ばしながら話す。


「そうだな。上官からの探りと接付が増えたし、これ以上は誤魔化せないよな。ここらでいっちょやっときますか。」

「イェーイ!それでこそ、エイト!楽しみだね~。」


 エイトの腕に手を回して、くっつき、イレブンは大喜びである。

 自分の意見が受け入れられたことに嬉しさを爆発させている。


 この頃のエイトはイレブンの扱い方をよく理解しており、チョロいとさえ思っていたのであった。


目指せ、月一投稿。頑張ります。 


ブックマーク、評価、ありがとうございます。

店主と共にニヤニヤさせていただいております。感謝。

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