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虚実創作  作者: 世界創作学部生、めい
character expansion and non dramatic affairs
8/14

1-0E,0F

今回で第一章が終了です。

第二章の劇的をお楽しみに!

0E


「意外と。」

呆気なく、錦海は家具の素材を取引した人物を教えてくれ、それどころか会わせてくれるという。


「緋鋸 香。犯罪記録やOLDの急な減少などは見られない。至って文明的な一空民だ。」

「そんな奴に天然素材を得るほどの資産力はないように感じるが。」

「しかもあんなにでかい棚を作れる程の量すからね。」

ビルの中腹までエレベーターを伸ばす。

「住んでいる地域も特に何かがあるようでも無い。錦海の奴、騙しているようには見えなかったが。」

「嘘はついてねえぞ。牙鳥。」

「峯住…。使わないんじゃなかったのか?」

「体が慣れちまってんだ。あの位のやり取りなら使うまでもなくわかる。」

「…そうか。」


呼出音


戸は開かない。


気弱そうな声

「はい…、どうかされましたか?」

「対応可の者です。牙鳥と申します。そのままで結構ですので、お話伺えないでしょうか?」

「いっいま、忙しいので…。」

おい」

「待て峯住。…お忙しいところすいません。お時間は取らせません。一つだけ…宜しいですか?」


「…何でしょう?」


「ニシキゴイ、をご存知でしょうか。」


施錠音が二回

激しくも、遠ざかる足音

「峯住!!追え!」


全く、

乱暴なやり方だ。



峯子が犯罪者絡みの組織を調査していた時に見つけたのは、錦海の運営する材料量販店、錦鯉という会社。

件の家具店はそことの提携もあり、経営が未だに人工であるという点が、他にはない特徴だった。

いざ調べてみれば外面だけの重犯罪企業で、なぜ今までバレなかったのかがよく分かるほどには金の力が動いていた。

金の出処でもあり元締めでもある、錦海、錦海恋太郎を訪ね、取引履歴を手に入れたし、厚意で顧客とも会わせてくれた。という訳だが。

あそこまで丁寧な管理をしているのは犯罪者らしくはない。


ビルの端から飛び降りる。たかだか七階程度、人間が耐えられない程の重力は感じられない。

着地するや否や、規制線と警告線、それから対応庁の捜査線をビル外周に引き、結界を作る。

これより当ビルは、内部空民及び不審者不審物の全位置情報を公開し、それを対応家の事件対応に関連する情報として提供することを求める。

応じない場合、空内治安条例75条により然るべき対応と処理が行われる。」

さあ、袋の鼠だ。






0F


ビル内の空民は皆、多少の動揺はありつつも平和的な協力をしてくれた。

このような状況に多少慣れつつある空民が居るということも、対応家としては懸念すべきなのだろうが…。

今は篭城している容疑者、いや、あの素振りは確実に何かしら犯ってそうだが、緋鋸 香の捕獲を最優先に考え…


おや?


牙鳥が一階から出てきた。峯子も続く。

誰かと一緒だ。

いや、まさか?

そんなに簡単に出てきていいのか?


意地もへったくれも無いな。最近の犯罪者。


「おー先ぱい!もう警告線取っていいっすよー!」

峯子は聴取線を引いて取り調べを始めた。

「峯住、済まないな。こんなに簡単に捕まってくれるとは思わなかったよ。」

牙鳥も目算外だったのか、峯子に手を引かれ聴取陣に連れていかれる緋鋸を訝しんでいる。

「なにか隠していそうだな。」

「今、緋鋸が居た部屋を閉鎖している。後で詳細を調べるが、見つけたよ。動かぬ証拠だ。」

牙鳥から書類を受け取る。

錦鯉との取引記録、だが、材料に提示された法外な金額が「特殊取引」の項で元の十分の一以下にまで割り引かれている。

一体なんの取引を?

「その特殊取引の欄、金で取り引きしたのではなく麻薬で行われたものだ。一緒に見つかった麻薬の痕跡がある。」

それを先に言え。」

「緋鋸は仲介として得た麻薬をいくらかくすねて貯蓄していたようだ。接触人物の履歴はともかく、定期的に居住区外への出入りが靴跡記録から見られる。」

麻薬に関わっている時点で確実に処分がされるが、問題はまだ解決していない。

「牙鳥、家具店にあった棚の材料を手に入れた、その後どうやって棚に製品化したのかはともかく、こいつが誘拐犯でいいんだよな?」

「違います!私じゃない!」

聴取線を超えて声が響く。

峯子が聴取線をまたいでこちらにやって来た。

「おいおい容疑者から離れるなよ。」

「どーせ逃げないっすよ。それよりも、気になることが。」

「材料を家具にしたやつまでは錦海も知らなかったぞ。」

「ああいや、それは聞き出せたんすけど…。」

「じゃあ緋鋸はそいつに嵌められたんじゃないのか?」

「うーん、そうとも言えない感じっす。家具店に搬入したのは緋鋸さんらしいんすけど、その時の検品記録はさっき貰って、私も見られたんすよ。」

「ん、それは。」

家具店での検品履歴は峯子にも分からない、つまりは見れない情報だったのに、同一の記録がされている棚の検品記録が見られた?

「たぶん、棚の検品記録は家具店にもあって、それ自体を見るにはさほど高い水準が要らないと思うんすよ。」

「つまり、検品履歴を見ることをまとめて秘匿したのは、他に見られたらまずい情報を検品履歴の中に紛れ込ませた可能性がある…か?」

「予想でしかないっすけど、緋鋸さんは嘘をついてるようには…。」

「棚の検品記録、見せてみろ。」

「これっす。じゃあ、私は聴取に戻るんで。」

受け取った記録に目を通す。

製品情報…材質、ああ駄目だこの時点でニシキゴイの記録が消えてやがる。」

隠すのが上手い奴だ。

設計、制作…帯雪…帯雪?

「なあ牙鳥、帯雪って名前、どこかで聞いたことないか?」

これまでの事件記録に検索をかける。

「依頼された資料にはそれらしい人物はいないな。犯罪者か?」

「いや、俺たちの仕事で関わってはいないが…帯雪…」

背後に閃光

爆音

爆発

聴取線が吹き飛び、峯子の五体が空を舞う。

「なっ?!」

峯子!!」

どさり、と打ち付けられた峯子の傍には、片方しかない靴が転がっている。

「せん…ぱ…、ひの…さんが。」

「緋鋸ォ!!」

爆煙の揺らぐ中に人影は無い。

雲散霧消。逃げられた…。

「牙鳥!救護機呼べ!」

救護機要請が響く。

牙鳥はグローブ越しでも分かるほど、強く拳を握っている。

「峯子、救護機を呼んだ。あまり動くなよ。」

「へーき…すよ。これ…らいなら、なお、せ、るす。」

気づけば、腕の欠損が繋がっている。

「お前…」

「どう、す…?こん、くらいには…つかえるよおに…なったんすよ。」

近くの分離した四肢を手に取り、溶接するかの如く繋げていく。

これが、研究者の、峯子の技術。

「っげっほ!んん…さあ。つながったっすよ。」

溜まった血を吐き出し、いつもの軽快で小柄な体が起き上がる。

「牙鳥先ぱーい、救護機要請いいっす。」

「なっ!」

さすがに俺も牙鳥も、ここまで異常な技術の行使を見たことは無い。軽く引く。

「本当に無事だな?」

「とーぜんっすよ。でも、緋鋸さんには…。」

逃げられてしまった。だが、助手が無事なだけでも大きな収穫だ。


緋鋸 香、麻薬との関わりををここまで秘密に出来ていたのは憎たらしい。それに、帯雪。どこかで聞いた、今回の件の重要参考人となりうる人物との関わりがある。


絶対に捕まえる。


牙鳥が爆破現場の対応を他の対応家に依頼したと告げた。

「いいのか?この事件の情報、あまり広げるのは不安だが。」

「少しは仲間を信用しな峯住。俺たち対応家は、この社会の、文明の平和のためにあるんだ。みんな協力してくれるさ。」

「そーっす。ここは任せて、私たちは一旦家、帰りましょ、先ぱい。」


誘拐事件は解決していない。

そんな暇はないように感じたが、やはり峯子の身を案じ、帰路に着く。


仕事はまだ、終わらない。


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