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虚実創作  作者: 世界創作学部生、めい
character expansion and non dramatic affairs
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1-06,07

06


事件捜査には対応庁から支給される対応家用の制服を着用することが義務付けられているが、その他に大した規則は存在しない。

だからという訳ではないが、グローブを付けて街を闊歩する対応家というのも、認められてしまう…。

「牙鳥…お前、捜査はもういいのか。」

「あの山は急を要するもの以外、君に投げ戻した。」

牙鳥の拳が空を切る。

「駄目だよ峯住。対応家ってのは指名される場合もあるんだから。体調不良なのは分かるけど仕事は仕事だよ。」

どうやら説教が始まりそうな感じだ。

「だいたい、家に帰ってみれば君はいないし、洗ってない食器が二人分。制服の位置情報を見てみれば斗秋補佐官と家具店に居る。病人が後輩とデートとはどういう了見か、説明してもらいたいところだよ。」

分かってるじゃねえか。」

「声に出てるっす。宇由先ぱい。」

「まあ分かってるけども。」

「分かってるんすか牙鳥先ぱい。」

確かに、あいつに投げた捜査資料のうち、脱走事件がいくつかあった。中身をよく読んでいた訳ではなかったが、まさかこいつらの脱走事件という訳では」

「そのまさかだよ。」

そのまさかだった。

しかし、だとするとやはりこの脱走犯は別の事件に巻き込まれていることになる。

安らかな顔で意識を失った軽犯罪者共。頭を預けている白く丸い塊。

「牙鳥、これは一体何が起きているんだ。」

「その前に、こいつらを病院に搬送したい。」

「あ、ああ。」

気付けば、大勢の客と端末が当たりを囲んでシャッター音を響かせている。

「そういえば情報規制線引くの忘れたっすね。」

「確かに…。」

今更引いても無駄だろうが、一応虎柄の規制線を貼る。

「捜査情報流出と職務怠慢、反省文じゃ済まないぞ峯住。」

「体調不良だからな。」

「もう快調の筈だがな。」

「…、峯子、牙鳥の指示か?」

「へへ…実は。」

こいつら…。

「礼はSELFYの揚げ鶏でいいぞ峯住。」

こいつら…!!

「でも牙鳥先ぱい。何しにここまで来たんすか?先ぱいの捜査現場と近かったんすか?」

「君は本当に言葉を選ばないね、峯子補佐官。」

牙鳥。峯子の顔にグローブを押し付けるのはやめてあげろ。

「峯住に投げられた脱走事件、麻薬常用者という特徴が資料に書かれていない。」

「ほりゃ、ふぁおほふぁめめ…顔と名前があれば分かるっすし。」

「そうだろうけど、この依頼は施設から来ている。なら収容していた人物の詳細記録を送ってくればいい。なぜ、名前と顔だけを送ってきたんだろうか?」

「焦ってたんだろ。」

「焦ってる割には、その後で君に匿名の誘拐事件を送るんだな。依頼した脱走犯の詳細を送った方が賢明だと思わないか?」

それは…。確かに。」

「どうもおかしい。他の事件をとりあえず片付けて、君に意見を聞こうと思ってここに来たのだが。」

それも要らなさそうだ、と拳を振るう。





07


「宇由先ぱい、救護機が来たっすよ。」

「搬入しよう。頭に触らないように気を付けろ。」

「うぃすー。」

「乱暴に放り込むなとも言うべきだ、峯住。」

五台来た救護機のうち一台に詰め込まれた軽犯罪者共が運ばれていく。

揺すっても投げても反応がない、屍のような肉体が10人も、家具店の棚に仕舞われていた。

「監視記録の死角にこの棚が?」

「大きすぎて収まりきらなかったようだ。」

「しかし峯住、それでもおかしいだろう。」

「そりゃあ、峯子みたいにやって来た客が棚を見てない訳は無いからな。買う前に中身を見ていても不思議じゃないし。」

「宇由先ぱい、でもこの棚、入荷したの最近っすよ。」

何。

死角になっていたからいつここに来たのかが分かってなかったのだが、どうして分かったんだ?」

「値段の下に書いてあるっす。」

あ、そう。

「見落としてたんすか?」

「別にいいだろ、入荷時期が分かっても何かが変わる訳じゃ」

いや、待てよ。

「峯子、入荷時の検品履歴を調べてくれ。」

「そう思って、ここにあるっすよ。」

「優秀だな峯子補佐官。」

「そうっすか!にひー。」

「お前よりな、牙鳥元補佐官。」

「お前のお守役なんて仕事、対応家には無いからね。」

すぐ手を出すような奴にお守りができるか…。

「宇由先ぱい、これ。」

検品履歴を覗く。

「これは…」

検品履歴が凍結されている。」

「正確には、情報開示水準が異様に高い。が、一般の販売店で、なぜ?」

対応家をはじめとした治安維持の為の機関は、普段は開示されない、つまり一般には知ることの出来ない情報、例えば先の監視記録なんかを捜査の為に閲覧することが出来る。筈なのだが、この家具店の検品履歴は俺たちの見ることが出来る水準をはるかにに上回った機密情報になっている。

「ダメ元で開示要請してみるが…。」

牙鳥、その必要は無さそうだ。」

「しかし、検品したかどうかも分からないものがここにあるのは」

「開示水準が高い、ってことはそこまで水準をあげたやつがいるんだよ。」

峯子が跳ねる。

「見られたくねー情報がある。って事っすね?」

「そういう事だ。つまり、」

「俺と峯住の追っている奴は同じ、か?」

多分な。」

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