表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/113

88 そろそろ帰ろう


「お世話になりました」


 俺達がエルフの街に滞在して3週間。妖精の木も元気を取り戻し、街を隠す幻惑魔法も以前の調子を取り戻した。


「いいや、世話になったのはこちらの方だ。ありがとう、英雄よ」


 ルイスさんとエルフの有力者達が並んで俺達に礼を述べる。


「これは街に来る為に使う鍵だ。エリス達がいなくとも遊びに来れるよう預けておく」


「ありがとうございます」


 エリスさんと同様のネックレス型の鍵を手渡された。これでいつでもケーキを食いに来れるな。


 アリアちゃんとのデートスポットが増えたぞ。来るのに3日もかかるけど。


「ルイスお姉さま。王都にイチゴの輸出をお願いしますね」


「ああ、任せておけ。今年の収穫分から送るよう手配しておこう」


 ちゃっかり頼んでた。さすがお姫様。


 あれが王都に出回ればウケるのは確実。輸入解禁した王家の評判はうなぎのぼり。エルフの街も儲かって一石二鳥だろう。


 ルイスさんとは親戚だし、王家の食卓にデザートとしてエルフイチゴが出るのもそう遠くない未来にありそうだ。


「さぁ、王都に戻るぞ!」


 エリスさんの号令で俺とアリアちゃんは馬車の中へ。


 騎士達も馬に跨って入場門へと向かう。街のエルフ達が見送ってくれる中、窓から手を振って街を後にした。


「大変だったけど来てよかったなぁ」


 エリオス王都も大きくて綺麗だけど、エルフの街のように特色のある地へ来るのも楽しい。


 何よりせっかくの異世界だ。元の世界には無かった事を見聞き出来るのは素晴らしい体験と言える。


 インドア派だった俺もすっかりアウトドア派になってしまった。


「色々な街に出かけてみたいですか?」


「うん。平和になったら旅行を楽しむのも良いね」


 その時は一緒に行こう。なんて言って笑い合う。


 見ろ、俺の人生は充実しているぞ。これがリア充ってやつか。


「まだ平和にはなっていないが、お主の願いは叶いそうだぞ?」


 と、ニヤリと口角を上げたエリスさんが言った。


「魔獣憑きの件でな。魔導国と予てから連絡を取っていたが、ようやく向こうの都合が合いそうだ」


 3代目が残した医療系資料の閲覧と魔獣憑きの変異部分を隠す為に作られた手袋の件で、魔導国側の主導者と話しがついたという。


「じゃあ、次は魔導国に?」


「ああ、そうだ。王都に戻ってから話があるだろう」


「もしかして、教会の件ですか?」


「うむ。各方面、ようやく準備が整ったという事だな」


 戻ったら王様から話を聞かされると言いつつ、俺が考える魔獣憑きを救うプロジェクトが遂に開始されるそうだ。


 これは俺の提案を聞いたうえで王家が進めてくれていた事。ありがたいね。


「3代目が残した資料を閲覧するのも重要だが、あの手袋のような性能を持った魔導具を量産できればと思っている」


 魔導国に出向く上で重要なのは2点。


 英雄の資料を閲覧して病気関連の事を調べつつ、魔獣憑きが『免疫』による作用であると証明する事。


 これは資料だけでは確実性を取れないかもしれない。証明できなくとも取っ掛かりとして何かを得られればとエリスさんは思っているようだ。


 次に手袋型魔導具の開発者と開発についての詳細を得る事。


 御庭番では当初、この魔導具は組織が開発に絡んでいると見ていたようだが実際は違ったようで。


 手袋を開発したのは魔導国の指導者――嘗て召喚陣を作った賢者の系譜である『魔導工学長』と呼ばれる肩書を持った国のトップの孫が作ったそうだ。


 その情報を得たエリオス王は魔導工学長に全てを明かし、その上で協力してほしいと頼んだ。


 先方もトップの孫が組織と繋がっているなどとは思えず、実際に繋がっていない証拠を出して潔白を証明。


 陥れる罠なのでは、と勘繰っているのもあって協力を受けたとエリスさんは言う。


「あの国の長は私の友人でな。あやつと孫が組織と繋がっているとは思えん」


 組織に利用されたかもしれない友人へご機嫌伺いに行くついでに同行する、と本人は言うがきっと心配なのだろう。


「開発者に協力してもらい、異形となった部分を隠す手段があれば保護しやすいだろう。研究すればもっと便利な魔導具になるかもしれん」


 何事も研究と応用。今は変異した体の一部を隠す為の魔導具だが、もっと別の事に使う便利な道具が生まれるかもしれない。


「お主には魔導国への説明と開発者との面接を頼みたい」


 説明といっても、魔導国へ俺が『どうしたい』『どういう取り組みをしたいか』と自分の考えを伝えてくれという事だ。


 俺が言い出した事だし、変えたいと思っている事だから当然だろう。


 開発者とも会って、どうにか魔獣憑きという現象で苦しんでいる人達を救う為に直接協力をお願いしたい。


「という訳で、戻ってからも仕事は山積みだ。他国にも出向くからな。体調は万全にしておくように」


「私も一緒に行きますから、また一緒に頑張りましょうね?」


 魔導国にもアリアちゃんが同行してくれるそうだ。これは心強い。


 俺は彼女の手をぎゅっと握って感謝を伝えた。


「体調の管理はアリアもだぞ? お互い盛って……いや、子が出来たらそれはそれで……」


 エリスさんはブツブツと呟きながら思案を始めた。


 子が出来て後継ぎが出来れば、とか言い出すのはやめよう。まだ早い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ