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3 王族は良い人達


 ケツから出ちまったもんはしょうがない、と気を取り直し、まじまじと剣のフォルムを確認。


 真っ黒な長剣で、柄と刃の間には赤い宝石みたいな玉が装着されている。


 ふむ。なかなかカッコイイじゃないか。剣の色が茶色じゃなくてホントよかった。


「と、とにかく、英雄の武器を顕現させる事が出来たようだな……?」


 さっきまで王妃様に手をかざして「臭くない?」とか聞いていた王様が言う。


 なんで少し疑問系なの? 聖剣が魔剣になったからだろうか?


「なんか聖剣だったのが魔剣になったみたいなんですが……」


「ふむ。だから黒い剣なのか? 先代の英雄は白い剣だったが。英雄の剣が変わるのは初めてだな……」


 王様が顎に手を当てて悩んでいるが俺のせいです。ケツから出たからです。


「尻から出たからじゃ……」


 ボソッと赤絨毯の周りに並んでいた貴族っぽい人達の誰かが呟きを漏らすと「ブフォッ」って数名噴出して下を向いた。


 そうだよな、バレるよな。


 ケツから出たんだもん。


 カッコイイ英雄を望んだのに英雄とは全く正反対のお尻野郎ですいません……。


 俺が俯いて落ち込んでいると、先ほど応援してくれた美少女ちゃんが俺の傍に歩み寄る。


「だ、大丈夫です! お尻から剣が出ても英雄様は英雄様です! お尻から出た剣も強そうです!」


 めっちゃいい子。惚れちゃう。


 彼女の純真な笑顔が眩しい。でも、お尻って何度も強調しないで。


「そ、そうだ。アリアの言う通りだ。ユウキ殿。貴殿が英雄なのは間違いないのだから気にする事はない!」


 王様もめっちゃ良い人。


 でも、さっき魔法使いっぽい杖持った人に「一応、除菌魔法掛けて」とか言ってたの俺はしっかり聞いてるよ。


「ともかく、この後は詳しい事情を話し合おう。皆、今日はこれにて解散だ!」


 王様の言葉を聞いた後、並んでいた騎士や貴族の人達は頭を下げてから謁見の間を出て行った。


「この剣はどうすれば?」


 鞘は最初から無いし、抜き身のまま持つのは危ないよね。


「一度作り出した武器は自在に消せるらしいが」


 王様の言葉通り、剣を見つめて消えろ消えろと唱えると――


「あ! またお尻に魔法陣が!」


 ケツに仕舞うの!?



-----



 結局、剣はケツの魔法陣に仕舞った。


 もちろん長くて1人じゃ不可能だったので王様に手伝ってもらった。


 後から気付いたが、剣を魔法陣にブッ刺してから床へ座るようにすれば1人で仕舞えたんじゃね?


 それはともかく、今は謁見の間から場所を移動して社長室のような豪華な椅子と机、ソファーが設置された王様の執務室の中にいる。


 王様、王妃様、美少女ちゃんがテーブルを挟んで俺の対面のソファーに座り、詳しい状況を説明してくれるようだ。


 王様の執務室のソファーはふかふかでケツに優しい良い物だった。


 作った人は良い仕事をしよる。


「改めて自己紹介をしよう。我はエリオス王国の王である、アルフォンス・ローマン・エリオスだ」


「私はこの人の妻で王妃のアリーシア・ローマン・エリオスよ。よろしくね」


「私は王女のアリア・ローマン・エリオスです。よろしくお願いします。英雄様」


 王様は髭を生やして、若い頃はブイブイ言わせてたであろうイケメン親父だ。誠実で優しそう。


 王妃様はめっちゃ美人。サラサラ金髪のロングヘアーにモデルのようなナイスバディ。


 王女様は王妃様の美人遺伝子と王様のイケメン遺伝子を合わせ持って、産まれるにして産まれた美少女。笑顔が可愛い。天使かよ。いや、間違いなく天使だ。


「地球の日本から来た、原平 勇気です。よろしくお願いします」


 にこやかに自己紹介は終了し、さっそく召喚された経緯などの説明へと話を移した。


「まずは何故、我々の世界に異世界の英雄を召喚しているかだが」


 俺が召喚されたこの世界はアレスと呼ばれる世界。


 今から500年前、アレスには世界()らいという化物が現れて世界を破壊しようとしていた。


 世界喰らいはめちゃめちゃデカイ化物で、自身の体から魔獣と呼ばれる凶暴な獣を生み出す。


 世界喰らいの本体と生み出された魔獣に次々と国を滅ぼされる最中、エリオス王国を含む4大国は高名な賢者と呼ばれる人物と協力して『英雄召喚陣』という魔法陣を作った。


 この英雄召喚陣は一方通行で元の世界には帰れない。


 急造したからか、異世界の人物を強制的にこちらに呼んでしまう物。製作者の賢者も心苦しかったが形振り構っている状態ではなかったという懺悔を手記に残っているらしい。


 そして、4大国と賢者は世界神である女神アレスの力を併せて、異世界から最初の英雄を召喚した。


 初代英雄は4大国の騎士団、アレスに存在する女神の使徒である『幻獣達』と力を合わせて世界喰らい撃退する事に成功した。


 だが、召喚陣を作った賢者は戦いの中で命を落としてしまう。


 初代英雄もエリオス王国に帰還したが戦闘で負った傷によって死亡してしまったと言い伝えられている。

 

 世界喰らいを撃退した後、世界に散らばった魔獣の討伐を続けているが500年経った今も世界喰らいの肉片が残っているようで。


 その肉片が大地を汚染し、汚染された地に近づいた動物が汚染変異して魔獣は生まれ続けているようだ。


 加えて魔獣は繁殖もするらしく、未だ人類は魔獣根絶を目指して奮闘を続けているとの事。

 

 魔獣は非常に強く、個体によっては1匹で街を滅ぼす程の力を持っているので、それらから世界を守る為と汚染された地を浄化する為に異世界の英雄を召喚し続けているそうな。


 世界に跋扈する魔獣は英雄以外にも、騎士団と民間組織であるハンターと呼ばれる人々に狩られて、狩った魔獣の素材を資源として使っているので悪い事だらけではないらしい。


 だが、完全変異した魔獣は強い毒性を持っていて特定の手順を用いて浄化しないと毒に侵食されて死に至る。


 ハンター達や騎士団が英雄抜きに単独で狩っているのは完全変異前の魔獣。そちらは毒性が無いので資源として利用できるそうだ。


 因みに今、俺が座っているソファーの革も魔獣の革だそう。


「なるほど。じゃあ俺は魔獣と戦う為に呼ばれたんですね?」


「うむ。変異前の魔獣は騎士団やハンター達でも討伐可能であるが、稀に完全変異した個体が現れる事がある。それは英雄の力でないと倒せないのだ。まぁ、対策は他にもあるのだが英雄がいなければ完全に倒せないのは事実だ」


 なるほど、と俺は無言で頷く。


 しかし、いきなり魔獣を倒せと言われても無理だ。俺はピチピチの24歳。


 年齢的には体力も全盛期だろうが、元はただのサラリーマン。ここ最近の運動なんて通勤中にある階段の昇り降りだけである。


 喧嘩なんて小学生の時に給食の揚げパンを巡って殴り合いをしたくらいしか記憶にない。当然、ワンパンされて負けたが。


「あれ? 謁見の間でチラっと言っていた先代の英雄がいるのでは? それに、この国の召喚陣で複数人呼べないのですか?」


「異世界から好き勝手に人を呼ばないよう女神様が召喚陣完成と同時に制約を盛り込んだの。英雄召喚陣は1人だけしか呼べないのよ。それに召喚した英雄が亡くならない限り、召喚陣が起動しないの」


「我が国にいた先代の英雄が老衰で亡くなったので、次代の英雄であるユウキ殿を召喚したのだ」

 

 俺の問いに王妃様と王様が答えてくれるが……。


 ということは、現代にいる英雄は俺だけなのか。ケツから武器を出す俺だけなのか。


 なんだろう。すごい申し訳なく感じる。


「そうなんですか……。なんか、すいません……」


 ケツから剣出してごめんなさい。


「いや、先ほども言ったが英雄には変わりない。……どこから武器を出そうともだ。それに、強制的にこちらに呼んだ我々の責任だ」


「そうよ。召喚陣通過による能力の付与は選べない。神から与えられる物だから召喚された本人の意思関係無く付与されてしまうの。だから、ユウキさんは気にしないでね?」


「お父様とお母様の言う通りです!」


 うわぁ、めっちゃ良い人達。めっちゃ良い人すぎて罪悪感ハンパない。


 そう思うと、少し腹が痛くなりそうな予兆を感じる。


 異世界に来ても腹の痛みに悩まされるとは、世知辛い異世界召喚だ。


「ま、まぁ、ともかくだ。ユウキ殿に戦ってもらう可能性もあるが、大体の事は騎士団が片付ける。有事に備えて訓練を行いながら、我が国で暮らして欲しい」


 俺が罪悪感で落ち込んでいると、王様はニコリと笑いかけてくれる。

 

 罪悪感は未だ感じるが、一方通行で帰れないらしいし、元の世界に戻っても俺は死んだ事になっていそうだし。


 俺の両親も既に他界している。友達も……もういない。

 

 腹を下しながら超絶ブラック企業で働く毎日よりは楽しそうだと思えてしまうほどには、元の世界に未練は無かった。


「わかりました。俺に出来るかわかりませんが頑張ります」


「うむ。今日は突然の出来事に気疲れしているだろう。ユウキ殿の部屋を用意しているので、ゆっくり休んでほしい」


「はい。ありがとうございます」


 

-----



 王様達と別れた後、俺はメイドさんに案内されて用意された部屋へ辿り着いた。


 案内してくれたメイドさんは獣人だった。灰色のピンと立った犬っぽい耳とふさふさの尻尾。


 廊下を歩いている時に人間以外の種族をチラホラ見かけたので、異種族と呼ばれるような人種は珍しくないようだ。


「こちらになります」


 メイドさんが開けてくれたドアを潜ると、部屋の中はスイートルームのように広く豪華な部屋だった。


 綺麗な家具に、大きなベッド。ガラス扉の向こうにはバルコニーが。


 そして――


「こ、これは! 俺の便器!」


 そう、俺と共に召喚された便器が部屋の片隅に置かれていた。


 便器に駆け寄って状態を確認すると、掃除をさぼっていた事で汚れていた便器は新品同様に光り輝き、驚きの白さを取り戻していた。


「私物だとお聞きしたので城の者が掃除しておきました」


「そうでしたか。お礼を言っておいて下さい」


 便器をこんなにも大切に扱ってくれるなんて。良い人ばかりだなぁ。


「はい。かしこまりました。便雄さ……英雄様」


 え? 今、なんて?


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