第五話:「月曜日は七海の日
蒼疾「えーと、今回は………」七海「七海です。今回も次回予告をしにきました」蒼疾「あれ?おかしいな……今回は……」七海「次回、フェアリーブレイヴ第六話!『三人と婚前交渉!』」蒼疾「絶対違うだろ……」
第五話:
「月曜日は七海の日」
二年生になって初めての月曜日。担任教師の面倒な話を聞いている間も隣にいる大津地七海の視線を感じる。そんな七海に先生の視線が突き刺さっている。
「……大津地さん、聞いてる?」
「ええ、聞いてますよ、先生。今日から朝の十分間校舎のごみ拾いをするんでしたよね?あ、ちなみにその前は新しくやってきた新入生達を歓迎するための会を作ろうとかいってたんでしたっけ?」
「………」
先生は固まって一つだけせきをする。そして、七海はもう用事は終わったとばかりに俺の横顔を眺めていた。
「……こほん、えっと………あ〜もうっ!内容忘れちゃったじゃない!後で報告するからね!解散!」
教室中がざわざわとなり始めて先生はこちらをなんだか睨みつけるような感じで出て行った。
「……七海、なんだかさっきからずっと見てない?」
「それはまぁ、婚約者ですから」
答えになっていないことをいってにこりと笑い………そういった言葉は他人に対しては(主に男子)降り注ぐ銃弾となってその体を貫いていった。
「おい、今の聞いたか?」
「婚約者って聞こえたわね?」
「本当か?」
俺の背中にヤヴァイ汗が流れ始める。
少し話しが変わるようだが聞いて欲しい………あるとき校長先生が剣道部の不始末を知るやいなや素晴らしい校長先生は竹刀を持って剣道部全員粛清を敢行したのである。生徒に対しては無期限の部活動禁止(剣道部は存続)を命じて顧問は次の日から行方不明となった。新聞にも取り上げられたのだがあれから約半年………校長先生がどれだけ恐ろしいのかさっぱり想像がつかない。
「校長先生に連絡だ!」
誰かがそういったので俺はそいつにドロップキックを喰らわせる。なぁに、そのくらいでひとは死にはしない。
「こほん、良識あるクラスメート皆に聞いてもらいたい」
殆どが持ち上がりなため、三分の二が知り合いである。静かになったところで俺は教壇から言い放った。
「俺はまだ死にたくない!」
おおっ!という声が聞こえてくる。よし、ここで一押しを………
「というわけでミザルキカザルイワザルでよろしく頼んだ!」
頭を下げる。ここまでしておけば俺の保身は完璧だ。
そんな俺のことを可哀想だと思ったのか一人の男子生徒が肩に手を置いていった。
「……わかったよ、パシリ一号」
「は?」
頭を上げた俺に当然だといわんばかりの瞳の色を見せる。
「そりゃ、ばれたら切断だからな………気持ちはわかる」
「せ、切断?」
別の男子生徒が首をすくめる。
「というわけで、黙っておいてやるからみんなのパシリな?」
「ええ!?」
「おいおい、切断は免れるんだぜ?」
まるで王手飛車取りみたいな顔をしているクラスメートA………その面に一撃ぶちかましたい気がしたのだが、そんなことをしたら切断である。
「ちょっと待ってください!」
「うおっ?」
教壇を叩いて七海がクラスメートをじろりと見た。それだけでいつもの彼女からは想像できない雰囲気が出てきて大抵のクラスメートが黙り込んだ。
「パシリとか、いけません!私が許しませんよ!」
そういって先ほどまで俺をパシリにしようとしていたクラスメートが愛想笑いを浮かべる。
「え?や、やだなぁ……冗談だよ、冗談」
そういって引っ込んでいった。
クラスメートを眼力だけで退けた伝説を持つようになった大津地七海は俺のほうを見た。
「さ、次の授業は生物室でありますから一緒に行きましょう?」
「え?あ、ああ………」
腕を引っ張られながら廊下を歩く。廊下を歩いている人たちはそんな二人組をみながらひそひそと話していた。
「ちょ、ちょっと!」
「どうしたんですか?」
不思議そうに立ち止まる七海に腕をつかんで歩くことをやめさせようとおもったのだが……
き〜んこ〜んか〜んこ〜ん
「あ、予鈴が………」
「やべっ!急ぐよ、七海!」
俺は急いで七海の手をとって駆け出したのだった。
―――――
「はぁ、疲れたなぁ………」
屋上の転落防止用フェンスに背中を預けて蒼空を眺める………ああ、空はこんなに青いのに何で俺の心は真っ暗闇のどしゃぶりなのだ?
「さ、あ〜ん♪」
「………あ〜ん」
病人じゃないんだから自分で食べれるのだが悲しいことに箸が一膳しかなかった。お弁当は七海が作ってくれたのだが、まさかこんな罠が待ち受けているとは全然思っていなかった。
「どうです?」
「……おいしいけどさ、恥ずかしいんだけど?」
「そうですか?」
そういってあたりを見渡す七海。
「でも、私たち以外の人たちもやってますよ?」
そこらじゅう、カップル達がひしめき合って一つのお弁当をつついていた。カップル以外の連中がこの甘ったるい空間にいるわけではないので……というか、いたとしてもかなりいづらい雰囲気があるだろう。俺だったら退散している。このラヴ・フィールドに耐えられるのは自らそのラヴ・フィールドを形成できる者達だけなのだ!
「……いや、いちゃいちゃフィールドでも一緒か」
「何いってるんですか?」
「いや、何も………ところでさ」
ふと、思ったことを口に出してみる。
「十年ぐらい前だっけ?俺が七海に会ったのは」
少しの間、考えるようにして七海はいった。
「……そうですね、あの頃………蒼疾さんはとても引っ込み思案な人だったと思います」
蒼空を眺めており、当然俺もそれを追うようにして蒼空を眺めてみる……だが、俺が見ている蒼空は七海が見ているような蒼空とは違うものなのだろう。どこまでも続いていく蒼空、雲………何の変哲もないそんな蒼空だって見る人によっていろんなものに変わってしまうのだ。
「………けど、私は今の……その、蒼疾さんが好きですから」
「え?」
少し強めの風が吹いて聞こえなかった………なんていいわけはしないが、唐突過ぎて驚いていた。当然だな。
「……去年は一度も話しかける勇気なんてありませんでしたから」
「?」
首を傾げる俺を見て七海は笑って言ったのだった。
「さ、そろそろ戻りますか?」
「………そうだな」
ま、いいか。どうせ来週のこの時間も一緒に飯食ってるだろうから。
ぞろぞろと仲良さそうに帰っていくカップルの後ろを俺たちは二人で一緒についていったのだった。
――――――
「ただいま」
「ただいま戻りました」
俺は靴を脱いで廊下へと足をつけ、七海はスカートを脱いで………
「ちょっと待て、何でスカート脱いでるんだよ?」
「えっと、その、帰ったすぐにするのが……礼儀かと」
「違います、というか、何をするんだよ?」
俺は七海のスカートを握って七海にはかせる。
「おかえり〜さきかえってたわよ……七海先輩、どうやら一日じゃ駄目だった見たいですねぇ?」
「むっ……」
七海と奈々枝がにらみ合っている。ああ、そうか、そういえば………
「おかえり、お兄ちゃん」
「ただいまかえりました、菜々子先輩」
この三人がこの家に住むということをまだ話していなかったと思われる。