第八話:「星付くさんのお宅ですね」
七海「世界は地軸を中心に回っています………気がつけばもう私一人しか残っていない状況に!」
第八話
「初めに訪問するのは星付さんの家ですね」
メモ帳を片手に持ちながら蒼疾は目の前に聳え立つ巨大な家を首をかなり傾けて眺めていたのだった。
「大きいですね、これが高校の校長が住む家だからでしょうか?」
星付睦………彼女の祖父は一朝一夕学校、つまり天川蒼疾が教師として教鞭を振るっている高校の校長先生である。
「これは粗相がないようにしておかなければ私の首などあっさりと飛びかねませんね」
恐る恐るインターホンを押す。しばしの間静寂が辺りを包み込んで庭に植えられている桜の木から鳥のさえずる声などが聞こえてきていた。
『はい、どなたでしょうか』
「私、一朝一夕学校の教師天川蒼疾です。星付睦さんの家庭訪問としてやってきました」
『少々お待ちくださいませ』
そして再びの静寂。遠くのほうからは夕方なのだが早速暴走族と警察がチェイスを始めたらしい……とまりなさいとかそういった放送が流れ始める。
『あの、天川先生、睦様はこちらに住んではいませんが?』
「そうなのですか?」
あれ、おかしいなとメモ帳を見る。住所はここであっているはずなのだ。
『ええ、睦様は学校の近くにあるアパートでお一人で暮らしになっています』
「そうですか、ありがとうございます……」
ひとつため息をついて蒼疾は踵を返したのだった。
――――――
「星付さん、星付睦さん」
かなりぼろっちいアパートの一室にたって蒼疾は扉をたたいていた。インターホンがなく、隣の部屋は扉が壊れていて中の部屋が確認できる。
「はいはい、あ、先生じゃんか」
「住所が間違っていましたよ」
それを指摘するとたははと笑う。
「そっかぁ、だから先生来るの遅かったのかぁ…せっかくケーキとか用意してたんだけど全部食べちゃったよ」
「別にそれはかまいません……それで、ご両親とかは?」
「あいにく二人とも出張中。帰ってくるのはいつになるかわからないよ」
「それはしょうがないですね…では、二者面談ということで」
中に案内されて蒼疾は静かに中へとはいり……
「これは、一体全体なんですか?」
「ゲームだよ。そこのダンボールの中に入っているのがネオ○オ、そっちがドリーム○ャストであれがワンダー○ワンだよ♪」
「いえ、それはどうでもいいことなので……」
リビングの床はほとんどがゲームに埋められていて本棚とかにはすべてゲームのソフトが占領していた。
テレビ三台には最新機種がそれぞれ接続されておりオンラインでも使用できるようになっているらしい。
「先生もスーフ○ミする?」
そういって2Pのところにコントローラーを接続。
「いえ、私は格ゲーなどは結構です。それに、ハメ技するきまんまんでしょう?」
「あ、わかった?」
「そのタイトルを見れば大体わかりますから……さて、今日は遊びに来たわけではありませんよ」
「え?違うの?」
さも当然とばかりに今度は別のゲーム機を取り出していた。
「違います、家庭訪問ですよ」
「あ、そうだった…」
「これで成績が三番目というのが理解できませんね……」
「睦ね、大きくなったらゲーム会社の社長になるんだ!」
目をきらきらとかがやせながらそんなことを言う。
「そうですか、それはいいことですが……」
「それでね、他人をあごで使わせてせっせとゲームをつくってもらってバグチェッカーとかやるんだ♪」
夢を勝手にしゃべり始めるが、それをまじめに蒼疾はメモしているのだった。
「ふむふむ、それはすばらしい夢ですね……」
「あ、もちろん先生にもやらせてあげるから期待しておいてね」
「残念ながら先生の家にはゲーム機が置かれていないのでどのソフトをあなたが作ったとしても私は出来ませんよ」
「それじゃ、睦がどれかあげようか?」
最新機種をそれぞれ指差していたりする。
「何を言うんですか他人にこのような高価なものをほいほいとあげてはいけませんよ」
「でも、先生は他人じゃないよ。それに、まだ予備はあるから」
厳重に鍵がかけられている隣の部屋を指差す。
「さすがに先生にもあそこには入らせてあげないよ
「……結構です」
その後も少しの間いろいろと会話を交わし、蒼疾は立ち上がる。
「では、これで失礼します」
「もうかえるの?」
「ええ、あまり長居をしていても迷惑ですし、この後も別の生徒の家に行かなくてはいけませんから」
「そっかぁ、それじゃしょうがないね」
「ええ、仕方がありません……それでは」
立ち上がって転がっているソフトのパッケージを踏まないようにして家を後にする。
「またきてね〜」
「……はたして意図してここに来る女子高生とかいるんでしょうか……」
手を振る星付睦に手を一度だけ振って去ったのだった。




