第五話:「扉<人」
七海「さてさて、あれから感想なんて一切ありませんでしたが」奈々恵「そりゃそうよ。考えが甘い」七海「敢えて逆を目指します」菜々子「逆?」七海「そうです!これから先一切評価されないままでこの物語どこまで突き進めるのか!実に見所あると思いませんか?」奈々恵「それってただ単にこの小説がいかにしょぼいか体現してるだけじゃない?」七海「いえ、それは違います。自主規制の○をいれるか入れないかの違いが生じると思われます」菜々子「じゃあさ、途中評価されたらどうするの?」七海「それは……」奈々恵「もちろん、七海が責任とってここからいなくなるということで」七海「ええっ!?」奈々恵「そりゃそうでしょ?さぁ、開始!」
第五話
天川蒼疾は一朝一夕学校の教師である。ひねくれたような性格だがその性格が出ているところはいまだにHRのときだけ。授業中はまじめであって勉強が出来る生徒、出来ない生徒から尊敬のまなざしを一身に受けている。
そんな天川蒼疾は職員室でも比較的普通というか先生たちの評価はよかった。
「先生、今日もまた居残りですか?」
教師歴二週間大久保孝子(教科は生物)は白衣の状態で話しかける。
「ええ、大久保先生は帰るんですか」
「はい、お先に」
「最近は物騒ですから気をつけてくださいね」
「ご忠告ありがとうございます」
そういって大久保孝子は職員室を出て行ったのだった。後に残っているのは蒼疾だけだ。
「そろそろ帰りますか……」
立ち上がろうとして職員室の扉のところに自分のクラスの生徒がいることに気がつく。
「おや、あなたは……」
いまだに全員の名前と顔が一致していない蒼疾は一生懸命書類をめくっているが、そんなことすでにクラス中では周知のことなので相手は自己紹介を始める。三日ほど蒼疾と話していないと本気で顔と名前を間違えてしまうので蒼疾に対して三日以上話したことのない生徒は一応のところいなかった。
「石井舞です、先生はもう帰るところですか?」
「そういう石井さんは?」
一生懸命ノートになにやら書き込みながら蒼疾はたずねる。
「私ですか?私はちょっとまだ用事があります」
帰らないということなのだろうととって蒼疾は帰り支度をやめる。生徒より先に帰るのは嫌いというか、徹底して生徒よりは絶対に早く帰らないという主義者なのである。
「相談ならのりますよ?一応あなたたちのクラスの副担任ですから」
それだけ言って近くの先生の椅子を適当に持ってきて進める。
「いえ、実は音楽室の扉がしまってしまって……」
「ギャグですか?」
「え?」
「いえ、いいですから続きを」
コーヒーを口に運びながら石井舞にもついで来たコーヒーを渡す。
「どうも……ゆっくりしている場合じゃないんですけど」
「それなら簡潔に話をまとめてください。先生も暇ではありませんから」
ずずーっとコーヒーを飲み干してから顔をしかめる。どうやら苦かったらしい。
「えっと、友達が音楽室に閉じ込められてしまったんです」
「それはまた……いじめですか?」
「違います」
「学校の七不思議?」
「それも違います……多分」
「それなら……」
まだ何か続けようとしている蒼疾よりも先に話を続ける。
「ちょうど私が出ようとしたら扉がしまって、それ以降びくともしないんです。一応、中にいる友達とは話は出来るんですけど……」
そういうと蒼疾は驚いたようにコーヒーを飲んでいる石井舞を鼻で笑っていた。
「ほぉ、それなら石井さんは余裕をもってご友人を助けに行こうとしているのですね?コーヒーを飲む時間はあると?」
「……あの、これは先生が……」
「飲むか飲まないかはあなたの自由意志ですから……」
それだけ言うと蒼疾は立ち上がる。石井舞はばつが悪そうな顔をしていた。
「さぁ、ご友人を助けに行きますよ、そこにある鍵をとってください」
「わかりました」
石井舞が鍵に手を出している間、何かを思い出したかのように蒼疾は口を開き始めた。
「ああ、そういえば音楽室は携帯で助けを求めようにもなぜか圏外になりますし、ご友人お一人ですか、閉じ込められているのは」
石井舞がうなずくのを確認して面白そうに笑う。石井舞は不思議そうな顔をしていた。
「それはそれは……音楽室はそろそろ電灯を変えないといけないという時期でしたからねぇ…一人でしたら心細い上に窓から叫ぼうにもあちら側には誰も通りませんから」
「……」
徐々に悪いことをしているような感じを覚える石井舞が走り出す。
「ご友人を心配してのことですか……輝かしい友人愛ですね」
何度かうなずいて蒼疾も石井舞の後を追って走り出したのだった。
―――――――
「それで、ご友人はまだ中に?」
「はい」
「やっと助けがきたぁ…」
そんな声が聞こえてきたが、蒼疾は無視して扉に手をかける。
「おや、本当に開きませんね」
「でしょう?」
「もう、いっそのこと何も聞かなかった、聞こえなかったということで帰りますか」
「そ、そんなぁ!」
そんな声が聞こえてきて蒼疾は近くにあった机を持ってくる。
「これは完全に扉が固定されていますね……中にいる人が誰かは知りませんが……」
「ひどいですね!これでも先生が受け持っているクラスの生徒です」
「声では何とでも言えます。オレオレ〜とかそれに準ずる何かで大金をせしめる連中もいますから……とりあえず、危ないのでどいていてください」
「先生何を……」
「このことは校長に秘密ですよ」
それだけ言うと蒼疾は扉に机をぶつける。ものすごい音がしたがほかに生徒はおらず、すでにほとんどの生徒たちが帰っている時間帯だった。
――――――
五分ほどで学校破壊は終了し、扉が中に倒れこむ。
「……さて、大丈夫ですか?」
「え、ええ……天川先生って意外とすごいことするんですね」
唖然とした調子で中にいた生徒、芹沢東葭が顔を出す。蒼疾の足元にはまるで戦争後の家の扉が転がっていた。
「別にすごくはないですよ、人命がかかっていましたから」
「人命って大げさな……」
「いえ、現実に似たような話を校長先生から聞いたことがあります。十年ぐらい前に行方不明になったまま見つからない子がいると……だから、そのようなことがあったら大変だったので急いで助けてあげました……この学校の六不思議のひとつです」
「「……」」
石井舞と芹沢東葭は固まって蒼疾を見ていた。この先生がうそをつかないというのはわかっているが、校長先生がうそをついている可能性もあるからなぁと石井舞がつぶやく。
「とにかく、職員室に行きましょう。ここにいたら犯人だと思われてしまいます」
「実際、そうなんですけどね」
「わかりました」
こうして、学校破壊を行って(ちゃっかり手袋を着用していた)さらっと職員室へと三人は向かったのだった。
「ところで、あそこで何をしていたんですか?」
「え、えっと、それは……」
言いにくそうにそれだけ言って蒼疾はうなずいてノートに何かを書き始める。
「なるほど、お二人がそういった関係でしたか……それは言いづらいですね」
「そ、そういった関係って何ですか!」
「いえ、気にしないでください。先生はこう見えても口が固いほうですから」
「……」
さぁ、もう帰ってくださいとそれだけ言って二人の生徒を職員室から出す。
「やれやれ、今日は私も早めに帰ったほうがよさそうですね」
なにやら音楽室のほうから誰かが歩いてくるような音が聞こえてきて急いで身支度を終える。すでに歩く音は消えていた。廊下を一度出てみるが蒼疾は足を止める。
「……ふむ、下足箱のほうに先回りされている可能性もありますね……」
言うが早いか蒼疾は職員室の電気を消して窓から外に脱出したのだった。
後書きまでやってきてくれた方々、ありがとうございます。実はここまで読んでくれた人に尋ねたいのですが、『ヴァンパイアはヴァンパイアであることが罪であり誇りである』という言葉を知っている人がいたらお手数ですが雨月までメッセージをお願いします。あ、もちろん小説の感想とかでもよろしいので待ってます!