第四話:「担任は……(後編)」
七海「さて、ここで問題です!今作者が欲しいものはなんでしょうか?」奈々恵「金?」七海「黒すぎます!」菜々子「わかった!社会的地位!」七海「それも黒いです!答えは……後書きで!」
第四話
授業を終えるチャイムが鳴り、榎本小夜は目を覚ました。
「あれ?」
「お目覚めですか?ちなみに今は三時間目の始まりです」
気がつけば病院の一室みたいにたくさんあった九つのベッド……無論、榎本小夜が眠っていたベッドも含める……すべてが埋まっていた。
「これって……」
「比較的精神面が弱い人はこうなります」
なぜだか白衣を着ている蒼疾が榎本小夜へと降りるように促す。
「これで本当かどうかわかりましたか?」
「え、ええ……」
う〜ん、こわいよ〜とか戦場の救護テントを思わせる言葉も飛び交っていた。
「あとあの先生が今日受け持つ授業は私たちのクラスだけですし、二年三組はなんとか大丈夫でしょう。予想範囲内で被害者は収まりそうです」
いまだに信じられないなぁと思いながらもソファーへと移動。ソファーに寝ていたほかの生徒がベッドへと蒼疾に運ばれていった。
「……じゃ、五時間目終了まで暇なので先生に自己紹介をお願いできますか?」
「え?自己紹介ですか?」
「ええ、先生は残念ながらいまだに生徒たちの大半を知りませんから」
教師としてそれでいいのかと思われるかもしれないが一応それで教師としてやっていけているのでいいのだろう。
「えっと、榎本小夜です。好きなものは怖い話で苦手なものは日光です」
「怖い話ですか……残念ながら先生は怖い話は大嫌いですので遠慮してほしいですね」
「そうなんですか?」
意外そうにそういってにこっと榎本小夜はするのだった。
「かわいいですね」
「かわいい、ではないと思います。表現がおかしいです」
「そうですか?」
そんな他愛もない話で時間は過ぎていったのだった。
―――――――
「久しぶりですね、皆さん……どうでしたか、あなたたちの担任は?」
人を小ばかにしたような目線をクラス全員に向ける。
「……先生、私たちが間違っていました」
篠原岬など疲労困憊というか、嫌悪感丸出しの生徒が殆どで、榎本小夜ともう一人は普通の表情だった。
「おや、足利さんは大丈夫だったようですね?」
「はい、ちょっと怖かったので図書館に行ってサボってきました」
「生徒の見本としてはいけませんが、私からの見解ですと賢い判断です……ん?」
それだけ言ってから蒼疾は黒板に何かを書き始める。
「先生、それは何ですか?」
「……そういった質問は先生がすべてを書き終えてから言ってください……はい、読んで」
そこには『はい、ではこれからこのように筆談で会話しますから。盗聴されている恐れ大なので……わかりましたか?』
生徒たちはぎょっとしながら無言でうなずいた。それを確認してから蒼疾は続きの文を空いているスペースに書き込む。
『クラス全員でこれから盗聴器を探します。見つけた人は音をたてずに持ってきてください。わかりましたか?』
全員がうなずいてから各自急いで探し始める……
そして、十分後、足利伊万里が比較的中央の生徒の椅子の裏から盗聴器を蒼疾の元へと持ってくる。
「……」
それを無言でとって足でつぶす。
そして、再び黒板へと文字を走らせる。
『はい、今のは予備として考えられますので探し続けてください………担任が教室のどこにいどうしていたかわかる人たちは心当たりがありそうな場所を探してください』
再び探しはじめ、次は比較的早く発見された。
教壇の裏につけられていたのだ。
「……」
それも無言で破壊し生徒たちに手で座るように指示をする。
「はい、ではまたあの先生が来てほしいなと思う人は手を挙げて」
「……」
誰一人として手を上げなかった。
「ああ、これって意外と生徒たちのお仕置きにも使えるかもしれませんねぇ…いえ、これはあくまでお仕置きですので泣こうとしなくて結構です」
それだけ言って蒼疾はため息をついた。
「はぁ、まぁ、一時間ほどお風呂で丁寧に身体を洗えば忘れることが出来ます。普段からお風呂に入っていない人は今日は入ったほうがいいですよ」
「いつも入っています」
「そうですか、それなら結構です……ああ、それと榎本さん」
「はい?」
首をかしげる榎本小夜に蒼疾はいつもの調子で言ったのだった。
「あなたは制服をきちんと洗ってください。非常ににおいが染み付いてしまっているでしょうから」
「ええっと?どういう……」
そこまで言ってふと、とまる。ああ、先生が少しだけ寝ていた場所に寝たから先生のにおいがうつったと思ったのかなぁとそんなことを榎本小夜は思ったのだった。
「大丈夫です、気にしてませんから」
「そうですか、先生は薬品のにおいは駄目ですから白衣を着てましたけどね」
そっちか!と心の中で突っ込んでおく。ほかの生徒は納得していた。
「先生としては非常に残念なことで、皆さんには喜んでほしいのですが、明日から担任がきちんと来るといっていて非常に美少女がこのクラスに揃っていてうれしいとおっしゃられていました」
「………」
クラス全員の顔が引きつる。
「……急ですが、先生は旅立とうかなと思います。たぶん、今度帰ってくるのは本年度が終了してからだろうと予想されます」
「え!?」
逃げる気だと一瞬で理解し、野次が飛ぶ。
「逃げないでください!」
「それでもあなたはこのクラスの副担任ですか!」
そこまで言われて仕方がないといった調子でため息をついた。
「しょうがないですね、それならまた病院にいてもらいますか」
「病院?」
「ええ、実は担任の先生はこれまで奥さんに病院送りにされていたんですよ」
どんな恐ろしい奥さんだ!と誰かが突っ込もうとしたのだろうが、誰も突っ込まなかった。なぜならその恐ろしい奥さんによってこのクラスの平和は保たれるに違いないだろうからだ。
「また、今日のことを担任の奥さんに伝えておきます。残念ですね、せっかく担任がやる気を出していらしたのに」
「いえ、先生のほうがまだ断然ましです」
「そうですかそれならいたし方ありませんね」
携帯を取り出してダイヤルを開始。
――――――
「はい、では明日も元気に会いましょう。さようなら」
遠くのほうで救急車のサイレンが鳴り響いているが誰一人として騒ぐことなく放課後となった。
「ああ、最後に言い忘れていましたが携帯電話を使用しなかったことを先生はほめたいと思います。すごいですよ、皆さん」
それだけ残して蒼疾は消えた。しかし、クラスはしーんとなっていた。このクラスの実に九割が助けを求めて電話をしていたのだが蒼疾は教壇に携帯電話を置いていたのだった。
答えは感想DEATH。いいじゃないですか、栗林だって緑色の龍に頼んでパンツもらったんだし……卑屈になってすみませんでした!