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第三話:「担任は……(前編)」

七海「めっきり私たちの出番ってなくなっちゃいましたね」奈々枝「まぁ、しょうがないんじゃない?といいたいけど、予定じゃ一切登場しないで終わりまで突き進むそうよ」菜々子「え?それ本当!?」七海「非常に危険な臭いがぴんぴんしますね!」菜々子「まぁ、待っておけばきっと出させてもらえるよ!」奈々枝「本当かしら?」

第三話

「先生!そういえば担任はどうしているんですか?」

 何気ないその会話が問題だったのだろう………一週間ほどたって篠原岬いわく変な(精神的に異常がありそうな)先生である天川蒼疾との付き合いもわかってきていたための油断だったに違いない。

 生徒たちに対して連絡をしている途中だった蒼疾が無表情になった。

「……担任、ですか?わかりました、そこまで先生のことが嫌いだというのなら言ってくれればいいものを……」

「そ、そこまで言ってませんけど、先生?」

 ほかの生徒を代表して足利伊万里が告げる。

「いえ、いいでしょう……つれてきますが、クレームなしでお願いしますよ?先生に対してクレームをつけれるのはPTAぐらいですから」

 話は変わるが、ほかのクラスでは非常に人気の先生であり、大体の女子が蒼疾に対してかっこいいとか尊敬できる先生だとか言っているし、先生の受け持ちのクラスでうらやましいとか蒼疾のクラスは言われていたのだった。まぁ、クラスメートとしては授業は認めるがいまだにひねくれた性格である蒼疾がとりあえずいい先生ではあるが人としていいかどうかはわからなかったという意見が主流である……一部を除くが。

 携帯電話を取り出してどこかにかけ始める。それを見て生徒たちが唖然としているがもちろんそんなことは気にしていなかった。

「ああ、ええ、はい。生徒たちがどうしても、どうしても来てほしいと……私としては先生の出る幕じゃないと思っていたんですが……はい、そこをどうしてもと……ええ!そうですか!来てくださいますか!ありがとうございます」

 声はかなり弾んでいるようだったが顔色はすごく悪かった。グロい映像や画像を見た後、某アーティストが歌っているときの表情みたいな顔をしている。

「はい、では午後からの授業の国語、よろしくお願いしますね」

 電話を切って生徒たちへと視線を向ける。

「……え〜、あのような魔王を光臨させたことを後悔してください。先生の心に傷を残したことを後悔してください」

 魔王?と誰かがつぶやいたが蒼疾はそれを無視する。

「先生が呼んだのでは?」

 篠原岬がそうつぶやく。

「発端を作ったのはあなた方ですから……先生は一生懸命今日まで努力してきましたがどうやら無駄だったようですね……精神的なケアは後ほど行ってあげますから、一応、緊急時として先生の携帯電話の番号を教えておきます。携帯を持っている生徒たちはすぐに書き記して置いてください。はっきり言いますがそれでも先生がどうにかして上げれるとか甘い考えはしないでください。教師たるものが助けることが出来る範囲は妖怪に教われた時とか、不良に教え子がやられてるときとかそのぐらいです」

 それはメディアでしょうと誰かがつぶやくがそれも無視。

 番号の書かれた紙を渡していき、生徒はそれをすべて書き写していた。すでに、蒼疾の肌は青白くなっていて気分が悪そうだった。

「……ああ、それと……」

 生徒をざっと見下ろして一人に目をつける。

「あなたは確か榎本小夜さんでしたよね?」

「え、ええ」

 顔色が悪く、体育の授業もよく休んでいるような生徒だった。目をつけた蒼疾の瞳がきらりと光る。

「あなたが一番危険ですので、出来れば今すぐ、それが無理なら四時間目までに保健室に来てくれませんか?」

「な、何ででしょうか?」

「それがあなたのためだからです」

 理由を言わずにため息だけをつく。うそは言わない先生なので小夜以外の生徒たちはあの先生を脅かす教師の顔が見たいと思っていた。希望をもっているということなのかもしれない。小夜はどうするべきか悩んでいる。

「ああ、先に言っておきますが好奇心で人は滅べますからね?パンドラは箱を開けて後悔してますから。まぁ、セクハラは警察に、それ以上だと感じたならば自衛隊、または地球防衛軍を呼んでください……」

 そこまで言った蒼疾の携帯がなり始める。びくっと蒼疾はしながら携帯を手に持ったのだった。

「……はいはい、あ、え?今学校に向かっています?はぁ、わかりました、え?榎本小夜?え、えっと……」

 ちらりとだけ榎本小夜のほうへ視線を向け、彼女はびくついた感じで蒼疾を見た。

「いえ、彼女は今日は欠席です……ああ、それと、具合が悪いので私は保健室で休んでおきますので……はい、はい、お願いしますね」

 失神寸前みたいな表情となっていてかなり具合がわるそうだった。

「榎本さん、選択の余地は先生の視点からはありませんが、ここにいますか?」

 よろよろとなったところで足利伊万里が席を放れて蒼疾を支える。

「だ、大丈夫ですか、先生?」

「……いえ、大丈夫ではありません……悪いですが、保健室までお願いできますか?」

「わかりました」

「では、榎本さん、あなたはここに残るんですね?」

 蒼疾の目は死ぬのがわかって巨大隕石にぶつかっていく人を見ているようなものだった。

「い、いえ!私も具合が悪いので保健室で休みます!」

 あわてて榎本小夜は蒼疾の元へとやってくるがそんな榎本小夜を止めて、かばんまで持ってくるように告げる。

「……いいですか、皆さん……彼女は欠席しているという事でお願いしますよ」

「はぁ、わかりました」

 居残り組みとなった篠原岬が鷹揚にうなずいたのだった。

―――――――

「先生、何で榎本さんを保健室に連れてきたんですか?」

 保健室の先生があくびをしながらなにやら書類へ書き込んでいく。

「おや、足利さんがそのようなことを聞くのですか?先生の話、聞いていませんでしたか?」

「聞いてましたよ」

「では、話の途中でセクハラがあったら警察という部分もあったでしょう?」

「ええ、ありました」

 そこで榎本小夜へと視線を向ける。彼女は青白い肌をびくっとして驚かせていた。

「実は、先ほどお呼びになった先生は肌が白い生徒などが大好きでですね…」

「まさか、セクハラを!?」

 それに対して首を振る。

「いいえ、彼は見ているだけですが……それより、保健の横島先生、今日は生徒が増えますよ」

「…………わかりました」

 それだけ言って再び黙りこくった横島。書類を書いていると思われたがどうやら漫画、何かの同人誌を書いている途中らしい。すでに終わりが近いらしく『fin』という文字まで書こうとしていた。

「そろそろわれわれのクラスの担任がどこかのクラスの国語を担当しているころでしょう」

 ああ、おぞましい餌食になった生徒さんにも心のケアが必要ですね……といった調子で蒼疾はため息をついていた。

「では、足利さん……あなたは健康体なので授業に戻った方がいいかと思います。あなたのような成績優秀者がいなかったらほかの先生も悲しむでしょうから」

「そうですかね?」

 照れたようなしぐさを見せ、頭をかいている足利に蝶の吐息みたいなため息をつく。

「ええ、そうです……しかし、五時間目にある国語の時間帯、危険を感じたら急いで保健室シェルターに来たほうがいいかと思います」

「はぁ、わかりました……保健室ってシェルターって読めるんですか?」

「さぁ?それは人それぞれです」

「そうなんですか……じゃ、行ってきます」

 それだけ言って足利伊万里は保健室を出て行ったのだった。

「逝ってきますにならなければいいんですが……」

「あの、先生、私が担任教師の好みだからって別に大丈夫ではないんですか?別に身体を触られるとかそういったことはないんですよね?」

 欠席として扱われることになんだか憤りを感じながら榎本小夜はベッドに寝転がっている蒼疾へと質問をぶつけた。

「ええ、まぁ、たいていの人はそう思うはずですが……タネをばらすとですね……」

 近づいてひそひそと耳打ちする。

「そんな馬鹿な……」

「……事実です、信じなければ結構ですが一応先生のクラスの生徒ですから情けで助けてあげることにしました」

「……そんな小説とか漫画とかでしかないような設定が存在するんですか!?」

 釈然としない気持ちの榎本へと続けて蒼疾はいった。

「まぁ、それはおいておくとして……せっかくだから寝ませんか?」

「え?」

「保健室ですし、今日は静かです」

「……」

 榎本小夜が周囲を見てみると横島は姿を消していて机の上には『薬補充のため不在』と書かれている紙がのせられていた。どうやら先ほどの同人誌をどこかへ持っていったようだ。

「わ、わかりました」

 そういって榎本小夜はかばんを床において蒼疾と同じベッドにのる。

「おや、こちらがよかったのですか?ああ、もしかしてよく来るから指定席になっているのですか……これはすみませんでした」

「え?」

「では、先生はこちらのベッドで寝ますから……おやすみなさい」

「……」

 蒼疾は隣のベッドにのってすぐに眠ってしまった。

「………」

 なんだか間違っていた自分が恥ずかしかった榎本小夜はまるで不貞寝するかのようにこれまで蒼疾が寝転がっていた場所で眠りに落ちたのだった。


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