第十一話:「お嬢様は好きですか?
蒼疾「はぁ………なんだか最近以上に増加してないか?」ナナスティア「なにがっすか?あ、苦労っすね?」蒼疾「そうそう。かなり増えたんだけど?」ナナスティア「大丈夫っす!そんなときのためにはうちがいるっすから」蒼疾「だから苦労が増えるんだろうな………次回、フェアリーブレイヴ第十二話『たまには番外編を!』」
第十一話:
「お嬢様は好きですか?」
誘拐された俺はまっくらな工場の一室の縄につるされていた。誘拐してきたあのナナスフィアは今では姿を見せていないし少したってから隣で音がしていた。どうにも、もう一人誰かいるらしい。
ぱっと、電気がついた。
「よぉ、お二人さん……居心地はどうだい?」
ストッキングをかぶった悪者が俺へとそう聞いてくる。
「お二人さん?」
「隣を見てみろ、坊主」
「……?」
隣には俺が通っている高校の近くにあるお嬢様学校の制服を着た一人の女子生徒がつるされいた。その顔はナナスティアの眉毛をもう少し吊り上げて若干釣り目にし、右ほほに傷があった。
「そっちお譲ちゃん縄の具合はどうだい?」
「ふんっ!わたくしに話しかけないでくれる?虫唾が走るから」
こんな状況でもかなり高飛車……その少女の後ろのロッカーからは先ほどのセクシー衣装が見えていたりする。
ストッキング男は首をすくめて口を開いた。
「まぁ、ナナスティアがやられるその姿をその目で見ておくんだな………」
そういって扉から出て行ってしまった。あえて聞こう!この部屋は締め切られていて窓すらないと!
「はぁ……なんでわたくしがこんな目に……」
いや、あんたが俺を誘拐したんだろうがといいたいところだったがいわないほうがいいのだろうか?
「ん?そういえばあなた……先ほどからあったことがあると思っていましたが……もしかして天川蒼疾様?」
「え?ああ……」
あんたにさま付けで呼ばれるとは思わなかったのだが……俺はうなずいた。お互いつるされたままだったけど。ゴンゾウだったらないて喜んでいただろう。もっと縛ってくれ!そう叫んでいたに違いない。
「わたくしのこと、やっぱり忘れたままかしら?わたくし、ナナスフィア・リベッタと申すものです」
「……知らないな」
そういうとあからさまに落ち込んだ表情になってくらーくなった。
「……す、すまん俺小学三年のころから記憶が……」
「わかってますわ」
そういってけなげに笑って見せた……あ、意外とかわいいんだな。
「この傷のことも当然忘れていますわね?」
「……その傷は……」
なんともいえない頭痛が襲ってくる。それは俺に何かを見せてくれそうな予感がするものだった。
―――――――
「そ、蒼疾様!大丈夫ですか!」
「ナナちゃん、血が、血が出てるよ……」
「蒼疾様もたくさん出ています!だ、誰か!誰か救急車を!」
―――――――
「あの時は本当に申し訳ないことをしてしまいました」
自分の唇をぎりぎりとかみ締めてそんなことを言っていた。
「お、おい、血が出てるぞ」
「かまいませんわ、別に……それより、ひとつ面白い話をして差し上げますわ」
「どんな?」
「まぁ、そうせかさないでくださいな……昔、あるところに双子がいたのですそこへ、一人の男の子が引っ越してきました……それから双子と男の子は毎日毎日遊びました。ですが、ある日……男の子は双子の片方を守って大怪我をしてしまったのです」
懐かしそうに右ほほの傷をなでながらナナスフィアは話を続ける。
「まぁ、思ったより男の子の生命力は強く、命の危険はなかったのですが記憶を失ってしまったのです」
「………」
「その双子の片方はもう一人の双子を責めました。それはもう、涙や鼻水を流してとても見ていられるようなものではありませんでしたわ……とても、汚らわしくて、惨めで、その男の子への大切だという気持ちが痛いほど伝わってきた」
俺が口を挟むことなど何もないだろうな。
「それからケンカの毎日です。まず、事故が起きたとき、その日は双子の片方と遊ぶ予定でしたがもう片方はあまり社交的な性格をしておりませんでしたわ。お部屋で絵本を読んだり、お人形さんで遊んだり……唯一の友達がその男の子だといってよろしかった。その男の子はいつも双子たちと遊んでいましたからあまり友達ができていなかったようですがわたくしたちと遊んでいてとても楽しそうな表情をしていましたわ」
懐かしそうに笑ってすっと目を細める。
「双子の片割れはもう一人をだまして外へと出て行ってしまった……そして、いつもの時間帯男の子はやってきましたわ……そして……」
そこまでナナスフィアがしゃべってから工場が揺れた。
「きゃっ!!」
「うわっ!?」
つるされた状態だったのでぐらぐらゆれてたまにナナスフィアにぶつかったりもした。どん!どん!どん!どん!そんな音が徐々に近づいてくる。二人して音のほうに視線を向けるとコンクリートが破壊されて人の形をした影が現れる。
「天川蒼疾君!助けに来たっす……いや、きたわよ!」
そこにいたのは俺をさらっていったナナスフィアの色違いバージョンだが若干露出抑え目といううわさのヒーローナナスティアだった。
「あら、今頃正義の味方のお出まし?」
「むっ、失礼っすね……いや、失礼ね!これでも最短できたっす……きたのよ」
ナナスティア、絶対にお前の正体いずればれるぞ。
「とにかく!ここから脱出するっす!!」
そういって自分の語尾を訂正することなく俺たちの縄をあっさりと取る。
「さぁ、いくっす!!」
「ああ」
「そうですわね」
三人で出口へと向かって走り始める。順番はナナスティア、俺、ナナスフィア。そして、計ったようにゆれ始めた。突っ走りながら大声を出して叫ぶ。
「な、何で崩壊しようとしてるんだよ!?」
「たぶん、主要な柱を壊しすぎたからだと思うっす」
「それでも正義の味方!?ぜんぜんスマートじゃありませんわ!」
残りに20メートルというところでさらにゆれが増す。
「いそぐっす!もう持ちそうにないっすよ!」
「わかってる!」
「蒼疾様急ぎますわよ!」
すでに後ろからものすごいスピードで崩壊が始まっている。まれに俺の頭上からもぱらぱらとコンクリート片が降り注いできている。
残り五メートル……すでにナナスティアは外に出て手を招いている。もう、あと二メートル。そんなところで頭上からものすごい音が聞こえてきた。
「危ないですわ!」
「おわっ!?」
後ろからすごい衝撃が来て外に出ていたナナスティアと一緒になってこけてしまった。その状態で急いで後ろを振り返るがそこにはコンクリート片しかなかった。つまり、ナナスフィアは生き埋めとなったのだ。
視界いっぱいに広がるコンクリート片の向こうから声が聞こえてくる。
「ナナスティア!急いで蒼疾様を安全なところへ!」
「な、ナナスフィアはどうするっすか!?」
「わたくしよりも蒼疾様を!お急ぎなさい!それでもあなたは正義の味方!?」
「わ、わかったっす!」
「お、おい!ちょっと待てよ!」
ナナスティアは俺を担いでとんだ。それと同時進行で工場が音を立てて崩れ始め……瓦礫の山となった。
「な、ナナスフィアあああああああああ!!!!!」
叫んだ俺の声も崩れる瓦礫の前では無力だった、無駄だった、絶望の象徴だったといっていいだろう。
――――――
「蒼疾、なんだか元気がないようだけど?」
「そうなんですよ、本当に大丈夫ですか?」
「そうやお兄ちゃん、大丈夫?」
「……大丈夫だ」
一日がたち、水曜日。朝からやっていたあの工場の瓦礫の下はいまだに人探しを行っているころだろう。
登校してきてそのまま机に突っ伏す。何か思い出せそうだったが、思い出せない。
「は〜い、皆さんにいきなりですが転校生がやってきたというお知らせで〜す!」
先生がそんなことを言いながら入ってくる。
「蒼疾さん、転校生ですって♪」
「……ん?ああ……」
ぼーっとしながらそれを聞く。
「じゃ、入ってきてください」
「失礼しますわ」
「!?」
俺は目を疑った。そこにいたのは………