第十話:「自給七百円で世界を守りませんか?
蒼疾「ついに十話目………長かった、この道のり!」ゴンゾウ「そうだね、僕も実に嬉しいよ………だって、菜々子先輩が………」蒼疾「次回!フェアリーブレイヴ第十一話!『お嬢様は好きですか?』」ゴンゾウ「大好きで〜す!」
第十話:
「自給七百円で世界を守りませんか?」
二回目の月曜日がやってきたがまぁ、ぼちぼちというか、先週と同じようなことが起きて火曜日。
その日は蒼空だった。ひとりで休み時間の間廊下をうろうろとする。特にすることはないのだが教室に戻ると七海が俺を処刑場(校長室)に送ろうとするし、下の階では奈々枝が笑って待っているだろうし、上の階では菜々子先輩たちが笑って、嗤ってまっているだろう。
「きゃっ!」
「あ、ごめん」
ぼーっとしながら歩いていたせいもあってか誰かとぶつかってしまった。情けない話だな。
「ご、ごめんなさいっす!失礼するっす!」
「?」
どう見ても女子生徒だったが慌てて走り去っていった。
「蒼疾、君には今フラグが立ったぞ!」
「ゴンゾウ、毎度毎度思うんだがどっから沸いて出てくるんだ?」
何もなかったはずの床からゴンゾウが現れる。
「ふふ、それは秘密さ…………兎にも角にも先ほどの女子生徒とはこれからスペシャルで甘い雰囲気が漂う午後の昼下がりが………そして、君には女の子四人による修羅場が待っているだろう。うらやましいぞ、このハーレム男」
このこのといっていたのだが………たとえそれが現実になったとしてもどう考えても楽しい日々になるとは思えない。
「ありゃ?」
ふと、手の中を見てみるとリボンが握られていた。
「おやおや、またすったのかい?」
「すってないっていうか………大体、これは事故だろ?」
ううん、無意識のうちに手が動いたのだろうか?違うよな?
「それは返したほうがいいんじゃないかな?結構使い古されてる」
「そうだな」
ぼろぼろというより綺麗に使われてきているというのが伝わってくる。追いかけようにも風のような速さで先ほどの女子生徒は消えてしまったから探さないといけないな。
「蒼疾、そろそろ授業の始まりを告げるチャイムが鳴るよ」
「ああ、わかってる」
昼休みにでも探しに行くか………そう言うわけで俺はリボンを手に持って廊下を後にしたのだった。
「蒼疾さん、どこにいっていたんですか?」
「ん?ああ、ちょっと用事があってな………それよりさ、っすっていう語尾の女子生徒知っているか?」
少しばかり考えるような仕草をして七海は手を打った。
「ああ、ナナスティア・リベッタさんですね?」
「ナナスティア・リベッタ?」
「ええ、外国からやってきたと聞いています………まさか蒼疾さん、何かちょっかいを出そうと考えているんですか?」
ジト目でこちらを見てくるが俺は首を振った。
「いいや、ちょっとさっきリボンを落としていったんだ。だから返しにいこうと思って」
外国人だったのか………知らなかったなぁ。というかナナスティアってどこかで聞いたことがある名前だぞ?
―――――
昼休み、廊下に出ると長い銀髪の女の子が四つんばいになって廊下をなめるように何かを探していた。その手には虫眼鏡が握られている。
「ないないないないないないないないないないないっすぅ!!ああ!どうしようっす!警察へ………行くっす!」
「あ、そこのあんた」
ぶつかってきたのがこいつだったか知らんがとりあえず関係あるだろう………
「あんたが探しているのはこれか?」
「え?」
振り返るその女子生徒にリボンを見せる。
「そ、それっす!それ、一体全体どこで見つけたっすか?」
「ああ、さっきぶつかったときに拾ったんだ」
「あ、さきほどぶつかってしまった方でしたか………」
そいつの顔が俺の顔をとらえ、固まった。
「そそそそそそそ蒼疾さんじゃないっすか!?」
しぇーみたいな感じで廊下にへばりついている花も恥らう女子高生。銀髪が面白いように広がっている。
「あ?俺のこと知っているのか?」
「知ってるも何も………いえ、なんでもないっす。うちの名前は知ってるっすか?」
「えっと、さっき聞いたらナナスティアって聞いたな………もしかしてそれって最近噂の覆面ヒーローナナスティアになるために必要な返信道具だったりしてな」
そんなわけないよなって感じでナナスティアのほうを見ると………
「どどどどどどどどうしてばれたっすか?ああっ!とりあえず屋上へ連れて行くっす!」
「え?ちょ、ちょっと!」
右手をつかまれて引きずられていく。頭痛がし始めた。
――――――
「うち、変身ヒーローっす!すごいっすよね?」
「へぇ!本当!?みんなの平和を守るんだ?」
「蒼疾君の平和をずっと守るっす!」
金髪を見ながら俺は嬉しそうに野山をかけている。
――――――
「何か思い出せそうだったな………」
以前もこうして腕を引っ張られて引きずられてどこかに向かっていたのかもしれない。
「ついたっす!」
ばたんという音共に屋上の風が吹いてくる。しかし、そこからは甘ったるい空気が流れ込んできていた。
「はい、あ〜ん♪」
「うん!ゆんなたんのお料理美味しいよ♪」
「もう!りくたんたら♪」
「ゆんなたんを食べちゃおうかなぁ♪」
「昼間からす・け・べ♪」
二人してきょとんとしてそれを見ている。ああ、そういえば昨日も七海と一緒にたべていたっす………ああ、変な人と一緒にいるからうつっちまったよ。
「ああ、既にお昼休みに突入していたっすねぇ………しょうがないから一緒に食べるっすか?」
「弁当がない………」
そういってからいつの間にかその手にお弁当が握られているのに気づく。
遠慮しようとしたのだが俺も弁当を食べていないのでおなかがすいていたのは事実だったのでしぶしぶと屋上へといったのだった。
――――
「蒼疾君は思い出したっすか?」
「何を?」
「ああ、やっぱり忘れたままだったんすね?」
「?」
一つの弁当を二人でつつきながらそんな話になった。
「過去一度、いや、何度かあってるんすよ、うちらは」
「そうなのか?だがあいにく俺は小学校三年以前の記憶がないんだが?」
「それはまぁしょうがないっす」
しょぼくれて蒼空を見ようとはしなかった。
「何か知っているのか?」
「いや、そういうわけじゃないっすよ。うちが知っていることは蒼疾君とうちはとても仲良しだった……そういうことだけっす」
そういって再びお箸を取り出して俺に差し出す。
「おままごとでもこんな感じのことをしていたっすよ……あ〜ん」
「……あ〜ん」
おとなしくその申し出を受けておくことにしておこう。だって、目の前の女の子は今にも泣き出しそうな表情をしていたのだから。
「……嬉しいっすよ、またこうして一緒におままごと……いや、お昼ご飯が食べれて……」
気がつけば周りの連中はすでに退場していた。残っているのは俺たちだけだ。ナナスティアは俺をしっかりとした瞳で見据えていた。
「蒼疾君、とりあえず過去の知り合いのよしみで正体を知ってしまったのは許してあげるっす………」
「そ、そりゃどうも……」
どうも不安だ、こいつのほうがポロリとしゃべってしまわないのだろうか?大体、名前自体でばれそうなものなのだが?
「ところで、バイトをしてみる気はないっすか?」
「バイト?」
「そう、バイトっす!老人や町の人から喜ばれる正義のバイトっすよ!」
「一応、内容だけ聞こう」
一冊のノートを取り出してそれを広げる。
「えっと、キャッチコピーは『あなたも平和を守りませんか?』っす。自給七百円で和気藹々とした仕事場っす。今のところは正義の味方の助手って言うポストがあいてるっすよ」
「いや、遠慮しておく」
「ええ?とても楽しい職場っすよ?」
なんだかとても危なそうなにおいがぷんぷんしているぞ?大体、自給七百円で命を投げ出すやつがいるのだろうか?
「それ、悪者とか絶対出てきて戦闘になるだろ?」
この前だって新聞で怪人が出たーとか言ってたぞ。
「えっと、確かに戦わないといけないっすよ」
「そら、見たことか……」
まだまだ命は惜しい。
「そんな危険なバイトはしないっす〜……というわけで、じゃあな」
立ち上がって屋上の扉を開ける。だが、開け放たれた扉の先にもナナスティアがいた。
「だ、大丈夫っす!謎の正義の味方ナナスティアが命にかけても守ってあげるっす!」
謎という部分をかなり強調してそんなことを言うが正体ばればれだろうに。
「うぅん、そうだな……」
そこまで言ったとき……
「おーっほっほ!!」
「この声は!」
「?」
後ろのほうを見ると宙に一人の女性が浮いていた。セクシーな衣装を身にまとっていて赤色のバイザーみたいなものをつけている……あれ?この学校の生徒でこんなのがいなかったか?とふと思ったが気のせいだろうということにした。
「謎の悪者幹部、ナナスフィア参上よ!愚民共、わたくしにひれふしなさい♪」
「た、大変っす!早くにげるっす!」
俺の手をとって校舎内の階段を駆け下りようとする。
「させなくってよ!」
「のわっ!?」
鞭状のなんだかとても現実離れした変な触手のようなそんなものに……自分で言っていてなんだかわけがわからなくなってきた……俺はつかまってあっという間に小脇に抱えられる。
小脇に抱えられることによってその豊かな胸が俺の顔に当たっているということを付け加えておこう。役得か?
「さぁ、あのお邪魔虫を呼んできなさい!」
「蒼疾君!」
ナナスティアが蒼白の顔で俺の名前を呼んだ。
「…………」
そんなことより俺は顔に当たっている胸のほうが気になってしょうがなかった。
「……蒼疾君!すぐにナナスティアをよんでくるっす!」
「町外れの工場にきなさいとつたえなさい!」
そういって俺を小脇に抱えた悪者、ナナスフィアは空を駆け抜けたのだった。
どうでもいいことだが、どうみてもこのナナスフィア……ナナスティアの髪の毛を金髪にして眉毛を若干釣りあげ、それにじゃっかんするどい目にしているようにしか見えない。あとは右ほほに小さな傷があるということぐらいか?
こうして、俺は生れて初めて悪者に誘拐されたのだった。
―――――――
番外編
蒼疾のいなくなった教室。
「あら?大津地さん、蒼疾君はどうしたの?」
「え?ちょっと用事があるっていってかえってきてませんよ?」
「そう?」
「先生、蒼疾のために時間を割かないでください」
「そうねぇ、まぁ、蒼疾君なら大丈夫でしょう」
「大丈夫ですよ、蒼疾さんは一人でもなんとかできますから!」
これが信頼といえるのだろうか?それはこの会話を聞いた人によって変わるだろう。