大切なものだけは手にいれてきた
「大切なものだけは手にいれることができた」
とぼくは自分の人生を振り返った。
ぼくの人生はあまりにも失敗が多すぎた。
努力することから目を背けた。
なんとなく、小説家になりたかった。
取材旅行なんて楽しそうじゃないか。
好きなことを勉強して、好きなものだけで小説を組み立てる。素敵じゃないか。
でも、ぼくは努力はしなかった。
無理矢理頑張ったところで意味がないのだ、なんていったりして。
楽しくない努力は身に付かないとか言って。
回りのやつらはつまらない連中だ、とか思って。
ある程度無難に生きて、仕事についた。
普通の仕事だ。
ぼくがやる必要はない。
他の誰かでも代わりは効く。
AIロボットが完成していないので、それまでの場繋ぎの仕事に過ぎない。
ぼくには妻がいる。
失敗ばかりでたくさん失ってきたぼくの、唯一の宝物だ。
「大切なものだけは手にいれてきた」。
仕事だって一応やれてる。生きている。
妻が言った。
「必要なものを手にいれてきたんじゃなくて、きっと、運命だったんだよ。失ってきた経験は、大切なものを失わないために必要なものだったんだよ。そういう風に、神様が気を効かせてくれてるんだよ。ね。そんなに悲しまないで」
ぼくは言った。
「ときどき怖くなるんだ...いつか君を失ってしまう気がして。ぼくの手はわずかなものしか持てないから、他のもののために君を手放すかもしれない。そんなことはしたくないけど、したいと思ってしまう日が来るかもしれない」
妻は言った。
「手放されたとしても、わたしは隣にいます。並んで歩きたいです。わたしは手を引かれなくても歩けます。だから、心配しないでね」
前に投稿した、『「なんで小説書いてるの?」と妻に言われまして』
がすごい人気だったんですよ~(自慢)。
その続きかな?
妻って響きがいいよね。
寄り添ってくれてる感が。