波
短いです。
流れては戻り、流れては戻り、を繰り返す優柔不断な白い波。
まるで今の僕のようだ。
そう呟きでもすれば、彼女は笑ってくれるだろうか。
恥ずかしい奴だね、と決して戻らないあの頃のように。
波の音に交ざって、彼女の明るい笑い声が聴こえた気がした。
馬鹿ね。私のことなんて、いつまで引きずっているつもり?
僕は少し頬を緩ませて、花束を海に流した。
ごめん、しつこいと思うかもしれないけど。
「あともう少しは、君を好きでいさせて」
今日は、彼女の一周忌。
ありがとうございました。
中学の時の農業体験で泊まった家の近くに海がありました。
朝の五時くらいに周りを起こさないよう静かに外に出て、海辺を歩いたのは良い思い出です。
この作品は、その「農泊のしおり」の隅に書かれていたものです。
短い上、山もオチもない話でしたが、読んでいただいてありがとうございました。