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元魔王が異世界でMMOを極めます!?  作者: renren
第1章 魔王、降り立つ
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第2話 覚醒

浩輝視点です。

一夜明けて……

 朝、目が覚めると、ものすごい美少女が隣で横になっていて、僕のことを見つめて微笑んでいた。


 ……なんて、妄想甚だしい。

 そんなことがあったらいいなとは思うけど、実際にあったとしたらちょっと怖いかもしれない。

 なにせ、自分の部屋にいきなり知らない人間が入り込んでいるのだから。

 今の状況も、それに近い心境だ。


(……ふむ。確かに、そうかもしれない)


 なんだこれ、と気づいた時にはこの状態だ。

 誰かの話す声で目が覚めたと思ったら、部屋の中には誰もいなくて。

 マンションの外から聞こえてくる感じでもなかったので気のせいかと思って寝直そうとしたら、また声が響いたのだ。

 こんな感じで。


(……)


「いや何か喋れよ!」


(え? いや、すまん。なんかいきなり語りだしたから、邪魔をしてはいけないと思ったのだ)


「そういう気は使わなくていいんだよ!」


 この調子である。

 頭の中に、僕以外の誰かの声が響くのだ。それも、ちゃんと受け答えになっている。

 ていうか、お前は誰なんだよ。


(オレか? オレはディスキア・ベルゼ・ユルドフェルだ)


 正直、頭が痛い。

 病院にでも行ったほうがいいのかな?

 行ってどうする? 素直に今の状況を説明するのか? 頭の中に僕以外の誰かの声が響いて会話できるんです、って?

 それは絶対、普通じゃない。

 どこのどんな病院に行っても白々しい目でしか見られない気がする。


(大丈夫か?)


「……ごめん。ちょっと黙っててくれないか。一旦整理するから……って、僕今、声に出してた?」


(む? そういえば声には出していなかったな。頭の中で考えるだけでいいのかもしれないぞ?)


 そうなのかな。ちょっとやってみよう。

 ええと、君の名前。ディス……なんて言ったっけ?


(ディスキア・ベルゼ・ユルドフェル、だ。お前はキリムラヒロキという名で合っているか?)


 あ、ああ。合ってるよ。

 というか、本当に考えただけなのに会話が成立してるな。

 そうか、ディスキア……長い名前だな。そうだなあ、ディア、とでも呼べばいいか。

 “ディス”って呼ぶのは微妙だし。


(うむ。構わんぞ。それならオレは、お前を浩輝と呼ぶことにしよう)


 あ、うん。それでいいよ。

 で、ええと。

 ディアは何者? 今どこにいるんだ? どうして僕と考えるだけで会話できるんだ?


(待て待て。一度に質問されても答えられん。一つずつにしてくれ)


 それもそっか、ごめん。こっちも混乱しているんだ。

 少しくらい、大目に見てくれよ。

 まずは……いったいお前は何者なんだ?


(そうだな……元魔王、とでも言えばよいか)


 まおう……? “まおう”ってあれか? 魔族とか魔物とかの王様なのか? よく勇者に滅ぼされているあいつか?

 まあ、最近のネット小説やライトノベルとかでは、むしろ魔王を主人公にしたものさえあるんだけど。


(そうではない。オレはとある魔法国家の王族だ。魔法使いの国の王様という意味だな。実際、元の世界では魔法使いの頂点として民からの羨望を集めていた)


 魔法国家? 魔法使い?

 そんなもの、小説とかマンガの世界だけのものだろう。


(お前の知識では、そうなっているな。だが、オレはとある魔法を使って、世界を越えてきた。その際、オレの肉体は消滅してしまい、自我だけがこちらの世界に渡った。そして気が付いたら、このような状態になっていた。そういうわけだ)


 マジかよ。

 じゃあ、魔法が使えるのか? テンション上がるな。


(魔法か。魔法を使うには、魔法を発現させるための魔道具と呼ばれるものが必要だ。お前の部屋には、それがない。故に、魔法は使えない。……まあ、この魔法のない世界には、魔道具なんてものはないだろうがな)


 ……マジかよ。

 魔法、使えないのかよ。魔法使いの癖に。魔王の癖に。テンションだだ下がりじゃないか。


(……すまん)


 ……いや、僕の方こそ、ごめん。

 ちょっと、魔法っていうものに対して憧れみたいなものがあったからさ。つい、厳しい言い方になっちゃった。

 そうだよね。ディアも、もしできるなら、魔法で元の世界に戻りたいよね。


(いや、そうは思っていないな。言っただろう? 魔法を使って世界を越えてきた、と。誰かの仕業とか、何らかの事故によってこの世界に来たわけではない)


 あれ? そうなの?


(うむ。元々、そのためにあの魔法を研究していたのだからな)


 ふーん。ま、いいや。

 次の質問、いいかな。


(大丈夫だ。問題ない)


 ……さっき、自我だけがこちらの世界に、って言ってた気がするんだけど。


(ああ、言ったな)


 ディアは今、どこにいるの?


(……わからん。だが、なんというか、お前の見たり聞いたりしたものは、オレにも見えたり聞こえたりしている。お前が感じたものをオレも感じられることから推察するに、お前の精神体と同一化しているのかもしれん)


 精神体と同一化……?

 うーん、よくわからないけど、つまり、僕の魂とディアの魂が一緒になったってことなのかな?


(ああ、その認識で結構だ。……しかし、普通、人の肉体に二人分の魂を受け入れるだけの容量はないはずだが……)


 そんなこと言われても、僕にもわからないよ。

 魂が同一化したから、一人分の魂の容量で収まっている、とか?


(そういうことなら、ありえない話ではない……か?)


 ところでさ。今更なんだけど、どうしてディアは日本語が話せるの?


(うん?)


 いや、ディアが異世界……魔法国家だっけ? そこから来たなら、そこの世界の……まあ、国によって違うのかもしれないけど、そこの言葉があったんじゃないかなって。

 よくある異世界転移モノだと魔法とかスキルとかで翻訳されるのが定番だけど、ここは現実世界の日本で、そんな便利なものはあるはずないから、不思議に思ったんだよ。


(ああ。そういうことか。どうしても何も、日本語を勉強したからに決まっているだろう)


 ……はい?


(オレはお前の記憶を見ることができるみたいでな。悪いとは思ったが、コミュニケーションが取れないような事態は避けたかったので、お前の記憶を見させてもらい、日本語が話せるように勉強したのだ)


 ……マジで?

 僕の記憶、見られちゃったの? 全部?

 いや、今はそれは置いておいても。え? それにしたって、覚えるの、早すぎないか?


(ああ、言ってなかったか。オレがこうして意識を持ったのは、実は昨日なのだ)


 そうなの?

 いや、それにしたって、覚えるの、早すぎないか?

 ……思わずさっきと同じこと思っちゃったよ。

 でも日本語って、世界的……あ、この世界全体で、という意味だけど、世界的に見ても覚えるのが難しい言語だって言われているんだよ?

 一朝一夕で覚えられるようなものなの?


(それは読み書きと会話能力全般の両方を指して言われているだけだろう。会話能力だけに限るなら大した手間ではない)


 ……もしかして、ディアって天才なの?


(うん? ああ、一応魔王であったわけだしな。頭の回転はそれなりに速いつもりだが)


 正直、驚いている僕がいる。

 なんでこの魔王さま、平々凡々な僕のところになんか来ちゃったんだろう。


(そうだ、試しにオレの世界の言葉を話してやろうか?)


 ……うん。お願いします。


(■■▲●▲●●▲?)


 え? なんだって?


(▲▲●、■■▲●▲●●▲?)


 ……ごめん、全然わかんないや。


(まあ、そうだろうな)


 ちなみに、なんて言ったの?


(朝飯は食べないのか? と聞いた)


 時計を見て、驚いた。

 もう結構ないい時間だ。具体的に言うと、午前9時過ぎ。

 そういえば、そろそろアレが届くはずだ。とりあえず僕は、朝ご飯でも食べるよ。

 考えるだけで会話できるなら、ご飯を食べながらでも話せるよね。

 昨日は早く寝たせいか、なんだかお腹が減っている気がする。

 とりあえず、冷凍しておいた白ご飯でも温めよう。




 しかし、なんだかずるいよね。

 僕はディアの記憶を見られないのに、ディアは僕の記憶を見られるんだろう?

 こういう言い方はしたくないけど、あまりに一方的過ぎやしないか?


 温めた白ご飯をパクつきながら、ディアに問いかける。

 おかずはない。傍に置いてあるのは、海苔だけだ。


(そう言われてもな。……いや、一瞬だが、オレの記憶を浩輝は見ているはずだぞ)


 は? いやいや、そんなの記憶にないけど。


(それはそうだ。なにせ、お前は夢だと思っていたみたいだからな)


 夢……? そういえば昨日、なんだか変な夢を見た気がするな。

 確か、僕が使用人みたいな人たちに別れを告げられながら魔法のようなものを使って……。ん? その時、僕は何と呼ばれていた? “まおうさま”と……呼ばれていたような。


(それだ。オレがこの世界に渡る日の記憶。それがお前が見た夢の正体だ)


 え? じゃあアレが、ディアのいた世界なんだ。


 夢で見た光景を思い出してみる。荒野のような場所でディアと使用人のような人たちが別れを惜しむシーンと、その後にディアが魔法を発現させたシーンだ。

 使用人のような人たちは幾人かいたけれど、それぞれが特徴的な見た目をしていたように思う。全員が違うようではなかったけれど、さすが異世界って感じ。

 尖った耳に明るい緑色の髪をもつエルフの少女がいたり、厳つい格好で頭に犬のような耳をもつワーウルフの戦士がいたり、肌の色が違うけどとにかくイケメンな魔人っぽい青年もいたな。

 あと、一番印象的だったのは、慇懃な態度の老執事だ。

 とにかく様になっていて、渋いしかっこいいしで、ちょっと憧れる。


(ああ、まあ、いい奴らだったよ。血の繋がりはないが、家族のように思っていた。特に執事には、最後まで世話になった)


 へえ、そうなんだね。

 そして……ディアが最後に使った、アレが魔法なのか。


(そうだ。異世界に渡るために作られた魔法、《境界門(アストラルゲート)》。オレの最初で最後の研究の成果にして、最大の失敗作だ)


 失敗作? でも、ディアはこうしてちゃんと異世界である日本に来ているじゃないか。


(そうなんだがな。本来の《境界門(アストラルゲート)》なら、きちんと術者の肉体も世界を渡れるはずなんだ。だから、こうしてオレの自我だけしか異世界に渡れていないあの魔法は、失敗作だったんだよ)


 ……そっか。

 でも、本当にすごいよね、ディアは。


(うん? なぜだ? オレは自分の失敗作の話をしただけだぞ。すごいと思われる要素は無いと思うが)


 はは、ディアはそうかもしれないけど、魔法を使えない僕らこの世界の人間は、きっと誰もが、君のことをすごいと言うと思うよ。

 だって、実際にディアは魔法を使えて、いろんなことができたんだろう?

 それで、ちょっと自分の思い描く通りじゃなかったのかもしれないけど、こうして実績のある魔法の開発に成功した。

 僕の世界でいうなら……そうだね、自分の夢を叶えたってことじゃないのかな? きっと、一朝一夕じゃなくて、いっぱい頑張ったんだよね。


(あ……)


 だから、凡才の僕なんかは特に、君のことをすごいって思うよ。

 まあ、半分以上は、魔法が使えるディアに対するやっかみみたいなものかもしれないけどさ。


(……そ、そうか。……あー、うん。そう……なんだろうか)


 あれ? もしかして、ディア、照れてる?


(!? いや、照れてなどいないぞ?)


 そう? まあいいけどね。

 内心でほくそ笑みながら、僕は最後の海苔と白ご飯を口に放り込む。そのまま食器を持って立ち上がり、台所の流しにそれを置いた。

 軽く水に浸しておいて、お昼ご飯の前にでも洗おうかな。




 さてと、朝ご飯も食べ終わったし、片付けも済ませた。

 今日の予定としては、あとはアレが来るのを待つだけだね。


(その、アレ、というのは何だ)


 ああ、えっとね。

 ゲームっていうのは、わかる?


(遊戯、遊びのことだろう? 今、この世界で一般的にゲームと言えば、大抵がテレビゲームを指すと認識している)


 テレビゲームって……。なんでそんな古い言い回しをするのかな? まあいいけど。

 うん、その認識で合ってるよ。そのゲームの一つ、と言えばいいのかな。ある有名なゲーム会社が発表した新世代のハード、ハックギア2ndが届くんだ。


(ハックギア? それは、どんなゲームなんだ?)


 ハックギアそのものは、ゲームじゃなくて、ゲーム機、といえば伝わるかな。ゲームを動かすための機械のことだね。

 そこにソフトウェア……この場合はゲームソフトだね、それをインストールして、ゲームを始めるんだ。

 そして、そのハックギア2ndに対応した、新作のオンラインRPG、その名も……。


 ――ピンポーン!


「来た!」


(おい!)


 ディアへの説明なんて後でいくらでもできる!

 まずは一刻も早く、このゲームを始めたくて仕方がない!

 そういう訳だから、ごめん、許してくれ、ディア。


次回の更新は07/11(月)の予定です。


※2016/07/04(月) ディアが日本語を話せることに対して浩輝が疑問を投げかけた際のディアの回答を修正しました。


※2016/11/02(水) 意味が逆だったので修正しました。

「そんな便利なものはないはずないから」→「そんな便利なものはあるはずないから」


※2016/12/23(金) 表現の一部を修正しました。


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