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元魔王が異世界でMMOを極めます!?  作者: renren
第3章 クエスト
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第4話 防具作成依頼

 申し訳ありません、いつもより少し短いです。

 オリヒメから魔法式の講義の依頼を受けたオレは、掲示板を利用して具体例付きの解説をすることとなった。

 監修にはオリヒメが付き、なかなかわかりやすい文章になったと自負している。


 そして、依頼に関するすべての作業が終わったのは、午後3時手前だった。

 昼に一度休憩を挟んでいるとは言え、慣れない作業で疲れているのは確かだ。オリヒメも疲れた様子を見せていることだし、一度気分転換が必要だろう。

 キンバリー? あいつはオレたちを放って自分の生産活動に邁進していた。今も作り終わった武器の出来をつぶさに観察しているようだ。


「オリヒメも疲れただろ? 一段落着いたことだし、休憩にしよう」


「ええ、そうですね。お茶でも淹れましょうか」


 そう言ってオリヒメは備え付けのキッチンに向かう。テキパキと慣れた手つきでお茶を淹れる姿を見て、元いた世界で身の回りを世話してくれたメイドのエルフを思い出した。

 彼女たちは今、何をして日々を過ごしているのだろうか。


(ホームシックかな?)


 そんなんじゃないさ。ただ、懐かしいと感じただけだ。彼女らと分かれてそれほど時間が経ったわけではないはずなのだがな。


(ま、そういうこともあるさ。何気ない日常こそ、何よりも大切なんだって、何処かの誰かも言ってたし)


 なんだそれは?


(ただの受け売りだよ。気にしないでくれ)


 そうしてしばらく待っていると、オリヒメがキッチンから戻ってくる。

 トレーに載せたカップからは紅茶独特のいい香りが立ち上っていた。

 「どうぞ」と言われながら差し出されたカップを受け取り、早速口を付けてみる。

 紅茶はあまり飲み慣れていないので良し悪しはわからないが、美味しいと思う。


「うまいな」


「そうですか? ありがとうございます」


 言われて、はにかんだように微笑むオリヒメを見てドキリとしたが、オリヒメも自分の分を飲み始めたのでじっと見つめるのも失礼と思い目を逸らす。


「この後は、私も自分の生産活動を進めようと思いますが、ベルゼさんはどうしますか?」


「ああ、オレはクエストを受けに行こうと思う。……その前に、オリヒメに依頼したいことがあったんだった」


 結局、『青銅猿の毛皮』は森に行った証拠として見せただけで終わっていた。

 本来はこれを渡して防具の作成を依頼しようと思っていたのだが、魔法式の講義の件で有耶無耶になってしまっていたのだ。

 魔法式の講義の件は一段落したのだから、正式に依頼をしようと思う。


「これを使って、オレの防具を作成してくれないか?」


「これは……『青銅猿の毛皮』ですよね? 良いんですか?」


「良いのか、とは、どういう意味だ?」


「……ええっと、これは北の森にいるボスのドロップだという話だったと思うんですが。これを売れば、かなりの金額になりますよ?」


 そうなのか?


(そうだね、これはまだ市場に出ていないアイテムだから、出すところに出せばかなり高額になると思うよ。でも、売るにしても防具の素材に使うとしても、結局話題のネタになることは避けられない。なら、多額のお金を持っていることで狙われるより、少しでも自衛の助けになる防具の素材とする方が、まだ安心できるでしょ?)


 確かにな。

 なら、そっくりそのままオリヒメに説明するが、問題ないな?


(うん、いいよ)


 浩輝の言った内容を踏まえて、オリヒメには防具の作成を改めて依頼する。


「……わかりました。その依頼、受けさせていただきます」


「よかった。じゃあ、報酬の話をしようか」


「……いえ、お代は結構です。これほどの素材ですから、作成に携われるだけでも十分です」


「だが、防具の作成にはこれ以外にも使う素材があるはずだ。それを調達する分の金が要るだろう?」


「ええ、まあ、そうなんですが……。今回、ベルゼさんには魔法式の講義の件で無理を聞いてもらいましたから……」


 無理……と言うほど無理なお願いを聞いたつもりはないのだが……。


(まあ、いいんじゃない? ただより高いものはないってよく言うけど、これは単純な厚意だよ。甘えさせてもらおう)


 浩輝がそう言うなら、まあ、仕方ない。

 だが、それならオレにも考えがある。


「わかった。今回は厚意に甘えさせてもらおう。けど、一ついいだろうか」


「え? あ、はい」


「今後、オレが手に入れたアイテムで防具を作成する場合は、オリヒメに依頼を受けてもらう」


 これはお互いにとって利のある話だ。

 オレは防具の作成を専属で受けてくれる職人が出来て嬉しい。オリヒメは今後オレが提供する様々なアイテムで防具の作成が出来て嬉しい。

 今回の防具作成に関して金銭が動かせないというのなら、これくらいの利益供与は受けてもらわないと困る。


「……それは願ってもないことですが……」


「いいんじゃな~い? これをオリヒメちゃんが受ければ~、ベルゼにとっても~、嬉しい話なんだし~」


 今までオレたちの様子を傍観していたキンバリーが、そう声を掛けてくる。

 いまいち理解していなかった様子のオリヒメも、キンバリーが言ったことでようやく理解できたのか、顔を驚きに変え、頬を朱に染めている。あれ?


「……え! そ、そういう、ことですか?」


「待て。何故かはわからないが、誤解がある気がする。ちゃんと話し合おう」


「またまた~、そんなこと言って~。嬉しいくせに~」


「ちょっと黙っててくれないか、キンバリー」


「オリヒメちゃん、気をつけるのよ~? 男はみんな~、オオカミさんなんだからね~?」


「あう、あう……」


 ……これ、どうやって収拾つければ良いんだろうな?

 対人経験の少ないオレにはわからないよ、浩輝。




 どうにか収拾をつけて生産施設を出たのは、午後4時を少し過ぎたくらいの時間だった。

 美味しい紅茶の味が忘れられないので、また飲みたいと思う。


(現実逃避ってやつだね。って、ここは現実じゃないけど)


 オリヒメの誤解はなんとか解くことが出来たと思う。

 少し残念そうな顔をしていたのが、またオレの良心を突いてくるが、とりあえずは気にしないことにしよう。

 防具の仕上がりは2日後になるそうだ。

 「最優先で仕上げます!」とオリヒメは言ってくれたが、この辺りのモンスターならオレの魔法で一撃だ。防具はそこまで重要ではない。

 単純に初期装備だというのが気になっているだけなので、見た目が良ければ性能は気にしないと告げておいた。……なぜか、それで更にオリヒメを燃え上がらせてしまったが。


 今向かっているのは、昨日も立ち寄った魔法使いギルドだ。

 ルー婆さんの様子も報告しておきたいし、何より金策のためのクエストを斡旋してくれるのは今のところ魔法使いギルドだけだ。

 街中で受けられるクエストでは精々が小遣い稼ぎにしかならないので、本格的に金が必要ならここを頼るのは必然と言える。


 途中、小腹が空いていたために掲示板に載っていた露天に寄る。

 ここでは手頃なサイズのパンを売っており、中でもオススメはハニーチュロスという商品だそうだ。


(へえ、こんなものまであるんだね。手頃な値段だし、いくつか買ってインベントリに入れておいてもいいかも)


 1本150ユルドという値段で売られていたので、6本ほど買っておく。これ1本で満腹度を1割回復するので、本当に小腹を満たす程度のものだ。

 カリッとした食感と蜂蜜特有の甘さが感じられるハニーチュロスは、おやつには丁度良い。

 串焼き肉に続いて、これからも贔屓にしようと思えるいい店だった。


 そうしてやってきた魔法使いギルド。昨日と同じで閑散とした様子ではあるが、よくよく見れば調度品はセンスの良さが滲み出て……。


(うわ、よく見ればこのカーテン継ぎ接ぎがあるよ。あ、こっちの机、修理した痕跡があるね。うん? この椅子、ちょっと焦げ跡っぽいものがあるよ)


 ……まあ、ものを大切にする良いギルドだということにしておこう。

 オレが調度品を見ていることに対し苦笑いを浮かべた受付嬢もいることだし、さっさと要件を済ませよう。


「いらっしゃいませ、ベルゼ様。本日はどのようなご用件でしょうか」


 そう言ってオレの話を聞いてくれることになったのは、昨日も世話になった栗色の髪の受付嬢だ。

 彼女からもルー婆さんのことを頼まれていたので、丁度良い。


「昨日の魔道具職人の件の報告と、新しい依頼の受注に関してだ」


「おばあちゃんの……あ、失礼しました。まずは、報告をお願いしてもよいでしょうか」


 受付嬢が失言を謝罪する。『おばあちゃん』とは……彼女とルー婆さんの関係が気になるところだな。


「ああ。ひとまず、魔道具職人には薬を作って渡しておいた。あと5日もすれば元気になるだろう。リハビリは必要だろうがな」


「薬? 彼女は……どのような状態だったのですか?」


 オレの回答に対して、受付嬢は怪訝な様子を見せる。

 本当に解決したのか? その薬の処方は妥当な処置なのか? と問いたげな様だ。


 だがしかし、ここで本当のことを言ってもいいのだろうか?

 というのも、ルー婆さんが罹っていたのは、衰魔すいま病と呼ばれる魔法が使えなくなる病である。

 そして()()()()()()、まだ衰魔すいま病の治療方法は見つかっていないのだ。


 このことが公になれば、どうしてオレがその治療法を知っているのかとか、その治療法は本当に効果があるのかとか、様々な疑問が出てくるだろう。

 オレは、できればそんな面倒事は避けたいと考えている。

 ここで受付嬢に黙っていてくれというのは簡単だが……。


「それを言うのは簡単だが、その前に一つ確認しておきたい。貴女あなたは、彼女の症状をどこまで知っている?」


「……魔法が使えなくなった、と聞いています。そして、日に日に痩せ衰えてしまっていることも。それがどんな病によるものかも、手を尽くして調べたお陰で、把握しています」


 そうか。彼女はやはり知っていたんだな。ルー婆さんが罹った病に、きちんと気付いていたのだ。

 ならばなぜオレを差し向けたりしたのだろうか、という点が気になるところだが……まあ、今は置いておこう。


「このことを知っている人間は他にどれだけいる?」


「彼女はこの街の重要人物ですから……。街の役人の方や、うちのギルドメンバー、あとは薬師ギルドの方たちです」


「意外と多いんだな」


「この街唯一の魔道具職人ですから。それで、ベルゼさん。本当に、彼女は助かるんですか? あなたはさっき、『5日もすれば元気になる』と仰っていましたが、それは本当でしょうか? あの病は……」


 受付嬢が声を荒げ始めた。まずいな、少し声が大きくなっている。隣の受付に座るお嬢さんが何事かとこちらを凝視してくる。

 ここまで必死になられては、オレも覚悟を決めて全部話すしかないだろう。


「わかった、わかったから落ち着いてくれ。全部説明するから」


「あ……! も、申し訳ありません!」


 オレにそう言われて、受付嬢はやっと自分の声が荒れていることに気付いたようだ。


「……その、続きは奥で聞いてもいいでしょうか」


「まあ、そうした方がいいだろうな。あと、可能ならギルドマスターも呼んだ方がいいんじゃないか?」


「そ、そうですね。では、まずは奥へ案内します」


 そうしてオレは、魔法使いギルドの奥へと案内されることになった。

 ギルドマスターが来るまでに、オレがなぜ衰魔すいま病の治療法を知っていたのか、言い訳を考えて置かなければならないな。


オリヒメちゃんマジヒロイン。

まだ話に絡んでこないヒロイン(候補)たちよりよほどヒロインしているんですが(笑)


次回の更新は06/04(日)の予定です。


※2017/06/04(日)

申し訳ありませんが、本日予定していた更新を延期します。次の更新は未定です。

理由としては作者のモチベーションが低下しているためです。

話の展開も見直したいなと考えていますので、第3章に入ってからのストーリーが変化するかもしれません。

話のストックができたらまた更新を再開致します。ご了承ください。


※2016/05/28(日) 改稿

 2章の5話での受付嬢の反応と矛盾していたため、ベルゼが受付嬢にルー婆さんの容態を説明する部分を改稿しました。

 大まかなストーリーに変更はありません。


↓↓改稿前↓↓


「ああ。ひとまず、魔道具職人には薬を作って渡しておいた。あと5日もすれば元気になるだろう。リハビリは必要だろうがな」


「ちなみに、どのようなお薬でしょうか? 彼女の体調不良は、原因不明だと聞いているのですが……」


「原因不明だと?」


「え? あ、はい。なんだか身体がだるくて動けない、原因に心当たりはないから単なる疲労だろう、と最初期に聞いていたのですが……違うんですか?」


 原因不明と聞いて怪訝な様子を見せたオレに、受付嬢が理由を説明する。

 それを聞いて思い出したのは、ルー婆さんの言動だ。あの時、オレが治療を提案するまで、彼女は死ぬつもりでいた。

 ルー婆さんは最初から、つまりこの受付嬢に体調不良を説明する段階で既に、自分が罹った病が衰魔すいま病だと知っていたのではないだろうか。

 そして衰魔すいま病は、()()()()()()まだ治療方法の見つかっていない病だ。

 おそらく、ルー婆さんは顔見知りであるこの受付嬢を心配させたくなくてそんなことを言ったのだろう。

 この受付嬢からすれば、そんな嘘よりも、本当のことを教えて欲しかったはずなのにな。


「……オレが渡したのは、衰魔すいま病の特効薬だ」


 本来であれば、ルー婆さんの優しい嘘をオレも肯定するべきだったのだろう。

 治療の見込みが見えた今、ルー婆さんの嘘は嘘ではなくまことになるはずだった。

 けれど、それは結果論だ。

 冷たいかもしれないが、オレはこの嘘を許すつもりはない。心配を掛けさせたのは、結局変わらないのだから。


「え? 衰魔すいま病って……『不治の病』じゃないですか! え? それの特効薬? っていうか、おばあちゃん、衰魔すいま病に罹ってたの!?」


「おい、声が大きい。他に客がいないから良いものの……」


「あ、申し訳ありません! ……ちょ、ちょっと、奥で話を聞いても良いでしょうか」


「……まあ、そうした方がいいだろうな。あと、可能ならギルドマスターも呼んだ方がいいんじゃないか?」


「そ、そうですね。では、まずは奥へ案内します」


 そうしてオレは、魔法使いギルドの奥へと案内されることになった。


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