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元魔王が異世界でMMOを極めます!?  作者: renren
第3章 クエスト
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第3話 要件協議

お待たせしてしまい申し訳ございません。

ひとまず書き終わったので投稿です。


 オリヒメとキンバリーに連れられて入った生産施設のとある一室の中で、オレは二人と向き合っていた。

 そして何事かをキンバリーと相談したらしいオリヒメは、ある願いをオレに告げた。


「魔法式の講義?」


「はい。現在プレイヤーが使える魔法は、エディタに最初から入力してあった《ファイア》《ウォータ》《ブリーズ》《ストーン》しかありません。これは知っていましたか?」


「ああ、一応な」


 魔法式のエディタには保存機能があり、作成した魔法式を記録しておくことができる。

 一度作成した魔法式なら、この記録を読み出すだけで魔道具に入力可能となるのだ。

 もちろんこのゲーム独自の仕様というものであり、オレのいた世界にはなかった機能であることは言うまでもない。

 その記録の中にプリセットとして先に挙げた4つの魔法があることには気付いていたのだが、基礎中の基礎の魔法式であるためオレには不要だった。


「すでに色んな人がこの魔法式を研究し、さっき挙げた4つ以外の魔法を作り出そうとしましたが、どれも失敗に終わってしまっています。それはひとえに、この魔法式を構成するためのルールを知らないからです」


 オリヒメが言うルールとは、数学で言うと“足し算”の概念を知らないようなものだ。

 『1+1=』という数式があったとして、それが『1に1を加えた結果』を求める計算だということを知らなければ、答えは出せない。


「……つまり、オレにルールを教えてくれ、と言っているのか?」


「ええ。最初は、私達も自力でなんとかできるのだろうと思っていました。あ、自力で、というのは少し違いますね。例えば魔法式を習うためのチュートリアルなどがあるのではと思っていた、というのが正しいです」


 確かに、浩輝も言っていたが、普通そういった根幹のシステムについてはチュートリアルで教わるらしい。

 なのに、このゲームではそういったものが用意されていない。もしくはあったとしても、隠されでもしているのか。


「ですが、いくら街中を探してもそれらしきクエストはありませんでした。まだ街のすべてを探しきれているとは言えませんが、それでも何の情報も得られないのは確かです」


 オリヒメは一度そこで言葉を区切った。

 頭の中で自分の考えをまとめているのか、それとも伝え方を考えているのか。それほど長くない時間の後、再び話し出す。


「そんな中、掲示板に書き込まれた一つの魔法式がありました」


 いつの間にかキンバリーが隣に来ており、件の掲示板を表示させてオレに見せてくる。

 匿名で投稿されたそのSS(スクリーンショット)は、20項ほどの【身体魔法】を映していた。

 この投稿者は、間違いなくブルブルだろう。言い方が奴らしい。


「それは《筋力増強(ストレングスアップ)》と名付けられていました。私とキンバリーさんの予想ですが、この魔法式を作ったのは、あなたではありませんか?」


 オリヒメは緊張した面持ちでオレを見つめてくる。

 頑張ってキリッとした雰囲気を出そうとしているのだが、元々童顔のため、精々かわいいという感想しかない。


「ああ。それはオレがフレンドに教えた魔法式だ」


 オレがそう答えた途端、オリヒメとキンバリーは顔を見合わせ頷いた。その顔は「やっぱり」といった感じで、見ていて微笑ましい。


「じゃあ~、他にはどんな魔法式を作っているのかしら~?」


「そうだな。例えば、《火の矢(ファイアアロー)》や《風刃(ウインドカッター)》なんかの攻撃魔法、お前たちに教えた《鋭利化(シャープライ)》や《頑丈化(タフライ)》などといった補助魔法だな」


「攻撃魔法……! それです、それを教えて頂くことは出来ませんか!?」


 今のオリヒメからは、必死さが伺える。それだけこのゲームに不満が募っているのか、あるいはこの現状を憂いているのか。

 一度、現状を踏まえて自分の考えを整理してみよう。


 今のプレイヤーたちは、使い勝手の悪い基本魔法式のみでゲームをプレイしている。

 自由に魔法を使うことができるとうたったこのゲームで、魔法に不自由しているということだ。

 確かに、それは由々しき問題だろう。

 このまま魔法を自由に使えないとなれば、いつかプレイヤーたちの不満が爆発してしまう。その怒りが向かう先は当然このゲームの運営であり、もしプレイヤーからの要求が改善されないようなら、最悪の場合ゲームの存続が危うくなる。

 それはオレも浩輝も、望むところではない。


 オレとしては、プレイヤーたちにオレの知る魔法式の幾つかを披露するくらいは構わないと考えている。

 その理由は、オレにとっては魔法式の1つや2つ大した価値はないと考えていることもあるが、もう一つ、期待していることがあるからだ。

 それは、オレの知らない魔法式を生み出す可能性があること。

 すぐに目に見える成果が出るわけではないだろうが、いずれ彼らからオレの想像しえない魔法式が出てくるかもしれない。

 魔法の研究者として、そういうものには非常に興味がある。どんな突拍子もない魔法式が出てくるのか、楽しみですらある。


 オリヒメの要請に従って魔法式の講義を請け負う場合、時間的拘束が発生するが……それも問題にならない気がする。

 せっかく掲示板が匿名で利用できるのだから、それを使ってやるのだ。

 要は本をしたためるのと一緒だ。実際に本をしたためることに比べて、手間は少ないだろうがな。

 基本的な魔法式の考え方を具体例付きで解説してやれば、理解した者から順にオリジナルの魔法式を作成し始めるだろう。

 具体例には、初級に相当する魔法式が適当だな。かつてはオレ自身も学んだ内容であるから、解説も容易だ。


 こちらばかりが情報を公開するというのも不公平だろう。

 オレの期待を満たしてもらうためにも、プレイヤー側にも作成した魔法式を公開して貰おうか。

 報酬として中級魔法式や上級魔法式を示してやれば、プレイヤーたちにとってもいい刺激になるだろう。

 ここで言う中級魔法式や上級魔法式とは、魔法式の項数が多いことだけを指すのではない。

 無駄な項をいくつも繋げて何項を超えたから中級だ、などとそれこそ子どもの理論だ。

 中級技法を用いた約50項以上の魔法式のことを中級魔法式、上級技法を用いた約100項以上の魔法式を上級魔法式と呼ぶ。

 複数の魔法属性を扱うことはもちろん、変換式や出力式にも工夫が加えられたそれらは、もはや一種の芸術とさえ言えるほどに美しい。

 それらをこの世界のプレイヤーたちに広めることは、オレにとっても意義のある行為に思えた。


 さて、オレの中の結論としては、他のプレイヤーに魔法式の基礎を公開するのに否やはない。

 けれど忘れてはいけないのだが、ここにいるのは本来であればオレではなく、浩輝なのだ。

 浩輝の意見も聞くべきだろう。


(ん? ああ、構わないと思うよ?)


 お、おう。

 意外……というほどでもないが、随分あっさりと承諾するんだな?


(結局のところ、僕らのアドバンテージはさほど変わらないからね。それに、そっちの方が面白そうだ)


 まあ、浩輝も賛成なら問題ないか。

 オリヒメたちは考え込むオレを見つめたまま、じっとしている。いや、キンバリーは緊張の様子もなく欠伸あくびをしていた。ある意味大物である。


「わかった。オリヒメの要請を受けようと思う」


「本当ですか!」


「だが、条件がある」


「条件……。そ、そうですよね、さすがに無償で、というわけには行きませんよね」


「うん? ああ、対価を要求するわけではないぞ。それにオリヒメだけに教えるならともかく、全プレイヤーに公開しようとしていることでオリヒメからだけ対価を貰おうとは思わないさ。かといって、他のプレイヤーから授業料をとるつもりもない」


「ベルゼさん……。わかりました、ありがとうございます。それで、条件というのは?」


「オレが提示したい条件は2つだ」


 右手の指を2本立て、彼女らの前に見せる。


「1つ、オレの時間を拘束しないこと。……オレだってプレイヤーだ。このゲームを楽しみたい。それなのに、他のプレイヤーの教育のために時間を取られるのは御免だ」


「じゃあ~、どうやって魔法式のことを教えてくれるの~? ベルゼが時間を割いてくれないなら、教わりようがないじゃな~い?」


 キンバリーが文句の声を上げるが、オレはそれを意に介さず言葉を続ける。


「そのために、掲示板を利用する。専用の掲示板を立て、それに魔法式を書き込む。オレは掲示板に書き込む最小限の時間だけを割けばいいし、プレイヤーたちは何度でもその魔法式を閲覧できる。どうだろうか」


「そうですね……。できれば、書き込む魔法式には簡単な解説くらいは付けて頂きたいのですが……」


「もちろん、そのつもりだ。ある程度応用が効くように解説をつける。ただし、質問は受け付けない。何から何まで世話してやっては、意味がないからな」


「ええ、そこまでして頂くつもりは、私にもありません。人は知性を持つ生き物です。考えることを放棄することは、人を辞めるということです。私は獣になりたくありません」


「そこまで言うつもりはないが……、まあ、期待している」


 オリヒメの思考が少し過激だ。何かトラウマでも抱えているのだろうか?

 まあ、深く突っ込むことはないだろう。オリヒメは友人ではあるが、そこまで親しいわけでもない。


「2つ目の条件は、可能な限り魔法式の公開を推奨すること。秘匿するなとは言わんが、公開可能なものは公開させるようにしろ。最初のうちはオレが公開した魔法式の亜種しか出てこないだろうが、いずれ新たな魔法式が生まれることもあるだろう。オレを唸らせる魔法式を公開できたなら、報酬として魔法式のさらなる発展形を公開してやろう」


「魔法式の……さらなる発展形?」


「中級魔法式や上級魔法式だ。公開予定の初級魔法式とは違い、特定の技術を用いて構成する、より高度な魔法式。それを解説付きで公開しよう」


 オリヒメたちの目が見開かれる。

 オレがそこまでしようとするとは、予想していなかったのだろう。

 詳しく聞いてみたい、けれど聞くことはできない、そんな葛藤かっとうが伺える。


「さて、これで今言った2つの条件については了承してもらえたと思っていいのか?」


「はっ、はい、問題ありません」


「もちろんよ~。じゃあ、早速公開してもらいましょうか~?」


「まあ待て、そんなにすぐには無理だ。魔法式の選択とその解説文を付ける必要があるからな」


「もう~、仕方ないわね~」


 お前は何様だ。


「もう、キンバリーさん! 楽しみなのはわかりますが、そんな言い方したらダメです」


「ごめんね~、オリヒメちゃん」


「謝るならベルゼさんの方にです」


 まあ、いつもの一幕も見れたことだし良しとしよう。




 その後、オリヒメと打ち合わせして各属性の初級魔法とその解説文を作成した。

 解説文は、魔法式初心者であるオリヒメの監修が入ったことによりとてもわかりやすいものになった。

 ちなみに、公開した魔法式は以下の通りだ。


 ・【火魔法】……《火の矢(ファイアアロー)

 ・【水魔法】……《水の矢(アクアアロー)

 ・【風魔法】……《風刃(ウインドカッター)

 ・【土魔法】……《石の柱(ストーンピラー)

 ・【光魔法】……《光源(ライト)

 ・【闇魔法】……《暗闇(ダークネス)

 ・【雷魔法】……《電撃(エレキショック)

 ・【音魔法】……《騒音(ノイズサウンド)

 ・【重力魔法】……《重圧(プレッシャー)

 ・【付与魔法】……《硬化(ハードニング)

 ・【身体魔法】……《強化(フォース)

 ・【精神魔法】……《沈静化(カームダウン)

 ・【空間魔法】……《障壁(バリア)

 ・【合成魔法】……《解析(アナライズ)

 ・【創成魔法】……《立方体(キューブ)

 ・【自然魔法】……《成長(グロウアップ)

 ・【治癒魔法】……《治癒(ヒール)

 ・【呪霊魔法】……《呪術(カース)

 ・【無属性魔法】……《魔糸(ストリング)


 それぞれ3~5項程度の簡単な魔法式であるが、公式で公開されている4つの基礎魔法式に比べれば雲泥の差だ。

 これらの魔法式に加え、先程オレが挙げた2つの条件も明記した。

 掲示板の作成者(スレ主)の名にはハンドルネームというものを使用した。これは掲示板の匿名性を利用しつつ、これらの魔法式の作成者が誰であるかを明らかにするための措置だ。

 もちろんオレのアバター『ベルゼ』とは別の名だ。ハンドルネームの考案には一悶着あったが、オリヒメとキンバリーの強い意思に押されオレの意図しない名を名乗らされる羽目になった。

 その名には浩輝も頷いているようなので、オレとしては納得するしかなかったが。


次回の更新は2週間後の05/21(日)の予定です。


※2017/05/08(月) 誤記修正しました。

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