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元魔王が異世界でMMOを極めます!?  作者: renren
第2章 MGOの世界
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第4話 クエスト

 スキルを使ってワイルドドッグを2匹倒した後、オレは街に戻ってきていた。

 それほど街から離れてはいなかったので、《転移(テレポート)》は使っていない。

 前回は運良く誰にも見られなかったが、今回も見られないとは限らないからな。今後も《転移(テレポート)》を使うときは、可能な限り人目を盗んで使わなければならないだろう。

 それもまあ、《転移(テレポート)》を使うに足るレベルの【空間魔法】の使い手が現れるまでの話だが。


 ところで、やはり武器もいいが、魔道具も欲しいと思わないか?


(そうだね。今回特に思ったのは、切り替えの悪さだよね。できるなら、3つか4つ、魔法式を入力しておける魔道具があればいいんだけど)


 やはり浩輝もそう思うか。

 だが、魔道具は総じて高級品だ。それを手に入れるためには、金策が必要になる。何かいい案はないだろうか?


(もちろんあるよ。というか多分、これ以外ないだろうね)


 ほう? それは何だ? オレにもできるのだろうか?


(ああ、できるよ。というか、ディア……じゃなくて、ベルゼなら余裕じゃないのかな)


 オレじゃなく、ベルゼになら……?

 はて、ベルゼはオレのこのゲーム世界での分身といえる。オレにはできず、ベルゼにできるということがあるだろうか?

 ……いや、そうか。オレとベルゼの違い、確かにあるな。


(クエストを受けよう。ベルゼなら、きっとどんなクエストでも魔法を使って一発で解決できるよね!)


 オレとベルゼの違い。それは、ベルゼ(オレ)はこの世界でなら、魔法が使えるのだった。




 というわけで覗いたのは攻略情報掲示板。

 システム機能によりインターネット上の特定のサイトにアクセスできるようになっており、そこでは常に情報の交換、プレイヤー同士の交流が行われているらしい。

 攻略情報掲示板は、このMGOをプレイする上で役立つ情報の掲載を目的とした掲示板で、主にクエストなどに関する情報がやり取りされていた。


(えっと、今受けられるクエスト情報は……?)


 ちなみに、今オレがいるのは街の酒場だ。

 注文はすでに済ませており、オレの前にはエールが置かれている。

 浩輝は現実ではまだ未成年のため、酒は飲んだことがないと言っていたが、オレが飲んだエールの味も特に苦にしていなかった。

 それも「意外と美味しいね」などと言っているのだから、こいつは将来酒呑みになる可能性があるな。


(お、コレなんか良さそうだよ。『ワイルドドッグ討伐』だってさ。(フリー)クエストって書いてある)


 その(フリー)クエストというのは?


(それについては、まだ情報が出揃ってないみたい。フリーって言うくらいだから、受けるのに条件があるとかじゃないとは思うんだけど)


 掲示板上でも、それについての議論がなされているようだ。

 (フリー)クエストの他にも、(ストーリー)クエスト、(パーティー)クエストなんていうのも見つかっているらしい。


(ワイルドドッグの討伐クエストは、1匹討伐につき300ユルドだって。上限はないみたいだから、多く狩れればそれだけ報酬も多くなるってことだね)


 今の所持金はなんだかんだで1000ユルドを下回ってしまっている。

 クエストを受けることに否やはないが、できれば短時間で効率よく稼ぎたい。


(でも、これ以外はあんまりおもしろくなさそうなんだよね。お使いとか、素材採取とかばっかり)


 そうか……。そう都合のいいクエストはないということだな。

 だが、素材採取はワイルドドッグ討伐のクエストと同時に受けておくこともできるんじゃないか?


(ああ、そうかも。1度に一つしかクエストを受けられないなんてどこにも書いてないしね。なら、まとめて受けちゃおうか)


 各クエストの依頼人は、街の住人たち――NPCだ。

 依頼を総合的に管理している斡旋所のようなものも存在していないため、各々の足で依頼人のところへ赴き、クエストを受ける必要があるらしい。


(冒険者ギルドっていうのは存在しないの?)


 冒険者ギルド? そもそも、ユルドフェルシルには冒険者という職業は存在しないぞ。存在しないもののギルドは作りようがない。


(ふ~ん? じゃあ、街の住人からの依頼は誰が誰がやっているの?)


 その冒険者ギルドというものと街の住人からの依頼がどう結びつくのかはオレには理解できないが……、まあ、回答としては街に住む魔法使いたちだな。

 魔法使いたちには、国内を自由に移動する権利と国の税金を支払わなくても良い権利が与えられている。

 その代わり、やむを得ない場合を除いて、可能な限り街の住人に対してその技能を振るい、人々の生活を手助けする義務があるがな。


(そうだ、その魔法使いのギルドはないの?)


 そうか、オレもすっかり失念していた。

 確かに魔法使いのギルドは存在する。そこでは確かに、魔法使いへの依頼がいくつか届けられていたはずだ。

 だが、この街にあっただろうか? すまないが、記憶にない。


(なら、街の住人に話を聞くか、歩きまわって探そうか。どちらにしろ各(フリー)クエストを受けるために住人に話を聞きに行かなきゃならないんだし)


 (フリー)クエストも受けるのか?


(お金が必要なんでしょ? 受けておいて損はないと思うけど)


 それもそうか。

 なら、まずはこの酒場の店主に話を聞いて、魔法使いギルドがあるならそこへ向かおう。途中で受けられる(フリー)クエストを受けながら進めば効率がよさそうだな。




 酒場の店主に話を聞いた所、やはりこの街にも魔法使いギルドはあるようだった。詳しく聞くと、街の南東にそれはあるらしい。

 オレは頼んでいたエールを飲み干し、酒場を出ることにした。


 街の南東にあるという魔法使いギルドに向かいがてら、浩輝が掲示板で調べてくれたクエストを受けていく。

 受けることにした依頼は、『ワイルドドッグ討伐』、『アマナ草採取』、『ウィードピジョン狩り』、『石拾い』の4つだ。

 『ワイルドドッグ討伐』は、酒場で浩輝が説明してくれたように、ワイルドドッグを倒した数に応じて報酬が支払われるというものだ。

 『アマナ草採取』は、チュートリアルクエストでも扱ったアマナ草という薬草を集めてくるという依頼。これは達成条件が5個以上であり、追加分に応じてボーナスがあるという話だった。

 『ウィードピジョン狩り』はそのまま、生命力の高いウィードピジョンを狩るという依頼。こちらは討伐数が5羽と固定で、報酬額も固定だった。

 『石拾い』は、街の外に落ちている小石を拾って来いという依頼だった。最初、依頼の意味がわからなかったのだが、どうやらこの小石、宝石の原石が混じっている場合があるらしく、それを細工師が必要としていたのだ。指輪やネックレスに加工するのだろう。

 向かいがてらとは言ったが、依頼内容を話してくれるNPCは当然街のあちこちにバラけており、かなりの距離を歩かされる羽目になった。


 そうして、ようやく魔法使いギルドに到着した。

 時間はとっくに昼を過ぎており、14時前に差し掛かっている。ここで話を聞いたら、一度昼食を摂るためにログアウトした方がいいかもしれない。


(言われてみれば、なんだかお腹が減ったような……? そういえばこれ、生理現象とかどうなってるんだろ……。まさか、ログアウトした途端一気に畳み掛けて来たりはしないよね?)


 知らん。そんなことより、中に入るぞ。


(ちょっ、そんなことって! 大事なことだよ! 主に僕にとって!)


 わかったから、話が終わったら休憩するから。な?


(絶対だからね!)


 魔法使いギルドの建物は、一見すると小規模な商店のように見える。

 だが中に入ると空間魔法により空間拡張されて――いるはずもなく、外見そのままにこぢんまりとしていた。


(なんだかあんまり魔法使いギルドって感じじゃないけど……)


 だが、確かに酒場の店主から聞いた場所はここだったはずだ。

 建物の中は、来客受付用と思われるカウンターが3つ並んでおり、客を待たせるための安物っぽいソファがいくつかあるだけだった。


(地方の銀行の窓口みたいだね)


 そんなよくわからない例えを言われても、オレには想像すらできんのだが。

 とりあえず、受付の人もこちらの様子を伺っているし、話を聞いてみようか。


「おい」


「はい、何か御用でしょうか?」


 オレが声をかけたのは、中央のちょっと細めの人間族の女性だ。

 サラッとした栗色の髪が美しいお姉さん風の受付嬢は、ぶっきらぼうなオレの声にも笑顔を浮かべて反応を返してくれた。


「人伝に聞いて来たんだが、ここは魔法使いギルドだよな?」


「ええ、そうですよ。魔法のことなら魔法使いギルドへ! お客様の困り事を、魔法でスパっと解決しちゃいますよ!」


 実にいい笑顔だが、言っていることはちょっと的外れだ。


「ああ、依頼の持ち込みじゃないんだ。オレも魔法使いなんだが、何か手伝えることはないかと思ってな」


「そうなんですか? あまり見ない顔だから、てっきりお客様かと思ったのですが……」


 そんな残念そうな顔をしないで欲しい。

 美人に困り顔をされると、オレも困ってしまう。


「今日、この街に来たばかりなんだ。だが、路銀が心許ないから、手っ取り早く稼ぐ方法を探していてな」


「あ、旅の魔法使いさんだったんですね!」


 気を取り直した受付嬢さんに、まずはお掛けください、と促されて、カウンターの前に設えられた椅子に腰掛ける。

 椅子は安物のようで、ギシッと嫌な音を立てたが、壊れるほどではないようだ。当たり前か。


「えーと……、確かにお手伝い頂きたい仕事はいくつかございます。魔法ギルドの登録証はお持ちでしょうか?」


 登録証か、そういえばそんなものもあったな。

 オレが前の世界にいたときは確かに持っていたんだが、今は当然持っていない。

 ここは発行してもらうしかないだろう。


「いや、持っていない。発行は可能だろうか?」


「もちろん可能ですよ。少々お待ちください」


 受付嬢が机の下から取り出したのは、水色に透き通る水晶玉だ。

 それに目を向けると、水晶玉の向こう側に受付嬢のなだらかなお胸様が見えた。合掌。


(まるで占いでも始めるみたいな感じだね)


 実際、あながち間違ってもいないな。

 それを使うのが、受付嬢(占い師)ではなくオレ()というだけで。


「……それでは、登録証の発行のため、こちらに左右どちらかの手を置いてください」


(で、これは何なの?)


 端的に言えば、登録証を発行するために必要な情報を使用者から抽出する魔道具だ。

 詳しい原理はオレも知らないが、一々質問に答えて情報を聞き出すよりも早いし便利なのは間違いない。


 言われた通り水晶玉のような物体に右手を置くと、受付嬢がどこからかカードサイズの金属質な板を取り出した。その板が登録証の媒体となるのだ。

 受付嬢がその板をオレが右手を置いている水晶玉に近付ける。すると、その板から徐々に文字と記号が浮かび上がってきた。

 最後の文字と記号が浮かび上がるまで、約1分といったところだろうか。完成した登録証には、オレの名前と、各魔法属性を象徴する記号が描かれていた。


「え……? こ、これ、本当に?」


 それを見た受付嬢さんの笑顔が固まった。

 そこに浮かび上がっていたのは、全19種の魔法属性、そのすべての記号。

 そんなに驚くことだろうか?


「何を驚いている? それくらい、人間の魔法使いなら可能だろう?」


「ええ、“()()()()”ですが……。と、とにかく、こちらの内容に間違いはございませんか?」


「ああ、大丈夫だ」


「そ、そうなんですね……。あ、失礼しました。それでは、ベルゼ様に斡旋可能な仕事を探してきますので、もうしばらくお待ちください」


 そう言って、受付嬢は奥に引っ込んでしまった。

 カウンターの奥は中が見れないように仕切られており、あの受付嬢が何をしているかを伺い知ることはできないようだ。


(あのお姉さん、あの登録証を見て驚いていたけど、なんでだろう?)


 どうやら、オレが全19種のすべての魔法属性を使用できることに驚いていたようだな。

 人は誰しも、得意なこと、苦手なことがあるだろう? 魔法も同じで、人には得意な魔法属性や苦手な魔法属性がある。

 人間族の魔法使いは他の種族の固有魔法を除いたすべての魔法属性に適性があるから、“理論上は”すべての魔法を使うことが可能だ。だが、術者本人の得手不得手により、使えない魔法属性や使っても弱い効果しか発揮できない魔法属性がある。

 極端な例だが、得意な魔法属性を一切持たない人間は魔法がほとんど使えないし、苦手な魔法属性を持たない人間はすべての魔法属性を使える、ということだ。


(なるほどね。じゃあ、ディアはその極端な例なわけだ)


 そういうことだな。

 おっと、受付嬢さんが戻ってきたみたいだな。


 その受付嬢さんは、木製のトレイを持っていた。

 トレイの上には、上質紙の束が載せられている。束と言っても5、6枚だ。あの紙にオレに斡旋する仕事の内容が書かれているのだろうと推測する。

 その紙束を机の上に並べ、先程の驚いた表情はどこへやら、柔和な微笑みでオレに差し出してきた。


「それでは、こちらがベルゼ様に斡旋可能なお仕事になります。好きなものをお選びください」


「わかった」


 差し出された紙を順繰りに見ていく。

 住人からの依頼内容は、どれも魔法使いにとっては簡単でも、魔法使いでない者にとっては話にならないものばかりであった。

 そんな依頼の内の一つに目が止まる。そこには「鍛工炉の火力調整」と書かれていた。

 依頼元は鍛冶職人組合だ。依頼内容の欄には、「鍛冶に使用する炉の火力が弱くなってきたので、強くして欲しい」と記載されている。


「あ、それは鍛冶職人組合からのご依頼ですね。以前から鍛工炉の調子が悪い、と仰っておられまして、この度依頼を頂いた次第です」


 依頼内容は極めて簡単に思えるが、火力を調整するには火魔法が使えればいいなどという単純な話ではない。

 鍛工炉の火力調整をしているのは魔道具であり、魔道具は魔道具職人しか直せないからだ。普通は鍛冶職人の親方か誰かが懇意にしている魔道具職人に依頼する内容のはずだが、なぜ魔法使いギルドにこの依頼があるんだ?


「おい、この街の魔道具職人は何をしているんだ?」


「え? 魔道具職人……ですか?」


「この依頼はどう考えても魔道具職人向けの依頼だろう?」


「ああ、はい。なんでも、魔道具職人の方が体調を崩されているらしく、仕事ができないようです。しかし、炉の調子も良くないため、苦肉の策で当ギルドに依頼を出したのでしょう」


「それを受ける方もどうかしている……! 他の魔道具職人を探すなりすればいいものを」


「えっと、ご存知ないようですので一応言っておきますが、この街には魔道具職人の方は一人しかいらっしゃいません。しかもかなりご高齢の方です。確かお弟子さんがいたはずですが、今はもう他の街に居を構えていると聞いています」


「そういうことか」


(どうするの?)


 その魔道具職人の体調を元に戻させるしか無いだろうな。治癒魔法で治る類だといいんだが。


「……その魔道具職人の住む場所を教えてもらえるか?」


「は? えっと、構いませんが、何をされるお積もりでしょうか?」


「もちろん、体調が回復に向かうよう手伝ってやるのさ」


いつも読んでいただきありがとうございます。

次回の更新は2週間後の11/28(月)の予定です。


※2016/12/29(木) 表現の一部を修正しました。


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