2 ...。
「到着ですよ」
船長さんが私達にほほえみかけた。
「うっわー。綺麗だな」
新太が真っ先に船を降りる。
その後を私とお母さんとお父さんが追いかけて船を降りた。
「新太。あまりうろちょろしないでね。すぐに迷子になるんだから」
「母ちゃんは心配し過ぎだって。俺はそんな子供じゃないし」
まだ小学五年生のくせして。
船に乗る前にいきなりいなくなって出発時間遅れたの誰のせいだよ。
「ちょっと姉ちゃんまでそんな目してこっちみんなよな」
「別にみてないから少しは静かにしてて」
新太はチェッと一言口に出してから不満そうだったが大人しくなった。
「船長さん。ありがとうございました」
「いえいえ。楽しい暮らしを。ここは本当に良い所ですよ。私が保証します」
「そうですか。ではここに決めて正解でしたね」
「ええ、どうぞ満喫して下さいね」
お父さんと船長さんが話している中、私は辺りを見回す。
振り向くと海。
あぁやっぱ綺麗だな。
あれ?あそこにいるのはもしかしてイルカ?
何年か前に水族館で見たっきりだ。
何匹かで水面の上を美しく飛び跳ねる。
そこから飛び散った水滴がキラキラと輝く。
島の方は緑が多い。
見るからに空気が綺麗そうで誰でも住みたいと思うだろう。
「海架」
お父さんが私を呼んだ。
振り返る。
「駅があるんだ。電車で新居まで行こう。ほんの少ししか電車が走ってないらしい。14時に電車が来るからそれに乗らないと何時間も待つことになるぞ。よし急ごう」
「えっ。どうしてそんなに電車が通ってないの」
私には驚きだ。
都会には分刻みで電車が来ていたからこんなことには全く困らなかった。
「どうしてって…そりゃまあ島だしこんなもんじゃないか」
「ふうん」
不便なところもやっぱあるよね。
でもまあ、あんな苦しいところよりは絶対にマシ。
「ほら行くぞ」
「うん」
それから歩いて駅に到着。
丁度電車が来て止まった。
たったの二車両。
そこに二、三人乗っている。
こんながらがらで静かな電車初めて。
私は少し緊張した。
「海架。隣おいで。ほら新太はこっちに座って」
お母さんの隣に腰を下ろすとすぐに電車は動き出した。
窓からみえる木々。
その木と木の間からお日様の光が差し込む。
「あ、家だ」
そんなことを考えていると家がちらほらとみえてくる。
なんか外国みたい。
いや、外国じゃないんだけどね。
こんな綺麗なところがあるんだって。
家も鮮やかなパステルカラーがほとんどでやわらかい印象。
景色がどんどんうつりかわる。
その度にここが好きになっていくようで。
この島…やっぱり良いな。