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8 ...。

「それでね、yumeちゃんが昨日のライブステーションに出てたの!」

「え、涼香、それ本当?録画しておいたかな?やらかしたかも」

「海架~~~。嘘でしょ~!?新曲の『海のメロディ』テレビ初披露だったんだよ」

yumeは若い世代から超絶の人気を誇っている女性シンガーソングライターだ。

私と涼香は五年生から同じクラスで

yumeの歌う曲が大好きで意気投合した仲だった。

「本当!?でもネットでMVは見たよ。一回聴いただけで歌詞覚えちゃったもん」

「涼香も!」


空は青いまま 海も青いまま

私の歌は誰にも届かない

涙がこぼれ落ちる


私達は二人で声を合わせて歌った。

このまま涼香とずっと友達だと思ってた。

それなのに…

何が私達の日常を狂わせていったのだろうか。


その日は小学六年生の始業式の日だった。

いつも通りの帰り道を涼香と一緒に歩いていた。

「ねえ…あのさ、涼香の話聞いてくれる?」

「ん?どうしたの?」

「今日のお昼休みだったんだけど…」

そういえば給食が終わった後、教室の中を探しても涼香の姿はなかった。

どこに行っていたのだろう。

「あのね、涼香ね、告白されちゃったの」

「え?え?ま、まじで?誰に!?」

「誰にも言わないでね?隣のクラスの田中君…」

田中君といえば学年でも人気のある男子だ。

「凄いじゃん!涼香可愛いもん。そりゃ好きになるよね~」

それを聞いた涼香は顔を赤らめて俯いた。

「そんな事ないよ。たまたまだって…」

「まぁ~た、そんな事言っちゃって。それより返事は?どうするの?」

「うん…。実は涼香も前から田中君の事、良いなって思ってて…」

「付き合うっ?」

涼香はモジモジしながら顔を私に向けた。

「うん…」

私は心から喜んだ。

「おお~!?おめでと~っ!何だか私が嬉しいや」

「何で海架がそんなに喜んでるのよ」

「だって一番の大親友だよ?嬉しいに決まってるじゃん!」

「ははっ、海架…ありがとう」


それから涼香と田中君は付き合い始めた。

相手が人気のある田中君だったために二人が付き合っているという事実はすぐに学年全体に知れ渡った。

付き合い始めてから二人はよく一緒に帰ったり、

田中君が私達のクラスに来たりと良い関係を築いていた。


何日か経ったある日。

私はある女子のグループから呼び出された。

「ねえ、海架ちゃん。涼香ちゃんと田中君って付き合ってるの?」

田中君と同じクラスのユリアちゃんと

そのとりまきのアミちゃんとリエちゃんだ。

クラスの中でも一際目立つグループ。

「うん。付き合ってるけど…それがどうかしたの…?」

私がそう答えるとアミちゃんが乗り出して言った。

「ユリが田中君の事が好きって知ってたよね?なんであいつ付き合ってんの?」

「え…?」

そういえば聞いたことがある…。

ユリアちゃんは田中君の事が何年も好きで追っかけてるって…。

だけど私達はそこまでユリアちゃんとは話す機会もなく、仲が良いという訳でもなかった。

「海架ちゃんと涼香ちゃんも分かってたよね?ユリがずっと好きだったって事」

リエちゃんが睨む。

「し、知ってたけどそういうのは人の勝手じゃん…。涼香だって田中君の事が好きなんだよ…」

涼香が責められるのは絶対におかしい。

「ユリアさ前から涼香ちゃんの事嫌いだったんだよね」

ユリアちゃんが口を開いた。

「わかるー。男に興味ないフリしてカワイ子ぶってる感じ。ほんっとウザイ」

「そこまで可愛くもないのに気持ち悪いよね」

ユリアちゃんに続いて二人は涼香の悪口を言い始めた。

酷い…。涼香はそんな子じゃないのに…。

「それでさ海架ちゃん」

ドキッ。

「私らこれから涼香ちゃんの事無視するから、あんたも無視してね」

「どうして私も…」

「当たり前でしょ。ていうかあんただけじゃないし、他の女子にも協力して貰うから」

笑いながらユリアちゃんは言った。

「ユリ、そろそろ行かないと予鈴なる」

「そうね。教室戻ろ」

三人は私に目もくれずお喋りをして教室に戻って行った。


私が教室に戻ると後ろの席の涼香が此方に手を振った。

「海架~?どこに行ってたの?探したんだよ~」

「うん…ちょっとね」

席に着くと涼香がいつも通りに私にお喋りを始めた。

私は上手く話せていただろうか。笑えていただろうか。

不安だった。


その日、家に帰ってから携帯をみた。

グループチャットの通知が多くきていた。

六年生女子全体のグループから涼香一人が退会させられていた。

それも…ユリアちゃんによって。

ピロンッ、ピロンッ。

チャットの通知がくる。


≪ユリア:涼香ってウザイと思わない?≫

≪アミ:思うそれ!≫

≪リエ:実は私も前から思ってたんだよね~≫

≪A子:私も…ちょっと思ってたかも…≫

≪B美:私もwww≫


何それ…涼香の事本当はそんな風に思ってないくせに。

みんなユリアを恐れてどんどん涼香の敵が増えていく。


≪ユリア:それでさ、皆で涼香の事無視しない?≫

≪C菜:大丈夫なの?そんな事して(笑)≫

≪リエ:大丈夫だって。どうせあの子あんまり友達いないじゃん≫

≪C菜:それもそうだね≫

≪ユリア:ってことで明日から涼香の事無視始めます~≫


私は携帯を閉じた。

溜め息が出る。

やっぱりこんな事良くない。

涼香は親友なんだよ。

私には無視なんて出来ない。

絶対に無理。

例え、皆が敵でも私は、私だけは涼香の味方でいてあげなくてはならない。

決めた。


その後、私は自分からグループチャットを退会した。


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