第459話 軍オタアフター ナパーム弾って何?
12月15日(日曜日)に、明鏡シスイ新作 『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』 をアップしました!
17日~22日までは1日3回アップする予定なので是非チェックしてください!
魔人大陸のほぼ中央にある元六大魔王の一角が封印されている墓地穴。
その墓地穴から溢れ出る数万規模のゾンビ系モンスターを倒すため開発しようとしている兵器の名前は――『ナパーム弾』である。
では『ナパーム弾』とは一体どいう兵器なのか?
超簡単に説明すると、『ゼリー状になった燃料を詰めた爆弾』のことだ。
ゼリー状の燃料にするため、材料に油を使っている。
故に人体や家屋にゼリー状の燃料が付着すると、水で洗っても、擦ってもなかなか落ちない。材料に油を使っているからだ。
さらに燃えた際の温度が非常に高く、摂氏1000度を楽に超える。
つまりナパーム弾とは『敵対象に付着したら簡単に洗い流すことも、擦り落とすことも出来ない状態で高温で燃える』非常に殺傷能力が高い爆弾ということだ。
こういった爆弾のことを『焼夷弾』とも呼ぶ。
ちなみに通常の爆弾より、基本的に焼夷弾の方が与える被害が大きい。
なぜかというと……通常の爆弾の場合『爆弾に詰まれた爆薬が爆発した際の衝撃、破壊力で周囲を破壊する』だけだ。
しかしナパーム弾(焼夷弾)の場合、対象を燃やすため可燃物が周囲にある限り、どこまでも燃え広がってしまう。
そのためナパーム弾(焼夷弾)の方が、周囲に与える被害が大きいのである。
ナパーム弾はあまりに殺傷能力が高いのと、燃え広がる性質上、軍や民間人関係なく被害に巻き込まれる可能性がある非人道的な兵器のため前世地球では国際ルールで使用を一部禁止されてしまった。
とはいえここは異世界のため、地球の国際ルールを律儀に守る必要はない。
しかも相手はゾンビ系モンスターだ。
先程も説明した通り、ナパーム弾は普通の爆弾とは違い燃えるモノがある限り、どこまでも燃え広がってしまう。
つまり、燃えるモノであるゾンビ系モンスターが居る限り、勝手に火が燃えて敵を倒してくれるのだ。
これほどゾンビ系モンスター退治に適した現代兵器は無いだろう。
さらに前世地球でならばナパーム弾の製造方法自体、実はそれほど難しくない。
一番簡単に作れる方法として、台所にある物とガソリンさえあれば素人でも数時間で完成させることが出来る。
難しい工程もなく、小学生でも製造できるレベルだ。
しかしこの世界にまずガソリン自体存在しない。
なので今回も魔力や魔石等を使って、ゼリー状の燃料を作り出すことから始めなければならないのだ。
とはいえ燃料を詰める外殻なども含めても大凡10日前後あれば兵器として使用できる物を作り出せる自信があった。
ただやはり問題は、それまで城壁を持たせることが出来るかだ。
「こういう場合に備えてぼくたちの同族が、外へ出て協力者との関係を作っていたのですが……想像以上に敵の数が多いのと、あまりの臭いに獣人系はもちろん、普通の嗅覚しか持たない人種族の方でも駄目というのが多くて……。正直に言えば10日間も持たせる自信はありません」
『腐敗ノ王』は嘘を付かず、冷静に状況を計算して話してくれる。
彼なりの誠意なのだろう。
「ですよね……どう見ても根本的にマンパワーが足りていないですから」
今はまだキメラ族や協力者達が使命感による士気の高さで持ち堪えているが、それが永遠に続くとは誰も考えていない。
生物である限りどこかで休み無く動き続けることはできず、このまま続けばいつか必ず防衛に手が回らず城壁を突破される。
城壁から溢れ出たモンスター達は、魔王へ生命を捧げるため人や魔物など関係なく襲いかかるだろう。
最悪、太古に弱らせ封印したはずの魔王が蘇る可能性すらある。
さすがにそんな事態は避けたい。
「一応、話は聞いていたので臭いを抑える魔術道具を持ってきているので、それが有効かどうかためさせてもらいますね」
「本当ですか!? さすが勇者にして英雄殿ですね! まさかそんな魔術道具まで開発しているなんて!」
「あまり期待はしないでください。臭いを抑える魔術道具とはいっても、結局完成することができなかった失敗作ですから」
それでも気休め程度にはなり、戦える人数が増える可能性が高い。
今日はもう遅いので明日、オレ達の番になったら『臭いを抑える魔術道具』を実際に使用し、戦ってみる約束を交わす。
もしこれが有効ならルナに量産してもらい、配布する予定だ。
こうして多くの課題と不安を残しつつ、緊急クエスト1日目が終わりを迎えたのだった。
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翌日、夕方。
昨日、オレ達に割り当てられた家屋リビングにオレとクリス、旦那様が集まり、今日の戦いについての反省会を交わしていた。
ちなみにメイヤ&ルナは別の建物で『ナパーム弾』の研究・作成をおこなっている。オレもこの話し合いが終わったら合流する予定だ。
スノーとココノは、飛行船ノアで獣人大陸ココリ街へ引き返している。
あまりの臭さに撤退した訳ではなく、リースがおらず『無限収納』が使用できない現状、輸送機としてココリ街に必要な物資を取り向かってもらっているのだ。
飛行船ノアには当分、ココリ街と封印都市マドネスの間を往復してもらう予定だ。
さて、オレは腕を組みテーブルに置かれた臭いを抑える魔術道具『ガスマスク』を前に唸り声をあげる。
「予想通りあまり意味がなかったか……」
『獣人系の団員さんに無理を言って使ってもらいましたが、城壁まで近付くことは出来ても中に入ることは出来ませんでしたものね』
隣に座るクリスの言葉通り、今回参加してもらっている新・純潔乙女騎士団団員から犠牲者――げふん、ごほん、鼻が良い獣人系に協力を頼みガスマスクを被ってもらった。
ガスマスク効果のお陰で城壁までは近づくことが出来たが、臭いが篭もっている内部に入るのは無理だった。
なら『城壁上部から地上へ向けて攻撃魔術を放つ分には?』と提案したが、内部よりはマシだが無理と即断されてしまう。
結局、彼女は墓地穴から溢れ出るゾンビ達と戦うことはできず、他都市から封印都市マドネスへと運び込まれる物資の護衛任務に戻ってしまった。
封印都市マドネスから離れれば臭いを気にしなくて済むので、鼻が良い獣人系には現在こちらを担当してもらっている。
大切な仕事ではあるのだが、出来れば戦う方へと回って欲しい。
旦那様がテーブルの上に置かれたガスマスクを手に取る。
「リュートよ、このガスマスクという魔術道具に一定の効果があったのは確かだ。これをもっと改良し、強化すれば臭いに敏感な者達も参戦できるようになるのではないか?」
「申し訳ありません、旦那様……それでも精一杯頑張って改良した物なんですよ」
旦那様の指摘はもっともだが、これ以上ガスマスクの性能を上げることは難しい。
ちなみにガスマスクとは?
元々は鉱山で作業すると、どうしても粉塵が出る。その粉塵を吸わないようにするために、防毒マスクが開発された。
防毒マスクには大きく分けて2つの種類がある。
一つ、顔を隠すように全部を塞ぐ『全面マスク』。
一つ、鼻と口だけを塞ぐ『半面マスク』だ。
(他にも分類として吸収缶が口から離れているもの・口と直結しているもの等がある)
オレが開発・研究しているのは『全面マスク』の方である。
よく映画や漫画、アニメなどのエンターテーメントで特殊部隊隊員が目元は丸いガラスをはめ込み、口元にごつい部品がついたマスクをしている。
アレを開発・研究しているのだ。
防毒マスクの構造はある意味でシンプルだ。
口元の部品――吸収缶と呼ばれる缶に、汚染された空気を通して濾過し、人が吸っても問題無いようにしている。
乱暴な言葉で説明すると、この吸収缶と呼ばれる缶に空気を清浄化(有害物質を吸収)する物質を入れればいいのだ。
但し汚染されている空気の種類によって、キャニスターに詰める物質が変わる。
『どんな毒ガス攻撃でも、防毒マスクさえあれば万事OK!』という訳ではないのだ。
ガスの種類によって、防毒マスクの種類(吸収缶に詰める物質)を変えなければ意味がないのである。
オレが開発・研究している防毒マスクの場合、前世地球の軍隊で使用されている活性炭を使っている。
この活性炭に他臭いを消臭する物を混ぜ、さらに魔術的に処理をしている。
元々は風船蛙の悪臭液を消すため『砂』と呼ばれる消臭剤を作った。
それでも臭いため、防毒マスクを開発したのである。
ただどれだけ頑張っても、さすがに前世地球の軍隊で使用されている防毒マスクには届かない。
中途半端な代物しか開発できていないのが現状である。
これ以上の性能を求めるなら、年単位の時間が必要になるだろう。
一通り説明を聞いた旦那様が唸り声をあげつつ、腕を組む。
「リュートが言うのなら、ガスマスクという魔術道具の性能を上げるのは難しいか……」
『かといって、このまま人手が足りないと、近内に城壁が突破されかねません。今夜も協力者の冒険者さん達が無理をして一晩中戦うという話ですし』
親子そろって腕を組み唸る。
容姿は似てもにつかないが、仕草が似通っているため微笑ましくほっこりしてしまう。
和んでも解決方法は浮かばないのだが……
「臭い……臭いか……臭いの元の分子を分解か、吸収すればいいんだよな……消臭剤の砂を大量にばらまくか? でも、それだけでどうこうできるレベルじゃないし……」
オレもクリス&旦那様親子に習って腕を組み悩むが、そうそう簡単にアイデアは出てこない。
3人揃って頭を抱えていると――。
「どうやら困っているようだなリュート・ガンスミス」
突然、気配もなく声をかけられる。
驚愕し、声がした方へ視線を向けると――そこにはエル先生の妹である邪神アルを封印するための旅に出ていたはず獣人種族、虎族、魔術師S級、獣王武神、タイガ・フウーが立っていた。
天下の魔術師S級が颯爽と駆けつけてくれたにもかかわらず、オレ達は残酷な未来しか想像できなかったのだった。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
『令和1年12月15日(日曜日)』に明鏡シスイの新作をアップさせて頂きました。
タイトルは『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』です。
軍オタ好きの読者様なら楽しめる作品になっているので是非是非チェックして頂ければと思います。
新作は作者欄からも飛べますが、一応URLも張らせていただきます。
以下になります。
https://ncode.syosetu.com/n5526fx/
新作&こちらの軍オタアフター(明日もまたアップします)共々よろしくお願い致します。




