第458話 軍オタアフター 新兵器
12月15日(日曜日)に、明鏡シスイ新作 『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』 をアップしました!
17日~22日までは1日3回アップする予定なので是非チェックしてください!
魔術師S級『腐敗ノ王』と挨拶を終えたオレ達は、彼に案内されて城壁外にある建物に通される。
建物は石材を材料に建てられた普通の家屋だ。
「ぼくたち一族は墓守という性質上、どうしても排他的になってします。ですが、こういう場合に備えて皆さまが宿泊できる施設の維持もおこなっているんです。なので遠慮なく、ご利用してくださいね」
「あ、ありがとうございます。部下共々、遠慮無く使わせていただきます」
家屋リビングで座り対面する面頬兜を脱いだ魔術師S級『腐敗ノ王』が、ほわほわとして美少女顔で告げる。
身長はクリスより少し高いぐらいで、獣耳に、長い髪を一本の三つ編みに編んでいた。顔立ちも相まって本物の美少女にしか見えない。
これで性別が男というのだから信じられない。
じっくりと観察し過ぎたため、目ががっちり合う。
彼は『美少女顔過ぎて男に見えない』という視線に慣れているせいか、『しょうがないな』と言いたげな微苦笑を漏らす。
あまりの失礼な視線に、隣に座る嫁のクリスに肘でこづかれてしまった。
「勇者にして英雄殿は人種族で、ぼくたちキメラ族と顔を合わせるのはこれが初めてのご様子。奇異の視線になるのは当然なのでお気になさらないでください。ぼくたちも気にしませんから」
別にそういう視線を向けていたのではないが……。
わざわざ『美少女顔過ぎて男に見えない』からと訂正する訳にもいかない。
ちなみに彼曰く、キメラ族とは魔人種族内部でも最も多様性が極端に高い種族だとか。
片方がコウモリの羽根で、反対側が鳥だったり、蛇の尻尾や猫の尻尾、右手が猫の手で左が犬だったり、キメラ族内部でそれだけの多種多様な変化を持つ種族である。
「ぼくの場合、キメラ族では珍しくあまり変化が少ないタイプですが」
『腐敗ノ王』自身はトカゲの尻尾に、獣耳(垂れた犬のような耳)、蛇族の牙を持つ。それらを除けば、他人種族と変わらない。
なぜこれだけキメラ族内部で多種多様な変化があるのか?
その原因はこの地に封印されている魔王にあるらしい。
他魔王に比べて、この地に封印されている魔王は『種』を弄ることに多大な興味を抱いていたらしく、結果、魔人大陸では多種多様な一族が誕生したというのが定説だ。
その中でもっとも『種』を弄くり回されたのがキメラ族で、以後、二度とこのような命を弄ぶ行為がおこなわれないよう彼らの先祖は墓守を買って出たらしい。
彼は一族の説明を終えると、軽く咳払いしてから話を切り替えた。
「改めて遠い地からよくぞ来てくださいました、勇者にして英雄殿。ぼくは魔人種族、キメラ族、魔術師S級、ジオ・クライネル。ぼくのことはどうか『腐敗ノ王』とお呼びください」
「……PEACEMAKER代表、人種族、リュート・ガンスミスです。自分のはお好きにお呼びください、『腐敗ノ王』殿」
『腐敗ノ王』――という二つ名で呼んで欲しいという要求に一瞬、返事がおくれてしまう。
ジオさんは見た目通り中2病でも煩っているのだろうか?
オレの疑問を余所に他、クリス、ホワイトも挨拶を交わす。
互いに自己紹介を終えた後、話を続けた。
「先程現場を確認しましたが、アレは個人でどうこうできるレベルを越えています。なので自分達が来たからといってすぐに問題が解決するとは考えないで頂きたいのですが」
「はい、もちろんそれは重々承知しております」
彼は気まずそうにはにかみ同意してくれる。
その返事を聞けて安堵の溜息を漏らす。
いくらPEACEMAKERでも、封印されている魔王が弱るまで数万単位で溢れ出てくるゾンビ系モンスター達を倒しきれるほどの力はない。
現状は、だ。
「一応、事前に話をお聞きしていたので今回の一件に適した新兵器――新しい魔術道具の構想はあるのですが……」
「さすが勇者にして英雄殿ですね! ですがその口ぶりではなにか問題があるのですね?」
ジオさんは『リュート』という名前呼びではなく、『勇者にして英雄殿』で行くようだ。
別に訂正する意味もないため微苦笑で流す。
「はい……新しい魔術道具は構造自体それほど難しくないのですが、1、2日で出来る物でもありません。なので最低でも10日の時間が欲しいんですよね」
「時間ですか……」
ジオさんが美少女顔を暗くする。
とりあえず墓所から溢れ出るゾンビ系モンスターを退治し尽くす新兵器の宛はあるし、飛行船ノアで移動中も開発していた。
また一度完成すれば量産体制を取るのも難しくない。
なぜなら今回のクエストにはハイエルフ種族のルナが居るからだ。
彼女は一度見て記憶したモノは決して忘れない。
AK47を分解し、覚えた後、魔術液体金属が入った樽に手を入れて部品からではなく、一度に作り出すことすらできるのだ。
ルナの『完全記憶能力』を使用すれば、新兵器を量産するのは難しくない。
問題があるとするなら……新兵器を開発するための時間が足りないのだ。
「ちなみに失礼でなければなのですが……ジ、『腐敗ノ王』殿のお力を教えてくださいませんか? 互いの戦力をあわせれば新しい魔術道具を開発する時間を稼げるかもしれません」
この質問に彼は心底申し訳なさそうに肩を落とす。
「申し訳ありません……ぼくは魔術師S級『腐敗ノ王』なんて大層な呼ばれ片をしていますが、魔術師として素の能力はそうたいしたことがないんです。ぼくが魔術師S級と呼ばれているのも全てこの大剣のお陰なんです」
正面の椅子に座る彼は背中に刺していた身長を越える大剣を抜き、テーブルへと置いた。
テーブルに置かれた大剣をオレ、クリス、旦那様、ホワイトの皆が興味深そうに観察した。
大剣は定規で引いたような真っ直ぐな剣で色は白い。
刃というより、象牙的なイメージを起こさせる色合いをしている。
「この大剣の名は『腐敗ノ王』というのです。ぼくは歴代の『腐敗ノ王』同様、適性があったため剣を所持し、魔術師S級を名乗ることを許されているんです」
微苦笑を浮かべつつ詳しく話し聞かせてくれた。
剣の材料は墓地に埋葬されている魔王の骨だ。
この剣でかすり傷一つでもつけた相手をゾンビ化させ、意のままに操ることが出来るらしい。
つまりノーコスト&維持費無料で、強力な魔物を支配下に置くことができるということだ。
とんでもないチート武器じゃないか!
あまりに強力過ぎる魔術武器のため、適性者は代々剣を引き継ぐ際に一時的に名前を封印され『腐敗ノ王』と名乗ることを強要される。
彼ら一族の目的は、あくまで魔王の封印を監視し続けること。
剣の力はそのためにある。
故に滅私奉公を忘れず、一族のトップとして墓守仕事を続けるためにも名前を捨て去るらしい。
ただ次の適性者に剣を渡した後は、再び自身の名前を名乗ることを許されるとか。
自分のことを『腐敗ノ王』と呼んで欲しいと言ったのも、中2病的欲求からではなかったようだ。
剣の力や彼ら一族の覚悟に驚愕していると、同じく魔術師S級『氷結の魔女』のホワイトが、のんびりとした口調で指摘する。
「凄い魔術武器ですね……なら、この剣でドラゴンなどの魔物を配下にして墓地から溢れ出てくる敵と戦わせればいいのではないでしょうか?」
「そうできればいいのですが……元々魔王の骨から削りだした大剣なので。封印が緩んでしまっている今、配下を作っても魔王に権限を乗っ取られてしまうんですよ」
だから、封印が解ける前に支配下に置いた魔物を自害させたらしい。
つまり封印が緩んでいる間は、剣の能力を使う事ができないということだ。
平時ではとてつもないチート武器だが、現状では殆ど役に立たない。
「なので現状、ぼくはあまりお役に立ちそうにないんです……。申し訳ありません」
「いえいえ、『腐敗ノ王』殿が頭を下げることではないですから」
一番悪いのは今回の原因を作り出したランスである。
本当に色々やらかしてくれたものだ。
「とりあえず状況を理解することはできました。PEACEMAKERも協力して、新しい兵器が開発されるまでなんとか時間を稼ぎましょう!」
「ぼくたち一族も出来る限りの協力をします!」
オレ達は互いに席を立ち、固く握手をかわす。
そんなオレ達を眺めながら、旦那様が指摘してきた。
「ところでリュートよ。新しい魔術道具を開発するという話だが……始原と戦った際に使用した物では駄目なのか? リース嬢とココノ嬢が協力して上空から落としていた魔術道具なら、城壁内部にあふれているモンスター達を倒すことが出来るのではないのか?」
旦那様の言葉に、その場に居る皆の視線が集まる。
旦那様が仰っているのは『燃料気化爆弾』のことだろう。
確かに以前、約1万の戦力を相手に正面から潰した。
『あの魔術道具を使えば、わざわざ新しく作らなくてもいいのではないか?』と思うのは当然である。
しかし、今回に限っていえば『燃料気化爆弾』は適さない。
『燃料気化爆弾』を大雑把に説明すると……空中で燃料をばらまき、空気といい感じに混ぜて爆発させ、敵を圧死させるのが『燃料気化爆弾』だ。
今回の敵は既に死んでいるゾンビ系がメインで、『押し潰す』という面攻撃ではあるが効果が薄いと言わざるおえないだろう。
また誤射して、城壁を破壊してしまったら目も当てられない。
なので今回の一件に『燃料気化爆弾』はあまり適した兵器とはいえない。
『では、リュートお兄ちゃんはいったいどのような新しい魔術道具を開発するつもりなのですか?』
嫁であるクリスがミニ黒板を掲げ問う。
開発を優先したため、嫁達にすら説明するのを忘れてしまっていた。
オレは改めて説明をするため、軽く咳払いをしてから今回開発する兵器の名前をまず告げた。
「今回開発する新しい魔術道具――ナパーム弾だよ」
聞き慣れない名前に、その場に居る皆が首を傾けたのだった。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
『令和1年12月15日(日曜日)』に明鏡シスイの新作をアップさせて頂きました。
タイトルは『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』です。
軍オタ好きの読者様なら楽しめる作品になっているので是非是非チェックして頂ければと思います。
新作は作者欄からも飛べますが、一応URLも張らせていただきます。
以下になります。
https://ncode.syosetu.com/n5526fx/
新作&こちらの軍オタアフター(明日もまたアップします)共々よろしくお願い致します。