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第457話 軍オタアフター 腐敗ノ王

12月15日(日曜日)に、明鏡シスイ新作 『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』 をアップしました!

17日~22日までは1日3回アップする予定なので是非チェックしてください!

「はははははははははははっ! 久しいな! 皆、元気にしていたか!」


 声をかけられ背後を振り返ると、クリスの父でオレの義父であるダン・ゲート・ブラッド伯爵が立っていた。

 旦那様はいつも通りの笑い声をあげていたが、今までと違う異変に気付き首を傾げる。


「飛行船が見えたので来たのだが……リース嬢が居ないようだな。何かあったのか?」

「はい、実は――」


 オレは旦那様に現在の状況を伝えた。

 一通り説明を終えると、旦那様が豪快に笑う。


「ははははははっ! そうか、そうか! ついに赤ん坊が出来たのか! うむ、実にめでたい! ……しかし、だとしたらリュートを今回呼んだのはいささか軽率だったやもしれぬな」

「何を仰ってるんですか! こんな一大事に呼ばれない方が困りますよ!」


 嘘偽りない本心である。

 旦那様が居れば大抵のことはなんとかなると思うが、今回は六大魔王の一角が復活するかもしれないのだ。

 念には念を入れて損はないし復活後に呼ばれるより、阻止するため行動した方が被害も、損傷も確実に少ない。


「ははははっ! さすがリュートだな! ならば早速、戦に赴こうではないか!」


 旦那様曰く、魔王の墓地穴からゾンビ系モンスターが大量に湧き出しているらしい。

 それらが城壁を越えて外に出ないよう殲滅する必要がある。またその際、モンスターに殺害されないよう注意を受ける。


『命を大事に』は当然だが、墓地穴から溢れ出るモンスターに殺害されることでその魂が魔王の力に変換されるのだ。

 故に魔王は大量の魔物を産み出し、外の生物を大量に殺害しようとしている。

 だから、二重の意味で溢れ出てくるモンスターに殺害される訳にはいかないのである。


 こちらの勝利条件は、魔王が産み出すモンスターが城壁外に出ないよう気を付け、殺され力を与えないようにしつつ、出が悪く……弱るまで殲滅。

 弱ったら『腐敗ノ王』一族から選出された部隊が墓地穴へと潜り、再度封印をかけ直す。


 以上が、こちら側の勝利条件である。


 ようはモンスターを城壁外に出さないよう倒し続ければいい。

 逆攻城戦状態だ。


 オレは現状を把握するためにも旦那様の誘いに従う。


 今回、相手はゾンビ系モンスターのためAK47ではなく、戦闘用(コンバット)ショットガン、SAIGA12Kを手にする。

 オレ以外にはクリスが同じようにSAIGA12Kを手に取り、ホワイトさんが後へと続く。


 他戦力として団員達に城壁から、自動擲弾発射器オートマチック・グレネードランチャーを設置し準備が整い次第撃ち込むよう指示を出す。

 ココノ&メイヤは非戦闘員のため、さすがに現場へ出す訳にはいかない。

 残るスノーはというと……。


「ごめんなさい、無理です。ここでも臭いがきついのに、城壁の内側にいくなんて絶対に無理!」


 と、涙目で首を振る。

 いくらホワイトの魔術のお陰で消臭できるといっても、彼女の魔力も無限ではない。臭いを消すより敵を倒すほうに魔力を割くべきだ。

 なのでスノー、他鼻が良い獣人系は飛行船内部に戻る。

 それでもキツイ場合は、臭いが大丈夫になる距離まで引くことを許可した。


 とりあえず城壁内部に行くメンバーが決定したのだった。




 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼




「ふんぬば!」


 旦那様が腕を振るうとそれだけでゾンビ系モンスターの上半身が粉々に引きちぎれ、回りを巻き込み吹き飛ぶ。

 しかし、残った下半身は前進を止めようとはしない。

 旦那様は返す刀で拳を振るい、前進してくる下半身を打ち砕く。


 オレは旦那様の活躍を横目で見つつ、地を駆ける犬に似た4足歩行のアニマルゾンビに向けてSAIGA12Kの引鉄(トリガー)を絞る。

 発砲音と共に狙い違わずスラッグ弾が、アニマルゾンビ頭部を砕く。しかし止まらない。


 オレは冷静に2度、3度と連続で発砲し原型がほぼ無くなるまで砕き動きを止めた。


 クリスも似たような状態だ。


雪結晶ホワイト・クリスタル、お願いね」


 最後に魔術師S級『氷結の魔女』、ホワイト・グラスベルが力を振るう。


 彼女はリースと同じハイエルフ族で、『精霊の加護』を授かっている。

 ホワイトの『精霊の加護』は名前を『雪結晶ホワイト・クリスタル』、氷や雪など司る精霊だ。


 ホワイトは氷系統の魔術を使う際、この『雪結晶ホワイト・クリスタル』で強化していた。そのため一般の魔術師に比べて氷系統は『氷結の魔女』という二つ名が付くほど、隔絶した強さを誇っているのだ。


雪結晶ホワイト・クリスタル』が軽やかに舞うだけで、視界を覆っていたゾンビ系モンスター達が瞬間冷凍される。


 ピシィ――と、異音が響く。


 音に続いてゾンビ系モンスター達は形を保っていることが出来ず、粉々に砕け綺麗なパウダーになってしまう。


 先程まで押し寄せる津波のような溢れていた敵が、綺麗さっぱり消失する。

 お陰で臭い的にも、体力的にも一息つくことが出来た。


「これは……想像以上にきついな……」

『ですね。以前、戦ったゾンビに比べて明らかにタフです』


 オレの独り言を側に居たクリスが拾う。


 昔、『黒毒の魔王』レグロッタリエと戦った際、彼が用意したゾンビやスケルトン、ゴーレムなどと戦った経験がある。

 その時は新型飛行船ノアからM2をガンガン撃ちまくった。


 その際、ゾンビ系はある程度肉体が損傷すると活動を停止していた。

 なのに今回はバラバラにしなければ動きを止めない。既に死んでいるゾンビなのに生きが良すぎる。

 お陰で無駄に体力や魔力などを消費してしまう。


 また問題は生きが良いだけではない。


「しぶというえに、想像以上に数が多すぎる。城壁で周囲を囲んでいるとはいえ積極的に削っていかないと突破されかねないぞ」


 オレは改めて城壁内部を見回す。


 城壁内部の中心に魔王の墓地穴に繋がる出入口の元建物が建てられていた。

 しかし、既に建物は崩壊。瓦礫の山と化している。

 これも移動途中、飛行船ノア内で黒フードから説明を受けたが、開始直後、巨大なドラゴンゾンビが内側から出現し、建て物を崩壊させ、出入口を大きく広げた。


 城壁を飛び越える前にドラゴンゾンビを退治することは出来たが、出入口が広がり先程のようにゾンビ系モンスターが大量に出られるようになってしまう。


 元建物は城壁内部のほぼ中心に建てられており、内側の広さは直線で数kmもある。また特に障害物はなく、地面は岩の上を歩いているように固い。そのため数万程度のゾンビ系モンスターで埋め尽くすことは出来ないが、処理しなければあっという間に満たされてしまう。

 仮にそうなったら城壁破壊など意外とあっさり壊されてもおかしくない。


 城壁を破壊し、外部に出さないためにも数を減らさなければならないが……状況確認のため実際に戦ってみて、敵の厄介さをしみじみと理解する。


 今回の敵は元々死んでいるため、命を惜しむことはない。

 なのに魔王が産み出しているせいか、ゾンビの癖に生きが良すぎる。


 さらに問題があるとすれば、


「スノーじゃないが、内側は本当に酷い臭いだな……」

『正直、呼吸をするのも辛いです』


雪結晶ホワイト・クリスタル』がモンスターを凍らせて粉々にしてくれたお陰で、今はまだマシだが、先程は腐臭と死臭が本当に酷かった。

 ここに鼻が良い者が一歩でも足を踏み入れたらあまりの悪臭に悶え苦しみ戦力にならないレベルである。


 とはいえ魔王が弱るまで溢れ出てくる敵を倒し続けなければならない。


「ちなみにホワイトさん、さっきの全体攻撃はあとどれぐらい使えますか?」

「期待してくれる団長さんには申し訳ないけれど、100回とか規格外なマネはできませんよ。せいぜい10回ぐらいでしょうか」


 人の視界を埋め尽くすほどのモンスターを一瞬で氷り漬けにして砕く。

 あんな攻撃が後10回も使用できるなど十分規格外である。

 とはいえ、現状では焼け石に水だ。


「旦那様はどうですか?」

「はははははは! 安心するといいぞ、リュートよ! 我輩の場合、なるべく魔力を使用せず戦う術もあるからな! リュートが望むなら、何時間でも戦うつもりだぞ!」


 旦那様曰く、先程の攻撃も魔力を使用せず純粋な肉体の力でゾンビを倒していたとか。お陰で魔力消費を極力減らすことができるらしい。

 つまり『発達した筋肉は魔法と区別がつかない』ということか……。

 実際、旦那様なら発言通り、何時間、何十時間でも戦い続けられるだろうが、1人で数万の敵を倒すなど物理的に不可能だ。

 疲労が蓄積し、ミスをして殺される可能性の方が高い。


「気持ちはありがたいのですが、いくら旦那様でも単騎で数時間叩かせるマネはさせませんから。もしやろうとしたら力づくでも止めますからね」


 オレは旦那様が無茶しないように釘を刺す。


 話をしている間にも魔王墓地穴から大量のゾンビモンスター達が溢れ出てくる。

 一向に減る気配がない。


 クリスが視線を城壁へと向ける。


自動擲弾発射器オートマチック・グレネードランチャーの準備はもう少しかかりそうですね……』

「了解。それじゃ準備が終わるまで、もう少し敵の相手でもしてやるか」


 オレはSAIGA12Kを構え直し、再び襲いかかるモンスターの群れに銃口を向けたのだった。




 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼




 再度の敵モンスターの攻撃から約30分後。

 ようやく自動擲弾発射器オートマチック・グレネードランチャーの準備が整う。

 とはいえ、もしここにリースが居れば『無限収納』を使用しもっと短時間で設置出来ていたのだが……。

 愚痴ってもしかたない。


 準備が整ったのを確認して、合図を送る。


 自動擲弾発射器オートマチック・グレネードランチャーから『40mm 炸裂火炎魔石榴弾』が発射される。


 通常のグレネード弾とは違い内部に火属性の魔石が込められている。

 地面にぶつかると魔石が壊れ、爆発。破片と爆風、爆炎を撒き散らす。

 火属性の魔石を込め、わざと壊し暴発させるお陰で破壊力が圧倒的に高くなるのだ。


 過去、実験した結果、1発が火属性の攻撃魔術中級レベルと同等の破壊力を持っているが分かった。


 今回の相手がゾンビ系と聞いていたため、準備しておいたのである。


 予想通りゾンビ系モンスターに火属性は有効で、散らばる破片&爆風の効果も加わりSAIGA12Kを撃つより効率よく敵を倒すことが出来ていた。

 問題があるとすれば……1発の値段が高いことだ。


 魔石を使っているため1発約金貨3枚(約30万)する。

 自前で魔力を込めているため、これでもまだ安い。


 正直、有効ではあるのだが……今回のメインウエポンにはならない。

 コストと費用対抗があまりに釣り合わないためだ。

 せいぜい緊急時に使用する程度だろう。


 オレ達は無事に現場確認と自動擲弾発射器オートマチック・グレネードランチャーの具合などのチェックを終えたため、休息するためにも一度場外へと出る。


 周囲の敵を殲滅後、合図を出すと分厚い金属製の門が少しだけ開く。

 その隙間に体を滑り込ませ、外へと出るのだ。


 全員外へ出た後、代わりの人員が内部へと入ると再び門は固く閉ざされた。


『確認のため軽く戦うつもりでしたが、疲れました……。皆と合流したら、まずシャワーかお風呂に入りたいです』

「私もクリスちゃんの意見に賛成よ。死臭や腐臭の臭いが髪や衣服にまで付いてる気がすわ……」


 女性陣は自身の毛先や衣服を鼻先に移動させ、臭いがついてしまったかどうか確認を始める。

 男のオレも気になるが、正直鼻が馬鹿になっているため、臭いがついたかどうか確かめられる自信はないな。


 一応、クリス達を真似て服の臭いを嗅いでいると――。


「リュートよ、どうやら我輩達の休憩はまだ先のようだぞ」

「? それってどういう意味ですか?」


 女性陣の背後で、肩を並べて歩いていた旦那様が声をかけてくる。

 旦那様は足を止め、視線を向ける。

 その先には――髑髏を模した黒い甲冑を着込んだ人物が立っていた。


『――遠い地からよくぞ来てくださいました、勇者にして英雄殿』


 面頬兜(フルフェイス)越しに聞こえるくぐもった声音。


 これが魔術師S級『腐敗ノ王』とのファーストコンタクトだった。

 ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

 感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!


『令和1年12月15日(日曜日)』に明鏡シスイの新作をアップさせて頂きました。


 タイトルは『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』です。

 軍オタ好きの読者様なら楽しめる作品になっているので是非是非チェックして頂ければと思います。


 新作は作者欄からも飛べますが、一応URLも張らせていただきます。

 以下になります。

 https://ncode.syosetu.com/n5526fx/


 新作&こちらの軍オタアフター(明日もまたアップします)共々よろしくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
[一言] 生きのいいゾンビというパワーワード(笑) 流石の旦那様でも万を超えるゾンビ共は抑えきれませんかー… そして、悪臭に耐えかねスノーちゃん(と嗅覚の鋭い獣人種族達)の戦線離脱…(汗) リースさん…
[気になる点] 今話の文章の中で、『ーー遠い地からよくぞ来てくださいました、」勇者にして英雄様』と言う会話のところなんですが、自分でもほんとに細かいところばっかり気にしすぎなのはわかっているのですが、…
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