第456話 軍オタアフター 到着
12月15日(日曜日)に、明鏡シスイ新作 『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』 をアップしました!
17日~22日までは1日3回アップする予定なので是非チェックしてください!
魔人大陸のとある街にある冒険者斡旋組合掲示板に緊急クエストの依頼が張られる。
内容を要約すると『大量の魔物が溢れ出ているため、人手が足りないから来て欲しい。魔術師ならなお良し』とのことだ。
提示された金額は従来の金額通りか、ややプラス程度。
あまり美味しい条件とはいえない。
冒険者はあくまでフリーな職業だ。
基本的に冒険者斡旋組合側ですら、クエストを強制することはできない。
故にあまり旨味の無い今回の緊急クエストを大半の冒険者がスルーしていた。
そんな中、わざわざ仕事を受けるのは物好きか、お人好しの二択しかない。
「緊急クエストね……」
旅装束姿で頭からフードを被る人物が、掲示板に貼られたクエスト内容を眺め呟く。
フードの下に隠れた金髪のショートカット、獣耳。尾骨から伸びる黒と黄色の縞模様の尻尾が思索するようにゆらゆら揺れている。
身長は低く、裾から除く手首などは細かった。見た目は華奢だが、立ち振る舞いに全く隙がない。分かる者からすると、並大抵の実力者でないことがすぐに分かった。
掲示板を眺める人物――獣人種族、虎族、魔術師S級、獣王武神のタイガ・フウーは顎に手をあて熟考する。
「路銀の心配は無いけど、現場は魔人大陸のほぼ中央か……確かあそこには魔王が封印されているんだよね。まだ行ったことが無いし邪神を封印をするヒントがあるかもしれないな……」
タイガは現在エルの妹である邪神アルを封印する旅に出ていた。
その方法を探しに魔人大陸にたまたま来ていて、掲示板の緊急クエストに気付いたのだ。
魔術師S級だけあり、資金にまったく問題はない。
しかし少なくない期間『困っている人、救いを求める人を助ける』という理念を掲げる軍団とかかわってきた。
昔の彼女なら気にせず流していただろうが、PEACEMAKERに影響を受けたため、仏心を出してしまう。
タイガはこの緊急クエストを受けるため、窓口へと向かうのだった。
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獣人大陸ココリ街を出発して約1日。
オレ達PEACEMAKERを乗せた新型飛行船ノアは、目的地へと到着する。
目的地は魔人大陸のほぼ中央に存在する6大魔王の一角が封印されている封印都市マドネス。
「『封印都市』なんて大仰な名前ですが、実際は町レベルなんですよね」
新型飛行船ノアには、オレ達に緊急クエストを持ってきた『腐敗ノ王』の関係者である黒いフードを被り、髑髏を模した仮面を被った男性も一緒に降りた。
封印都市マドネスに向かうので、一緒に彼も連れてきたのだ。
お陰で向かう途中、色々町について話を聞くことができた。
彼の言葉通り『封印都市』という大仰な名前だが、飛行船ノアから眺めた限りほぼ町レベルである。
周囲は草木も生えないごつごつとした山岳地帯。
とある一角を囲むように北大陸最大都市ノルテ・ボーデンの城壁に負けないほど立派な壁が造られている。
その中に魔王の墓地入り口があった。
現在は上空から見ても分かるほど魔物が溢れ出てきているが。
その城壁から距離を取り囲むように建物が建ち並んでいる。さらに囲むように城壁が建築されていた。
これが封印都市マドネスである。
ぱっと見の大きさ的には確かに都市レベルだが、建物や人口を考えるとやはり町としかいえない。
黒フードの彼曰く、マドネスの住人は殆ど『腐敗ノ王』一族だけだとか。
「町の住人達は基本的に余所者に厳しいですよ。排他的なのはやつがれ共も理解しているのですが、昔からやれ『魔王の墓地まで案内しろ』や『魔王を倒させろ!』、『魔王について研究させろ』とか色々やらかす外部の者達が後を絶たなくて……。この世界を護るためにも排他的にならざるをえなかったんですよね」
彼はしみじみと語る。
骸骨を模した仮面の下からでも分かるほど疲れた溜息を漏らした。
この地には弱っているとはいえ本物の魔王が封印されている。
勇者願望や研究者、一攫千金を狙う冒険者、力を求める権力者などが手を伸ばす理由を持つ輩は多数存在した。
下手に刺激して万が一封印を解いてしまったら、魔王が復活するのだ。
実際、一部封印が緩んだだけで、現在四苦八苦している。
仮に本格的に現世に復活させでもしたら……冗談や洒落抜きで世界が終わりかねない。
だから墓守である『腐敗ノ王』一族は外部から他者に厳しく、排他的にならざるおえなかったのだ。
利己的理由ではなく世界の命運的にである。
とはいえ外部との接触が無いわけではない。
一部は都市を出て積極的に交流を図っている。
なぜなら今回のような事態に陥った時、外部からの協力を得るため関係・人脈作りをしているらしい。
言葉は悪いが、いざという時の外部協力者・傭兵的戦力確保である。
クリスの父、オレの義父であるダン・ゲート・ブラッド伯爵も、外部協力者の友人から頼まれ参戦しているらしい。
そんな旦那様が魔術師S級『腐敗ノ王』に進言して、オレ達PEACEMAKERを推薦したとか。
旦那様なら例え友人から頭を下げられなくても、今回のような問題が起きた場合、義憤から参戦するだろうが。
「!? 話には聞いて覚悟してたけど、凄く嫌な臭いがいっぱいしてくるんだよ!」
封印都市マドネスへと降り立つと、スノーの鼻を両手で押さえる。
飛行船ノアは町の発着場へ着陸している。
魔王の墓地を囲む城壁から、数km離れているが鼻の良い獣人種族からすると顔を覆うほど死臭と腐臭が濃いようだ。
スノーはハンカチで覆いを抑えるが、それでも駄目らしく涙目になる。
「あらあらスノーちゃん、可哀相に。ここは師匠らしくなんとかしてあげましょうね」
臭いに苦しんでいる弟子を見かねた妖精種族ハイエルフ族、魔術師S級の『氷結の魔女』ホワイト・グラスベルがニコニコ笑顔でスノーの傍らへと移動する。
彼女が指を振るうと、ハンカチで顔を覆っていたスノーが劇的な反応を示す。
彼女は目を丸くして顔を覆っていたハンカチを離し、目を丸くした。
「凄いよ! さっきまで臭かった臭いがまったくしなくなった!」
「スノーちゃんの周囲に漂う苦しめていた臭いを、私の魔術で凍らせたのよ。これで臭くなくなったでしょ?」
どうやらホワイトは周囲に漂う臭いの元――粒子を凍らせて除去したらしい。
まるで人間空気清浄機である。
こんな出鱈目なことが出来るのも彼女が魔術師S級だからだろう。
今回は神話・伝説的魔王が復活するかもしれないため、魔術師S級の彼女にも参戦してもらった。
リースを除けば、PEACEMAKERの最高戦力を投入している状態だ。
「ありがとうございます、師匠! わたし、師匠のこと見直しました!」
「み、見直したって……スノーちゃんは今まで私をどんな目で見ていたの?」
「受付嬢さんに余計なアドバイスをして、焚き付けて世界的危機を起こした人ですね」
「ぐっはぁ!」
スノーが笑顔でお礼を告げつつ、クリティカルを与える。
師匠であるホワイトは、弟子の鋭い言葉の刃にその場に蹲ってしまう。
受付嬢さんに関しては色々あったため、いちがいに彼女のせいばかりとは言わないが……原因が0とはいかない。
ある意味、正統な評価だろう。
また臭い以外で気になる点としては『声』だ。
飛行船発着場から数km離れた位置に巨大な城壁がある。
亡者の雄叫びと防衛している人々の声が微かだが聞こえてくる。個人的には臭いより、そちらの方が気になった。
あの巨大な城壁の内側では地獄のような戦いがおこなわれているのだろう。
「ほらほらリューとん、そんなところでぼんやりしてないで指示を出さないと。リースお姉ちゃんがいないんだから、荷下ろしだけでも凄く時間がかかるんだよ? のんびりしてたらその分時間がかかるんだから、しゃきっとしないと駄目でしょ」
「悪い、ルナの言う通りだ。すぐに指示を出さないと。どうもリースが居ることが当たり前すぎて、感覚が追いつかないな」
オレは背後から指摘された声に謝罪しつつ、緊急クエストに参加する団員達にすぐさま指示を出す。
いつもならリースが居るため荷下ろしなど必要なかった。その癖が抜けず行動が遅れてしまったのだ。
ちなみに今回は『無限収納』が使用できるリースがこられなかったため、彼女の妹のルナに参加してもらっていた。
彼女は普段着の上から白衣に袖を通し、魔術液体金属や魔石関係の荷下ろしをメインに指示を出している。
なぜ今回ルナに参加してもらったかというと……彼女は記憶力がいい。一度記憶したモノは絶対に忘れないレベルだ。
それ故、魔術液体金属の状態から一息でAK47を作り出すことすら出来る。
リースが妊娠したため参加出来ず、無制限で兵器を持ち込むことが出来ない。
ならば彼女の代わりに完全記憶能力を持つ妹のルナに参加してもらい、必要になったらその場で兵器を大量に生産してもらおうと考えたのだ。
この提案にリースは最初渋ったが、『お姉ちゃんは自分と赤ちゃんのことだけ考えてればいいの。お姉ちゃんの代わりはルナがしておくから心配しないで』と彼女自身が押し切ったのである。
リースは最後まで妹のことを心配していた。
彼女の不安や心配を取り除くためにも、ルナには毛ほどの傷も与えないよう護ろう。
オレは改めて胸中で誓いを立てつつ、黒フードから荷物を運び込んで良い倉庫を確認する。
黒フードは現場と話をしてすぐに側の倉庫を使用する許可を取ってくれた。
確かに封印都市マドネスは排他的だが、協力してくれる関係者には非常に協力的らしい。
でなければこのような緊急事態を乗り切ることが難しいからだ。
『腐敗ノ王』一族は、魔王の封印に関しては本当に合理的である。
「はははははははははは! ようやく来たかリュートよ!」
久しぶりに聞く豪快な笑い声。
倉庫に運び込む指示を出している途中、振り返るといつの間にか背後に義父であるダン・ゲート・ブラッド伯爵が姿をあらわしていたのだった。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
『令和1年12月15日(日曜日)』に明鏡シスイの新作をアップさせて頂きました。
タイトルは『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』です。
軍オタ好きの読者様なら楽しめる作品になっているので是非是非チェックして頂ければと思います。
新作は作者欄からも飛べますが、一応URLも張らせていただきます。
以下になります。
https://ncode.syosetu.com/n5526fx/
新作&こちらの軍オタアフター(明日もまたアップします)共々よろしくお願い致します。




