第453話 軍オタアフター 懐妊
本日12月15日(日曜日)、昼12時に明鏡シスイ新作 『軍オタが異世界第2次世界大戦の欧州戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラーを倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』 をアップしました!
明日16日~22日までは1日3回アップする予定なので是非チェックしてください!
「先生、ありがとうございました」
「いえいえ、お大事になさってください」
ココリ街に居を構える街医者にお礼を告げて、頭を下げる。
お医者様が退出した後、新・純潔乙女騎士団本部客室を私室に使っている寝室には、身内しかいなくなる。
その中で唯一、ベッドで横になる人物……リースを皆が見下ろす。
「まさか本当にリースが赤ん坊を妊娠しているなんて……」
北部開発の帰り道。
彼女と夕飯について会話を交わした。
リースはその会話で『酸っぱい物を食べたい』と言い出す。
さらに最近、熱っぽく、体が怠いらしかった。
本人は風邪だと誤解していたようだが、オレ自身は彼女の言動から『赤ん坊を妊娠しているのでは?』と推測。
本部まで抱きかかえて、私室ベッドに寝かせると夕飯も摂らず街医者を呼びに行かせた。
結果、先程のやりとりで分かる通り、赤ん坊を妊娠していたのだ。
まさか本当にリースが妊娠しているとは……。
「と、とりあえずリースはそのまま安静にしていてくれ。今からお医者様を呼んでくるから。いや、むしろ飛行船ノアを飛ばしてエル先生に報告と一緒に来てもらったほうがいいのか?」
「若様、落ち着いてください。お医者様は先程いらっしゃったではありませんか。またエル様にご報告するのは問題ありませんが、本部にお連れするのは難しいかと」
護衛メイドのシアが、ツッコミを入れてくる。
彼女は長年リースに仕えているにもかかわらず、妊娠していると知っても冷静でいるようだ。
さすがシア、護衛メイドの鏡である。
「むしろするべきは、ハイエルフ王国エノールへの進軍です。姫様と若様の御子こそ、王国を統べるに相応しいお方かと」
「さすがシアだな! よし、なら早速攻め込み王座を奪う準備をしないと!」
「もう2人とも落ち着いて! リースちゃんの自国を攻めて王座を力ずくで奪うなんてちゃ駄目に決まってるでしょ!」
スノーが声をあげ、オレとシアを叱ってくる。
彼女に叱られ幾分か冷静さを取り戻す。
確かにハイエルフ王国に攻め込むってなんだよ。
思わずノってしまったが、どうやらシアも見た目は平静そのものだが内面は混乱しているらしい。
……改めて考えると、シアがここまで混乱しているのは珍しい。彼女との付き合いも長いが、初めてではないだろうか?
思わず珍獣を見つけたような視線をシアに向けていると、裾を引っ張られる。
振り返るとクリスがミニ黒板を掲げていた。
『それよりリュートお兄ちゃん、リースお姉ちゃんに言うことがあるんじゃないですか?』
「えっ、あっ、言うこと……」
クリスの指摘にオレはベッドで横になるリースへ向き直る。
「ご、ごめん、混乱して……ちょっと驚きすぎて。改めて、リース、オレの子供を妊娠してくれてありがとう」
「こちらこそありがとうございます。でも、正直に言えば私自身、実感があまりないんですよね……」
「オレも本音を言えば一緒さ。でも、赤ん坊が居るのも事実だ。だからこれからは一緒に親になっていこう」
ベッドで横になるリースの手を握り締める。
彼女も笑みを浮かべて握り替えし『はい!』と返事をしてくれたのだった。
「お話が纏まったところでお食事にしましょう。リースさまも体調がよろしくないでしょうが、母子ともに健康で居るためにも、食事を疎かにする訳にはいきませんから」
「食事もそうだけど、寝室の準備もしないとだね。一緒にベッドへ入って寝返りを打ったら、手がお腹にあたった……なんてことになったら大変だもの」
『なら、他の客室の準備をしてきますね』
「いえ、ここは使用人である自分がやらせていただきます」
ココノを皮切りに、スノー、クリス、シアが早速嬉しそうに行動を起こす。
皆、スノーの懐妊を自身のことのように喜び、何か知らずしてあげたいらしい。
一方、いつもなら『リュート様の赤子を宿す栄誉を賜ったリース様が羨ましいですわ! わたくしも一刻も早くこの身に宿したいので、今夜あたりいかがでしょうか?』とか騒ぎ出しそうなメイヤが、センスを閉じ口元に当て何かを考えて込んでいた。
オレは思わず彼女に声をかける。
「メイヤ、どうかしたのか黙り込んで?」
「いえ……少々気になることがありまして」
「気になること?」
「リースさんが妊娠したのは、逆算して新婚旅行に出かけた時ですわよね?」
「逆算するとそうなるな。それの何が問題なんだ?」
メイヤの問いに同意する。
嫁達のなかで種族的に一番子供が出来にくいのはハイエルフ族のリースだ。
しかし妖人大陸、ハイエルフ王国エノール領地にある観光地の一つに、温泉街がある。温泉街にはリースのご両親も宿泊した由緒ある宿屋だ。
その宿屋の名物に『子宝の湯』というのがある。
この湯のお陰で現エノール国王夫婦が泊まり子をなしているのだ。
どうやらリースも両親同様に体質に合っていたらしい。
お陰で嫁達のなかで誰よりも早く妊娠したようだ。
喜ばしいことで疑問や考え込む点など無い気がするのだが……。
「新婚旅行から数ヶ月経ちますが、その間ずっと北部開発のお手伝いをリースさんはしてらっしゃいましたわよね。今日など手が足りず1人で回っていらしたはず。まさかとは思いますが……明日からも同じ仕事をさせませんよね?」
メイヤの指摘に全員が気付く。
今日、ようやく妊娠していることが判明したが、その前からずっと彼女は北部開発の資材に関して『無限収納』を使用し動き回っていた。
あのドジで有名なリースがだ。
『…………』
メイヤの指摘に本人のリースを除いた全員が青ざめる。
皆は脳内で簡単にリースがドジを踏む姿を想像してしまう。
資材を移動&『無限収納』から放出する際、転んだり、資材に押しつぶされようになったり、頭を打ったり、人とぶつかりそうになったり……。
赤ん坊が今まで無事だったのは奇跡なのかもしれない。
シアがその場で蹲る。
「なぜ自分はもっと早く姫様の体調変化に気付かなかったのでしょうか……ッ。これでは護衛メイド失格です!」
本当に珍しくシアは自身に絶望した声音をあげ落ち込む。
ただ彼女に対してフォローするなら、他護衛メイド達の指導や北部開発事業の手伝いでここ数ヶ月忙しかった。
決して、シアがリースを蔑ろにしていた訳ではない。
スノー達もシアと似たり寄ったりした反応を見せる。
そんなオレ達を前にリースは笑顔を零す。
「もう皆さん心配なのは分かりますが、大げさすぎますよ。確かに私は人よりドジですが、お腹の子が危機になるようなマネするわけないじゃないですか。明日も今まで通りお仕事を勤めさせてもらいますから」
「はい、却下で」
「リ、リュートさん!?」
一瞬の迷いもなく却下したことにリースが驚く。
オレは構わずシアへ指示を出す。
「子供が産まれるまで護衛メイドと共に24時間側に居てやってくれ。団長権限で必要な人材、資金、資材等があるなら無制限で使用する許可を与える」
「畏まりました。この一命に懸けて」
先程まで頭を抱えていたシアは、気付けばいつのまにか手本に出来そうな完璧な臣下の礼をとっていた。
シアの瞳はどこまでも真剣で、嘘偽り無く身命をとしてリースが子供を産むまで全力を尽くすと雰囲気で理解することができた。
「リュートさん! シア! 落ち着いてください! いくらなんでも大仰にしすぎですよ。皆さんからも何か言ってあげてください」
オレとシアの態度が気に入らなかったリースが、他嫁達を味方に付けるため話を降る。
「シアさん、わたしに出来ることはないかな? どんなことでもやるから遠慮なく言ってね」とスノー。
『私もです。とりあえず、シアさんが担当する見回りやクエスト、団員達の訓練は私とスノーお姉ちゃんが代わりに担当しますね』とクリス。
「そちらの方面でお役に立てないわたしは、シアさんや護衛メイド達の方々がおこなっていた本部の掃除や洗濯などお手伝いしますね。少しでもシアさん達の負担を軽くできればと思います」とココノ。
「ならわたくしはリースさんが転ばないよう本部中に手すりの備え付け、建物の修繕などをおこないますわ。技術者として完璧な仕事をお約束します」とメイヤが自信満々に断言する。
リースは味方になってくれると信じていたスノー達が自分の味方ではないことを知り愕然とする。
「み、皆さんまで……ッ。本気で赤ん坊が産まれるまで私に何もさせないつもりですか!? 第一、北部開発はどうするんですか! 資材はまだまだ足りないのですよ? これからも世界中を回って資材を『無限収納』にいれなければ駄目じゃないですか」
「リース……北部開発に関する仕事は今日で解任する。以後は赤ん坊のことだけを考えてくれ」
「何を仰ってるのですか、リュートさん! 私の『無限収納』がなければ、事前に決めた計画書以上の資金がかかるんですよ?」
リースの言葉にオレは首を振る。
「お金なんていくらかかってもいい。リースと赤ん坊が大切に決まっているじゃないか」
「…………つまりこのまま仕事を続けていたら、私のドジで子供が大変なことになると仰りたいのですか?」
リースは疑わしげなジト目でこちらを見つめてくる。
彼女の視線から目を晒さず、オレも見つめ返す。
リースは次にスノー、クリス、ココノ、メイヤ、シアの順に似た視線を向けたが――誰1人目を背けようとしない。
彼女がどんな言葉を並べても、この決定を絶対に覆さないと誰の目も訴えていた。
さすがのリースも皆の無言の訴えに敗北する。
「はぁ……分かりました。皆さんの仰る通り大人しくしています。心配してくださって、ありがとうございます」
こうしてリースは子供が産まれるまで、シアを含めた護衛メイドが必ず側に着くことが決定したのだった。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
本日、『令和1年12月15日(日曜日)』に明鏡シスイの新作をアップさせて頂きました。
タイトルは―― 『軍オタが異世界第2次世界大戦の欧州戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラーを倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』 です!
以下に台詞ありのちょっと長いバージョンのあらすじも載せさせて頂きます(昨日載せたあらすじより台詞がある分分かりやすくなっていると思います。その分ちょっと長いですが)。
「勇者様、どうか魔王ヒトラーから世界をお救いください!」
21世紀の現代日本のブラック企業で軍オタサラリーマンをやっていたオレは、気がつくと地球に似た異世界『ワールド・クライシス』での、第2次世界大戦の欧州戦線に巻き込まれていた。
「昨日は会社が珍しく定時で終わって……その後の記憶がない? なんで体が若くなってるんだ!?」
「……あっ、レイお兄ちゃん、目が覚めたんだね! よかった……」
「君は……」
そこで思い出す、この体、レイ・フォースの記憶。どうやら前世の記憶を思い出す系の異世界転生を果たしていたらしい。オレは慕ってくれる幼なじみの銀髪エルフ美少女のシルフと共に、思い出した前世の記憶を頼りに負け確定の戦場から移動しうとするが、そこに敵のナチスドイツの兵士がオレを捜索し襲ってきて……
「黒髪黒目の少年、間違いないな。君には死んでもらう」
放たれる銃弾、だがそこでオレは前世を取り戻した時に得た力『自分の体を十全に扱う力』を使い、敵を倒しその場を乗り越える。だが次々とオレを狙い現れる敵兵を倒し進むが、幼なじみのシルフが右足太股に銃弾を受けて負傷。立てこもるが、そこに多数の兵士が現れ、絶対絶命に。だがそこに右手に現れた『精霊王の紋章』が輝き――
「『武器を十全に扱う力』!? そんなものは些細な力に過ぎない。『これ』こそが、本物の力!」
異世界で得た『勇者』の力で、オレは21世紀の最強兵器を呼び起こし召還する――
これは平凡な現代の軍オタが、幼なじみのシルフや聖女アリシア、そして数々の仲間と共に現代兵器の力でナチスドイツを率いる魔王ヒトラーと戦い、世界へと平和をもたらす『英雄』へ至るかもしれない物語――
(戦争、ハーレム、流血や死ありの予定です)
以上です。
一つ前、昼にアップした軍オタシナリオの後書きでも書きましたが、新作は 軍オタの雰囲気、展開、物語、キャラクター、兵器紹介などが好きな読者様なら、読んで損はない作品かと思います。可愛い幼なじみの美少女エルフや、勇者大好きのチョロイン聖女さん等、可愛いヒロイン(ハーレムメンバー)も出ます!
軍オタの雰囲気や戦闘シーン、ヒロインとの日常シーンが好きな方、そしてさらに『現代兵器vs旧兵器』の戦いが好きな方なども、是非是非読んで頂ければと思います。
現在5話連載中で、1週間程度1日3回更新、またその後は毎日更新する予定です。
なのでよかったら、新作 『軍オタが異世界第2次世界大戦の欧州戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラーを倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』を是非チェックして頂ければと幸いです。
それではまた明日21時に、このシナリオの続きとなる軍オタをアップする予定です。
そちらもどうぞお見逃し無く!
軍オタ連続更新&新作、どちらも是非チェックして頂ければ幸いです!
新作は作者欄からも飛べますが、一応URLも張らせていただきます。
以下になります。
https://ncode.syosetu.com/n5526fx/