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新作アップ記念カウントダウンシナリオ1 熱処理

この軍オタ短編は、『令和1年12月15日(日曜日)』にアップする新作記念カウントダウンシナリオとなっております。新作アップまで後3日!

また、カウントダウンシナリオの後には、12月15日から通常の軍オタ本編を12日間(増減するかも)連続アップしますので、そちらもお楽しみに!


「ごめん、ルナ。待たせたか?」

「ううん、大丈夫。時間通りだよ」


 オレとルナはまるで待ち合わせカップルのようなやりとりをする。

 しかし、別にルナと付き合っているわけではないし、これから交わす内容も色気があるモノではない。


 新・純潔乙女騎士団本部グラウンド隅には、大型兵器の開発と研究をメインにした第2研究所がある。

 この第2研究所の責任者をハイエルフ王国エノール、第3王女ルナ・エノール・メメアが務めていた。

 今日は彼女に依頼していた研究が一定の結果を出したため、その内容を確認しに来たのだ。


「それで研究成果はどれだ?」


 第2研究所は大型兵器の開発と研究がメインのため体育館のように広いが、その分大型の兵器や細かい物も置かれているため、『どれが研究成果なのか』が一目で分かり辛い。

 白衣姿のルナが、手をひらひらさせながら、呆れたように声をかけてくる。


「リューとん、ちょっと落ち着きなよ。研究成果は逃げないし、ちゃんと順番に説明するから。だいたい提出した書類は目にしているんでしょ?」

「書類は当然目を通しているが、現物が見られると思ってちょっと興奮し過ぎたよ、ごめん」


 オレが素直に謝罪すると、ルナは『やれやれ、男はいつまで立っても子供なんだから』と言いたげに肩をすくめた。

 その態度を前にオレは反省する。


(ちょっと焦り過ぎたな……。しかしオレが知る現代兵器と魔術を組み合わせて、まったく新しい技術が誕生しようとしているんだ。少しぐらい興奮してもしかたないよな……)


 オレがこの異世界で現代兵器を開発する際、足りない部分を魔術や魔術道具、魔石などで補ってきた。

 結果、足りない部分を補い『前世、地球にあった現代兵器』を開発してきた。


 しかし、今回は『魔術』というこの異世界独自の技術と『現代兵器』を組み合わせ、まったく新しい技術を開発しようというのだ。

 2つの世界・技術が交わる歴史的場に居るのに、興奮しない方が失礼というものである。


 ――まあ、『2つの世界・技術が~』と壮大なことが言っているが、まだ研究が始まったばかりで、今はまだ基礎研究レベルだが。


「それじゃ順番に説明していくね、付いて来て」

「了解、頼む」


 白衣に袖を通しているルナが、ポケットに両手を入れて第2研究所に向かって歩き出す。

 オレは彼女の後に続いた。


「リューとんから出された『熱処理』――『銃器を発砲し続けた際の熱を魔術で処理、冷却できないか?』っていう課題だけど、まずルナは『魔術液体金属』に脆くならない限界まで魔力を注いで作った素材で銃を作って、物理的に熱に耐えられないか実験したんだけど……」


 魔術液体金属は、この異世界で銃器や兵器を作る際の基本的な材料だ。

 魔力を注げば、注ぐほど強固になると思われた魔術液体金属だったが、ある一定以上の魔力を越えると途端に脆くなってしまう性質を持つ。


 今回、ルナは『熱処理方法』として、素材を限界まで強化して物理的に耐えようしたらしいが、


「結果だけいうと失敗しちゃった」


【銃・射撃の専門誌 Gun 2009 12 P92~】

 ルナが足を止める。

 彼女が向かった先は、書き物などする机スペースで、その一角に分かりやすく破損したリボルバーが置かれていた。

 バレルが綺麗に折れている。

 細かい破片までしっかりと、集められていた。


「手にとっていいか?」

「いいよー」


 ルナが軽い調子で許可を出す。

 オレは折れたバレルと本体を手に取り見比べる。


「……完全にぽっきり折れているな。力任せにねじ切ったっていうより、脆くなってぽろっと壊れた感じだな」

「リューとんの予想通り『熱疲労』だよ。発砲後、すぐに水に漬けて冷まして発砲して――って繰り返していたら、ある限度を超えたらぽっきり折れちゃったの。限界まで魔力を注いだ魔術液体金属でも『熱疲労』からは逃げられないんだね」


 ルナが微妙に感心した声音で告げる。

 ちなみに『熱疲労』とは――熱した金属をすぐに冷ますのを繰り返すと非常に脆くなる現象だ。


 前世、日本時代に雑誌かネットだかで読んだ知識だが……一般人でも銃が撃てる射撃ツアーで、いつも通りリボルバーをお客さん達が発砲していた。

 その店は繁盛していて、お客さんに対してリボルバーの数が常に足りなかった。


 リボルバーの弱点に『連続で発砲し続けると暑い時期や場所によっては、素手触れなくなるレベルほど熱くなる』というものがある。

 オートマチックの場合、薬莢を自動的に外へ排出するが、リボルバーの場合はシリンダーに残る。

 その残った空薬莢が熱を持っているため、次第にその熱が銃器全体に広がっていく――という現象だ。


 繁盛していた店は、その問題を解決するため熱くなったリボルバーを水に漬けたり、濡れたタオルで冷やして使用していた。

 しかし、ある時、整備しようとしたらバレルがぽっきりと折れてしまったとか。


 熱くなったリボルバーを直ぐに冷やしたため『熱疲労』を起こしたのだ。


 今回ルナが『リボルバー』を実験銃器に使用しているのも、その弱点があり結果が出やすい為だ。


 オレは机にリボルバーを戻しぼやく。


「普通の金属はともかく、魔力が篭もった魔術液体金属でもその現象から逃れることはできなかったか……」


 ルナが次を促す。


「隣の机を見て。次は『魔術で金属をコーティングしてさらに強化する』を試したんだけど、やっぱり駄目だったよ」


 隣の机には、先程と同じようにバレルが折れたリボルバーが置かれていた。

 オレは再び許可を取って、手に取る。


「こっちも綺麗に折れているな。でもコーティング無しと比べて丈夫にはなっていたんだろ?」

「当然そうだけど……手間とコストが割に合わな過ぎ。もっと研究すれば別かもだけど、ルナとしてはちょっとお勧め出来ないかな」


 実際にコーティングをおこなったルナとしては、この技術を研究しても得られるモノが少ないと感じているようだ。

 オレが指示を出せば研究を継続するだろうが、本人はあまり乗り気ではない。


 最後はルナが書類で『一定の成果が出た』と報告したバージョンである。


 彼女は机から再び移動を開始。

 すぐに目的の場所へ辿り着く。


 ルナはM998A1ハンヴィー(擬き)ほどのサイズがある長方形の台をぺしぺし叩きながら、説明してくる。


「素材を魔力や魔術で強化する方法は諦めて、次は魔術文字と魔石を複合して『熱』そのものを取り除くことにしたの。当然、素材にダメージを与えずにね。これは書類にも書いてある通り、そこそこは成功したと思うよ」

「使用している銃器はリボルバーじゃなくて、ブローニングM2か?」


 オレは紹介された研究品を周りをぐるりと一周する。

 1933年にアメリカ軍に制式採用された機関銃(マシンガン)で、出来が良すぎて誕生してから80年以上経っても現役使用されている凄い銃器だ。

 そのM2を中心に置いて、周囲を木材と石材で組まれた囲いがくるりと周囲を覆っていた。

 当然、発射口を壁で覆うようなことはしていない。

 石材の外側はともかく、内側にはびっしりと魔術文字が刻まれ、壁には魔石が複数並列で並んでいる。

 どうやらこの魔石の魔力を使用して、発射した際に生じる熱を処理するようだ。


「そうだよ。『熱』を処理する魔術道具も組み込んだ上、メイヤっちに手伝ってもらって魔術文字を掘ってもらってなるべく軽量化、簡略化を目指したんだけど……今の所はどう頑張ってもこれが限界なんだよね」

「防御兵器として考えたら、これぐらい大きくても問題はないか……」

「移動を考えなければね。でも、普通のM2に比べて魔石を交換し続ければ熱は取り除くことが出来るから便利は便利でしょ?」


『ただ……』と先程まで自慢気に語っていたルナだったが、軽く溜息をつく。


「理想を言えばハンヴィーに乗せられる程度の大きさに押さえたかったけどね。メイヤっちの協力があっても、今の所これ以上小型が難しくて……。後、熱は処理できるけどあくまでそれだけだから。銃身や本体の摩耗、弾薬交換や発砲の不都合がこれで全部解決したわけじゃないからね」


 メイヤはこの異世界で『魔石姫』と呼ばれ、尊敬されるほど魔石の扱いに関してはプロだ。

 その彼女が魔術文字を刻んだ以上、現段階でこれ以上の小型化は難しいだろう。


「ルナ、肩を落とす必要は無いよ。むしろよく短期間でよくここまで形にしたと思うぐらいだし」

「それはそうだけど……」


 オレは手放しでルナを褒めるが、本人は『まだ納得がいっていない』という研究者の顔をする。


「ねぇリューとん。この研究ってまだ続けていいんだよね? やっぱりルナとしてはもっと有効活用できるようにしたいんだけど……」

「もちろん。他にも依頼したい研究、テーマはあるがこの『熱処理』は応用が利くから、研究したいならこちらから頼みたいぐらいだ」


 もしこの研究が身を結べば、M2をハンヴィーに乗せて走りながら銃身交換など気にせずずっと撃ち続けることが出来る。

 他にも多脚戦車主砲や飛行船『ノア』、8.8cm対空砲(8.8 Flak)などにも応用できる可能性が高い。


 故に非常に重要な研究テーマといえる。

 ルナが研究したいのなら、是非やってもらいたいぐらいだ。


 オレの返答を聞いたルナは、前世日本アイドルなど足下にも及ばない美少女笑顔でお礼を告げてくる。


「ありがとう、リューとん! ルナ、頑張ってこのテーマを研究するね! だからリューとんも頑張って必要な予算をバニちゃんから分捕ってきてね」

「お、おう、ま、任せろ!」


 許可した手前、舌の根も乾かないうちに拒否することもできず、オレはどもりながらも返事をした。

 PEACEMAKER(ピース・メーカー)会計担当の3つ眼族のバーニー・ブルームフィールドから予算を分捕って来ないといけないとは……。


 今から想像して表情が暗くなり、胃の辺りが痛み始める。


 一方ルナはオレとは正反対に上機嫌で鼻歌を唄いつつ、さっそく『熱処理』テーマの研究にとりかかるのだった。


 ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

 感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!


 12月9日の久しぶりに投稿、大勢の皆様に読んで頂きまして、また感想を頂きまして誠にありがとうございます! やっぱり読んで頂いたり、感想を頂くと嬉しいですね。皆様に応援されながら、軍オタを投稿し続けていた楽しい思い出が蘇り感慨深いです。また皆様に応援され、感想やレビューで励まされたからこそエタらず最後まで書けたんだと、昔を振り返ると改めて実感しました。……調子に乗りすぎてやや過剰に、ノリで書いてしまった部分もありますが、それを含めて良い思い出です。


 さて、このお話は『明鏡シスイ新作カウントダウンシナリオ』第1弾となります。

 久しぶりに軍オタらしい『軍オタネタ』を書かせて頂きました。

 こういう軍事関係の豆知識というか、ネタを書いていると『ああ、軍オタを書いているなー』という気持ちになるんですよね。

 他にも軍事vs魔術バトルや各キャラクター達の日常的やりとかもですが(笑)。


 改めて、明鏡シスイ新作を3日後の『令和1年12月15日(日曜日)』にアップします!


 ちなみに新作は15日から、1週間連続で毎日3話ずつアップする予定です。

 1週間経った後も、続けられる限りは毎日更新を頑張ります!

 目指せ、軍オタ連続アップ越えです!

 ちなみに気になるアップする時間はというと……15日(日曜日)の当時だけは、昼12時に数話を投稿。16~22日は1日3回アップ出来ればと考えております。


 また15日には新作だけではなく、記念として軍オタシナリオも12日間(若干増減するかもですが)連続アップするつもりですのでそちらも是非チェックして頂ければと思います。


 それでは明日もカウントダウンシナリオをアップするので、読んで頂けると幸いです。

 新作共々軍オタ連続更新をよろしくお願い致します!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >>魔術文字を掘ってもらって 「掘」ではなく、「彫」かと [一言] なんでもありな「魔術液体金属」なら自動再生機能とか持たせて、熱疲労とか金属疲労なんかなかったことに…無理かw
[一言] イタリアの艦砲みたいに水冷にしたらどうなるんかなとか思ったり
[良い点] 一番の難関は技術のブレイクスルーでは無く予算を分獲る方では? [一言] 新作&リュート達の話の続き 楽しみに待ってます(^-^ゞ
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